2021年11月に新規上場した「IPO株」全9銘柄の中から、アナリストが今後の値動きを「強気」と予想した「Photosynth」と「AB&Company」について解説!
ダイヤモンド・ザイ2022年2月号の連載「10倍株を探せ!【IPO株】研究所」では、IPO株の専門家であるフィスコの小林大純さんが、2021年11月に新規上場した「IPO株」全9銘柄を「買い」「強気」「中立」「弱気」「売り」の5段階で評価している。今回はその中で小林さんが注目している2銘柄を詳しく紹介!
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2021年11月に新規上場した「IPO株」は全部で9銘柄!
前半は低調だったが、後半は「GRCS」などが大きく上昇!
2021年11月前半のIPO株は、低調だった10月からの流れを引き継ぎ、取引が鈍かった。だが、18日のGRCS(9250)の上場から一変。「同社の初値が50%プラスと好調で、さらにその後の株価も大幅高となったのを見て、個人投資家の初値買いが積極化した」と、フィスコの小林大純さんは語る。
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相場全体が伸び悩み、7~9月期の決算発表も一巡したため、大型株では値幅を取りにくい。そこで、小型株・新興株に資金が向かった、という面もあるようだ。結果として、11月後半の上場銘柄の初値は、まずまずとなった。もっとも、初値後の株価推移は二極化。GRCSは一時3.6倍まで上昇、サイエンスアーツ(4412)に至っては初日に値がつかず、初値後も5.8倍まで高騰した。対して、この2銘柄以外は初値を下回って推移している(2021年12月2日時点)。
初値後の不調には、もちろん“オミクロン・ショック”の影響もある。市場環境の不透明性が強く、新興株全体が大きく下落している。今後も慎重な見極めが必要だ。GRCSとサイエンスアーツの2銘柄も、楽観できる状況ではない。これらの株価は、PER等の指標で見て正当化できない水準になっており、過熱感が拭えない。「時価総額や公募・売出規模が小さく、上がりやすい銘柄に人気が集中しています。新興株に向かった個人投資家の資金も短期の回転売買で、腰の入った買いとはいえません」(小林さん)
2021年11月の【IPO株】9銘柄の投資判断は? |
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上場日 | 公開価格 | 初値 (騰落率) |
株価 (12/2) |
PER (PBR) |
今後1年の 高値予想 (安値予想) |
投資判断 |
1日 | ◆フロンティア(4250・福Q) | |||||
930円 | 958円 (+3.0%) |
830円 | 7.1倍 (2.30倍) |
1100円 (750円) |
中立 | |
【分析コメント】自動車アフターパーツの製販と電子玩具の受託設計・生産。業績は好調だが上場後の出来高が小さく、人気に乗りづらい。 | ||||||
5日 | ◆Photosynth(フォトシンス・4379・東M) | |||||
1500円 | 1410円 (-6.0%) |
1010円 | ー (8.01倍) |
2000円 (850円) |
強気 | |
【分析コメント】スマートロックやIoT関連機器。公募・売出規模が100億円超と大きく公開価格割れ。足元は軟調だが過熱感は小さい。 | ||||||
9日 | ◆日本調理機(2961・東2) | |||||
2710円 | 2750円 (+1.5%) |
2410円 | 6.9倍 (0.40倍) |
3200円 (2200円) |
中立 | |
【分析コメント】給食施設等向けの厨房機器。前期の期ズレ案件の反動で減益 予想。株価は割安感があるが、見直しの糸口をつかみにくい。 | ||||||
18日 | ◆GRCS(9250・東M) | |||||
3600円 | 5400円 (+50.0%) |
7860円 | 71.0倍 (48.53倍) |
1万1000円 (5000円) |
中立 | |
【分析コメント】セキュリティ等の企業リスク管理製品やコンサルを手掛ける。 成長イメージを持ちやすいとはいえ、株価は過熱感がある。 | ||||||
19日 | ◆AB&Company(9251・東M) | |||||
1490円 | 1400円 (-6.0%) |
1351円 | 22.1倍 (2.98倍) |
2300円 (1100円) |
強気 | |
【分析コメント】美容室チェーンを全国展開。公募・売出規模が80億円強とやや大きく、公開価格割れ発進。だが株価は上昇の余地あり。 | ||||||
24日 | ◆サイエンスアーツ(4412・東M) | |||||
1710円 | 4545円 (+165.8%) |
7410円 | ー (106.74倍) |
1万2000円 (2500円) |
弱気 | |
【分析コメント】デスクレスワーカー(机の前に座らない、最前線で活躍する労働者)をつなぐツール。公開価格の約6倍に急騰も、需給主導で過熱感が非常に強い。PSRは70倍台。 | ||||||
24日 | ◆ラストワンマイル(9252・東M) | |||||
1710円 | 2520円 (+47.4%) |
1635円 | 34.4倍 (4.85倍) |
2000円 (1400円) |
中立 | |
【分析コメント】電力・ガス・ネット等の新生活関連サービス。業績堅調だが、類似企業と比べ強気な価格設定だった。来期の業績に期待。 | ||||||
25日 | ◆スローガン(9253・東M) | |||||
1200円 | 1800円 (+50.0%) |
1283円 | 24.8倍 (5.00倍) |
1700円 (1000円) |
中立 | |
【分析コメント】ベンチャー等企業向けの採用支援。株価に過熱感はなく業績もコロナ禍から回復見込みだが、一段の成長加速を待ちたい。 | ||||||
30日 | ◆ボードルア(4413・東M) | |||||
2000円 | 2750円 (+37.5%) |
2185円 | 35.5倍 (11.52倍) |
2800円 (1800円) |
中立 | |
【分析コメント】ITインフラの設計・構築・運用保守等を支援。先端技術に強い。需給面で値が重いが株価上昇の余地は十分ありそう。 | ||||||
※データは2021年12月2日時点。 |
アナリストが「強気」と診断した2銘柄を詳しく分析!
