株に投資しようと思ったら、通常は1単元以上、単元単位で購入する必要がある。そのため、たとえば株価が1万円で1単元が100株という銘柄であれば、投資金額は100万円を超えてしまう。
「欲しい銘柄だけど、100万円ではなかなか手が出せない…」というときに検討してみたいのが「単元未満株取引」だ。単元未満株取引のサービスを利用すれば、ほしい銘柄をわずか1株から購入できる。
単元未満株取引なら、1株から買えて配当も出る!
単元未満株とは、1単元が100株や1000株であっても1株から取引できるというサービスのこと。
そのメリットは、まずなんと言っても少額資金で銘柄が購入できる点だ。
1単元を購入すると投資資金が100万円を超える銘柄は40近くある(【表1】に一部を抜粋)。たとえば「JINS」ブランドを展開するメガネチェーンのジェイアイエヌ(3046)を通常の現物株として購入する場合、株価1958円(10月10日終値、以下同)×1000株=195万8000円必要になる。
しかし、単元未満株取引を使えば、1958円×1株=1958円となんと2000円以下で購入できる(手数料を除く)。1株以上なら2株でも10株でも購入できるので、手持ちの投資資金にあわせて購入株数を決めることも可能だ。
もちろん、1単元が100万円超の銘柄に限らず、1単元が1株という銘柄を除けば、ほとんどの銘柄でこの単元未満株取引を利用できる。
また、1銘柄にかかる資金が少なくて済むため、その分、多くの銘柄に分散投資することもできる。単一の銘柄でも、少しずつ買い増していけば、時間分散が図れるというメリットもある。
購入した株は本人名義になり、配当も保有している株数分、受け取れる。ただし、株主総会での議決権はない。これは通常、1単元の保有で1つの議決権が与えられているためだ。
株主優待についても、多くの場合は「もらえない」と思っておいたほうがよいかもしれない。なぜなら優待も、1単元以上で権利獲得となる場合が多いからだ。
ちなみに数は少ないが、三菱マテリアル(5711)(商品購入時の割引)やホンダ(7267)(関連施設の入場・利用が無料または割引など)など、1株以上の保有株主に優待を実施している企業もある。
では、単元未満株はどうやって買うのだろうか、実は、すべてのネット証券で扱っているわけではないのだ。また、扱いのあるネット証券でも手数料などの条件がそれぞれ異なる。詳しくみていこう。
単元未満株の手数料は割高なので注意!
単元未満株取引のサービスを取り扱っているのは、一部のネット証券に限られている。SBI証券、岡三オンライン証券、カブドットコム証券、野村ネット&コール、マネックス証券、丸三証券の6社だ。
まず、もっとも気になる手数料を比較してみた。各社とも通常取引とは別に単元未満株専用の手数料体系を用意している。「株価1万円、1単元100株」の銘柄について、単元未満株を買った場合と、通常の約定ごとに手数料がかかるコースを利用した場合で比べてみた【表2】。
【表2】「1株1万円、1単元100株」の銘柄を購入した場合の手数料比較
証券会社名 | 単元未満株取引 | 通常購入の場合(約定ごとコースを利用) | ||
1株のみ購入 | 10株をまとめて購入 | 1株ずつ、100株まで購入 | ||
SBI証券 | 52円 | 525円 | 5200円 | 639円 |
岡三オンライン証券 | 210円 | 630円 | 2万1000円 | 525円 |
カブドットコム証券 | 105円 | 665円 | 1万500円 | 1039円 |
野村ネット&コール | 105円 | 840円 | 1万500円 | 1000円 |
マネックス証券 | 52円 | 525円 | 5200円 | 1575円(指値、PCから注文の場合) |
丸三証券 | 105円 | 840円 | 1万500円 | 1050円 |
このように、もし単元未満株取引でコツコツ1株ずつ、1単元まで買っていった場合には、いずれの証券会社でも「約定ごとコース」に比べてかなり手数料がかかってしまう。
また、一度に10株を購入しただけで、「約定ごとコース」の1単元(100株)購入の手数料を超えてしまうネット証券もある。
手数料に関しては、単元未満株取引は通常の単元株を購入する場合に比べて割高だ。もちろん「ほしい銘柄を少額から買える」というのは大きなメリットだ。とは言え、やはり手数料はなるべく低く抑えたいもの。
そこで、どの銘柄でも単元未満株取引を利用するのではなく、単元未満株取引を使ったほうがよいか、購入前にまずよく検討して通常購入と使い分けることが上手な活用法と言えるだろう。
なお、単元未満株取引で単元株まで増やした株は、証券会社によって手続きに若干の違いはあるが、通常の単元株として売買できるようになる。そうなれば、議決権や優待の権利も獲得できる。
単元未満株取引ができるネット証券は?
