高値更新中の米国株式市場は、
多少割高ではあるが依然“バブル状態”ではない
米国の株式市場は、引き続き力強く上昇しています。先週は、週間ベースでS&P500指数が+1.6%、ナスダック総合指数が+2.2%、ダウ工業株価平均指数(NYダウ)が+1%上昇しました。
S&P500指数チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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向こう12カ月の予想1株当たり利益(EPS)に基づいたS&P500指数の株価収益率(PER)は18.9倍となっています。これは、過去5年間の平均の16.7倍を上回っています。しかし、「低金利」と「企業業績が好調」という2つの好条件に照らして、現在のやや割高なバリュエーションは十分正当化できると思います。
まず「金利」を見ると、米国10年債利回りは先週金曜日の時点で1.61%でした。これは年始の1.9%に比べると下がっています。金利低下は、株式バリュエーションにとって支援的です。
米国10年債利回りチャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます。
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次に「企業業績」ですが、今は2019年第4四半期の決算発表がそろそろ終わりを迎えようとしています。これまでに、S&P500指数に採用されている企業の77%が決算発表を終えており、そのうちEPSは71%の企業が、売上高は67%の企業が予想を上回りました。つまり、決算には大きな異変は出ていないということです。
新型コロナウイルスの決算への影響はあるものの、
全体的には心配されるほどではない
新型コロナウイルスが今後の決算に与える影響に関してですが、決算カンファレンスコールを行った364社のうち、38%に相当する138社が新型コロナウイルスについて言及しました。特に工業セクターとハイテクセクターの企業が、新型コロナウイルスに言及するケースが多かったです。
新型コロナウイルスに言及した138社のうち47社(34%)は「いまだ新型コロナウイルスの影響を予測するのは早すぎる」と述べる一方、34社(25%)は「新型コロナウイルスのせいでガイダンスを引き下げる」とコメントしました。
新型コロナウイルスの影響でガイダンスを引き下げると発表した主な企業は、以下の通りです。
・アップル(ティッカーシンボル:AAPL)
・スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)
・アライン・テクノロジー(ティッカーシンボル:ALGN)
・クゥオルボ(ティッカーシンボル:QRVO)
・ウォルト・ディズニー(ティッカーシンボル:DIS)
・KLA(ティッカーシンボル:KLAC)
・シーゲート(ティッカーシンボル:SGT)
・ボストン・サイエンティフィック(ティッカーシンボル:BSX)
・クアルコム(ティッカーシンボル:QCOM)
・タペストリー(ティッカーシンボル:TPR)
・アプライド・マテリアルズ(ティッカーシンボル:AMAT)
・MGMリゾーツ(ティッカーシンボル:MGM)
・エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)
ただ、全体としてガイダンスの引き下げをした企業の割合はこれまでの決算よりも小さく、新型コロナウイルスの影響は心配されたほどではありません。
先週決算発表した企業の中では、
業績が復活した「エヌビディア」に要注目!
先週決算発表した企業の中では、エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)の復活が目を惹きました。第4四半期(1月期)決算は、EPSが予想1.67ドルに対して1.89ドル、売上高が予想29.8億ドルに対して31億ドル、売上高成長率が前年同期比+40.8%でした。
グロスマージンは65.4%。前年同期は56.0%でした。
市場別で見ると、データセンターとゲーミングが好調でした。ゲーミングは、在庫の消化が終わりました。データセンターへの投資の小休止も終わり、新しい成長局面に入っています。それら市場別の売上高の推移は、下のチャートで確認してください。
データセンターの売上高は前年比+43%、前期比+33%の9.68億ドルでした。マイクロソフト(MSFT)のアジュールがエヌビディアの「V100テンサー・コアGPU」を800個組込んだクラウド・スーパーコンピュータを発表しました。またアリババ(BABA)とバイドゥ(BIDU)は、エヌビディアの半導体を搭載したAIレコメンデーション・エンジンを発表しました。
一方、ゲーミングの売上高は前年比+56%、前期比-10%の14.9億ドルでした。もう少し細かく言うと、デスクトップやノートブックのパソコンが好調でした。クリスマス商戦期間に入るにあたりに新製品のラインアップが最適であったことが好調の理由です。
卸売市場での需要は、中国において大規模セールが盛り上げる「シングルズデー」との絡みで強かったです。また、『コール・オブ・デューティー・モダン・ウォーフェア』など、新作ゲームの登場も需要を刺激しました。
「エヌビディア」が強みを発揮する最新技術
「レイトレーシング」とは?