業績良好な「Photosynth」と「AB&Company」をチェック!
ここからは、2021年11月に新規上場した9銘柄の中で、小林さんが「強気」と高く評価した2銘柄を詳しく紹介していこう。
一つ目は、Photosynth(フォトシンス・4379)だ。
Photosynthはスマートロックやクラウド型入退室管理システムを手がける企業。スマートロック「Akerun」の契約社数は大手企業を含め4000社に上り、導入社数トップを誇る。公開価格割れスタートを強いられ、その後の値動きも悪いことから、不人気イメージが拭いづらい。しかし、2021年12月期ベースの予想PSRは10倍前後まで低下。成長性を考慮すれば魅力的な水準と言えそうだ。
長期的には、働き方改革、オフィスのフレキシブル化、セキュリティ意識の高まりなどが追い風。2021年12月期の約3割増に続き、市場予想では2022年12月期も5割近い伸びが見込まれている。ポテンシャルは高そうだ。
続いて紹介するのは、やはり初値が公開価格割れしたAB&Company(9251)だ。
AB&Companyは美容室の直営店舗とフランチャイズの運営、インテリアデザインを手がける企業。収益の柱は直営店舗。所属スタイリストをFCオーナーにする形で、店舗数を順調に拡大している。
事業内容と株式需給の面で個人投資家の人気を集めづらかったことから、公開価格割れスタートとなったものの、成長性を考慮すると株価は割安。非テック企業としては公開株の海外販売比率が高かったが、海外の買いは堅調だったことも、その裏付けと考えられる。
業績は良好で、2022年10月期の業績予想ベースで見たPERは、同業他社を大きく下回っている。株価の見直し余地は大きそうだ。経済活動の正常化による客足回復にも期待したい。
さて、ここまで11月のIPO株の中で注目すべき2銘柄を取り上げてきた。最後に、銘柄を選ぶうえで注目したい指標を紹介しておこう。
成長段階の新興企業は赤字の場合も多いが、当期利益が赤字だと、割安感をチェックするおなじみの指標・PERが使えない。その代わりに役立つのが、PSR(株価売上高倍率)だ。PSRは株価を1株当たりの売上高で割った指標で(または時価総額÷年間売上高)、新興株の株価水準の判断によく使われる。ただし、業種によって水準が違ったり、収益性が低い株だと適切な判断ができなかったりもするので、同業他社と比較するといいだろう。
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【2024年12月2日時点】
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◆SMBC日興証券 | ||||
主幹事数(上)/取扱銘柄数(下) | ネット配分・抽選方法 | 口座数 | ||
2023 | 2022 | 2021 | ||
19社 52社 |
24社 47社 |
26社 80社 |
10%:1人1票の平等抽選 最大5%:「ステージ別抽選」※1 |
345万 |
【ポイント】 大手証券の中でもIPOに力を入れており、例年、主幹事数・取り扱い銘柄数ともに全証券会社中でトップクラス! また、国内五大証券会社のひとつだけあり「日本郵政グループ3社」や「JR九州」「ソフトバンク」などの超大型IPOでは、主幹事証券の1社として名を連ねることも多い。10%分の同率抽選では、1人1単元しか申し込めないので資金量に関係なく誰でも同じ当選確率となっているのがメリット。さらに、2019年2月からは、預かり資産などによって当選確率が変わる「ステージ別抽選」がスタート。平等抽選に外れた人を対象にした追加抽選で、最高ランクの「プラチナ」だと1人25票が割り当てられて当選確率が大幅にアップする。 ※1 預かり資産残高などによって決まる「ステージ」ごとに、別途抽選票数が割り当てられる。 |
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◆SBI証券 | ||||
主幹事数(上)/取扱銘柄数(下) | ネット配分・抽選方法 | 口座数 | ||
2023 | 2022 | 2021 | ||
21社 91社 |
13社 89社 |
21社 122社 |
60%:1単元1票の平等抽選 30%:「IPOチャレンジポイント」順に配分 10%:知識・経験・資力と取引状況を踏まえて配分 |
1245万 ※ |
【ポイント】 ネット証券にもかかわらず、主幹事数、取扱銘柄数ともに大手証券会社に引けをとらない実績を誇る。特に取扱銘柄数がダントツで、2023年は全96社中91社と約95%のIPO銘柄を取り扱った。つまり、SBI証券の口座さえ持っていれば、ほとんどのIPO銘柄に申し込めると考えていいだろう。個人投資家への配分の100%がネット投資家へ配分されるのも魅力。1単元1票の抽選なので、多くの単元を申し込むほど当選確率は高くなる。当選確率がアップする「IPOチャレンジポイント」が、資金量・取引量と関係なく、IPOに申し込み続ければ誰にでも貯められるのもメリットだ。また、スマートフォン専用サイトでIPOの申し込みや情報確認ができるのも便利。 ※SBIネオトレード証券、FOLIOの口座数を含んだSBIグループ全体の口座数。 |
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※ 主幹事数、取扱銘柄数はREITを除く。口座数は2023年12月末時点。 |