単元未満株取引は、手数料以外にもネット証券によって取引できる市場や時間帯に違いがある【表3】。
【表3】単元未満株取引ができる主なネット証券
証券会社名 | 愛称 | 売買可能銘柄 | 注文可能時間と 売買タイミング |
手数料 (最低手数料) |
備考 |
SBI証券 | S株 | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ) | 0:00~10:30当日後場始値、15:30~21:30翌営業日前場始値、21:30~24:00翌営業日後場始値 | 約定代金×0.525%、小数点以下切り捨て(最低52円) | 名証(1部・2部・セントレックス)、福証(Q-Board含む)、札証(アンビシャス含む)銘柄は売却のみ扱う |
岡三オンライン証券 | - | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ) | 0:00~10:30当日後場始値、16:00~21:00翌営業日前場始値、21:00~24:00翌営業日後場始値 | 2万円まで210円、2万円超~3万円まで315円、3万円超~10万円まで630円、以降10万円増加ごとに630円加算(最低210円) | - |
カブドットコム証券 | プチ株 | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ)、名証(1部・2部・セントレックス) | 00:01~10:00当日後場始値、10:01~23:00翌営業日前場始値、23:01~24:00翌営業日後場始値 | 約定金額2万円まで105円、以降1万円増加ごとに70円加算。(最低105円、ただし105円以下となる売却の場合は0円) | 福証(Q-Board含む)、札証(アンビシャス含む)銘柄は売却のみ扱う。積立プランもあり |
野村ネット&コール | まめ株 | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ)、名証(1部・2部・セントレックス) | 00:00~10:30当日後場始値、16:00~24:00翌営業日前場始値 | 約定代金×0.84%。売却代金が手数料に満たない場合、約定代金の全額が手数料(最低105円) | 福証(Q-Board含む)、札証(アンビシャス含む)銘柄は売却のみ扱う |
マネックス証券 | ワン株 | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ)、名証(1部・2部・セントレックス) | 0:00~11:30当日後場始値、15:30~24:00翌営業日後場始値 | 約定代金×0.525%、小数点以下切り捨て(最低50円) | 福証、札証銘柄は売却のみ扱う(Q-Board、アンビシャス銘柄は非取扱い) |
丸三証券 | - | 東証(1部・2部・マザーズ)、大証(1部・2部・JASDAQ)、名証(1部・2部・セントレックス) | 0:00~10:29当日後場始値、16:00~20:59翌営業日前場始値、21:00~23:59翌営業日後場始値 | 1万2500円以下は105円、1万2500円超は約定代金の0.84%(最低105円) | 単元未満株の取引は、廣田証券に注文を取り次ぐ形で行なっている |
サービスを提供しているどのネット証券も、東証と大証の銘柄は基本的に売買可能だが、名証の銘柄については扱いに差がある。もし、名証単独上場の銘柄を単元未満株取引で購入したい場合には、カブドットコム証券、野村ネット&コール、マネックス証券、丸三証券のいずれかを選ぼう。東証や大証の銘柄でも、証券会社によっては一部非取扱いの場合もあるので、利用の際には必ず確認すること。
注文方法は、どの証券会社でも「成行」注文のみ。注文受付時間は各社で微妙に異なっているが、注文した時間に応じて前場の始値、もしくは後場の始値で約定することには変わりない。
また、この中では唯一、カブドットコム証券が単元未満株(プチ株)の積立サービスを扱っている。積立金額は500円以上1円単位で、毎月指定した日に指定した銘柄を、積立金額の範囲内で買い付ける。積立サービスを利用した場合には、手数料は最大50%まで割引される。
ところで、一部の証券会社では、単元株の10分の1の単位で売買できる「ミニ株取引」のサービスを扱っている。こちらは、証券会社によって取扱い銘柄が限定されていることや、名義が証券会社になるといった違いがある。配当相当の金額は受け取れるが、より使い勝手がいいのは、「単元未満株取引」のほうと言えるだろう。
(文/肥後紀子)
【※関連銘柄の株価チャートはこちら!】 |
◆ジェイアイエヌ(3046) |
◆三菱マテリアル(5711) |
◆ホンダ(7267) |
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