今期はとりわけ、高度なビジュアル処理を必要とするゲームにおいて、光の物理的挙動をシミュレーションしてリアルタイムで映画画質に迫るレンダリングを提供する新技術「レイトレーシング(RTX)」が、消費者に好評でした。
レイトレーシングは、「BVH(Bounding Volume Hierarchy)」「レイ・トライアングル・インターセクション」「デノイジング」の3つの技術から成っています。
まず「BVH」は、アクセラレーションのためのデータ・ストラクチャで、これがハイパフォーマンスのRTXを可能にする準備を提供します。「レイ・トライアングル・インターセクション」は、光が物体に当たった際、それがどのように反射するかを計算する技術で、これによりリアリスティックな影を描くことができます。最後の「デノイジング」は、そのようにしてできたグラフィックからノイズを取り除き、表面を滑らかにするための作業を指します。
レイトレーシングは、こうした技術を通じて圧倒的にリアリスティックな映像を可能にしました。
最近、『ウルフェンシュタイン・ヤングブラッド』や『ブライトメモリー』『デリバー・アス・ザ・ムーン』などのRTXベースのニュー・タイトルが相次いで出ました。これらのゲームは、エヌビディアのRTX半導体を使わなければ理想のプレイ環境を確保できません。
さらに高度な技術として「グローバル・イルミネーション(GI)」という手法があります。これは、シーン全体において、様々な光源がどのような光の反射を醸し出すかを全体的に調和させる技術です。『メトロ2033』というゲームがそれに依拠しています。エヌビディアが製造する「ターリングRTX」は、この「グローバル・イルミネーション」を最も効率的に処理できます。その技術を使えば毎秒10億レイの処理が可能となり、処理時間も従来製品の「パスカル」と比較して10分の1になります。
エヌビディアは、クラウド・ゲーミング・サービスの「Gフォース・ナウ」を先週ローンチしました。世界最初となるレイトレーシング対応ゲームのクラウドサービスです。「Gフォース・ナウ」はオープン・プラットフォームであり、フリーミアム・モデルを採用しています。例えば、「ファウンダーズ・クラス」は4.99ドル/月を払います。
新型コロナウイルスの影響を考慮した上で、
「エヌビディア」は来期の見通しも好調!
さて、エヌビディアの来期の見通しですが、第1四半期の売上高は予想28.6億ドルに対して新ガイダンス29.4億~30.6億ドルが提示されました。グロスマージンは65.0%~65.4%の範囲内をガイドします。なお、このガイダンスは、新型コロナウイルスの影響1億ドルを含んでいます。
エヌビディアの決算は1月〆なので、今回発表されたのは2020年度の第4四半期決算ということになります。これは、他の企業の2019年度決算に相当します。
【今週のまとめ)
米国の株式市場が堅調に推移する中、
スランプからの脱出を果たした「エヌビディア」に期待!
米国株式は順調に高値を更新しています。株式市場のバリュエーションは18.9倍と割高ですが、おりからの低金利と企業業績の好調から、この割高は正当化できると思います。
2019年第4四半期の決算発表では、新型コロナウイルスに言及する企業がいくつかありましたが、全体としてガイダンスはあまり下がりませんでした。これは、新型肺炎の業績の影響が軽微であることを示唆しています。
個別では去年スランプに陥っていたエヌビディアの業績がV字型に回復しているのに注目したいと思います。
エヌビディア(NVDA)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます。
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