【今回のまとめ】
1.先週は波乱含みの展開だった
2.市場は2014年末までに米国が利上げすることを織り込んだ
3.株も債券も、同時に売られるのはおかしい
4.中国の金融システムに対する懸念が出ている
5.もし中国がこければ、金の出番!
波乱含みの世界市場 特に新興国が激下げ
6/17~21の週、米国の連邦公開市場委員会(FOMC)を巡って市場は波乱含みの展開となりました。
結局、1週間を終えて、米国の代表的株価指数であるS&P500指数は-2.1%、ハイテク株などから構成されるナスダック総合指数は-1.9%、大型優良株30銘柄から構成されるダウ工業株価平均指数は-1.8%と、軒並み下落しました。
新興国の株式市場の指数であるMSCIエマージングマーケット指数は-4.7%と、2012年5月以来の下げ幅としては最大となりました。
一方、米国の10年債の利回りは先週1週間で0.388%上昇し、2.514%を付けました。
市場は早くも14年末の政策金利引き上げを織り込んだ
さらに、将来の米国連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利がどうなるかに関する市場参加者のコンセンサスを示すフェドファンズ・フューチャーズは、2014年12月の時点でフェデラル・ファンド金利(政策金利)が0.41%(現在は0.28%)になることを織り込んでいます。
言い換えれば、市場参加者達は、その頃までにFRBが債券買い入れプログラムを終了し、いよいよ次の段階である金利引き上げに着手すると判断したのです。
6月17日の連邦公開市場委員会(FOMC)に際してのバーナンキ議長の記者会見はこうしたマーケットの反応に現れている、ハッキリしたものではなく、もう少し玉虫色の、曖昧なものでした。
しかし、マーケットはせっかちに来年末の引き締めの可能性まで織り込んでしまったわけです。
株も債券も同時に売られるという矛盾した局面
もちろん、株が下がったのはこれまで相場の下支え要因だった債券買い入れプログラムがいよいよ秋にも縮小されることを嫌気してのことです。
しかし、そもそも債券買い入れプログラムを縮小する理由は景気がそれだけ力強いからにほかなりません。債券はそれを嫌気しているわけです。
すると、株も下がり債券も下がるという現象は、それ自体いささか矛盾しているし、投資家の慌てぶりは滑稽さすら漂わせています。
米国の著名なヘッジファンド、アッパルーサの名物ファンドマネージャー、デビッド・テッパーは「FRBが景気は強くなると判断したのが、そんなに悪いことかい? 債券の利回りは好景気局面で上昇する(価格は下落)のが当り前だろ? このドタバタ局面が終わり次第、株は買いだ!」と主張しました。
中国の金融システムに対する不安が台頭
先週のマーケットが下がった理由はFOMCだけではありません。中国のオーバーナイトのインターバンク(銀行間取引)市場の金利が急騰したことで、中国の銀行が相互不信に陥っている状況が露呈、これが投資家を不安に陥れました。
米国の投資週刊紙『バロンズ』は、中堅の政府系銀行、チャイナ・エバーブライトが最近、9.8億ドルのローンをデフォルトしたことを報じました。
その記事の中で、一部の市場関係者は中国の資本市場が、08年3月のアメリカにおけるベアスターンズの救済(=政府のあっせんでJPモルガンに買われました)の時と同じような局面に来ていると見ていることが紹介されました。
中国がずっこければ……金の出番が来る!?
もちろん、中国人民銀行はこれまで全く手をこまねいてきたわけではありません。実際、中国の実質政策金利(=政策金利から消費者物価指数を引いたもの)は3%前後であり、どちらかといえばきつめの金利政策が取られてきました。
もし今後事態が悪化するならば、中国人民銀行も対策を講じなければいけないし、米国のFRBや欧州中央銀行(ECB)も協調する必要に駆られるでしょう。
その場合、今は完全に「お役御免」として全ての投資家から嫌われた存在になった金投資が、案外早いタイミングで輝きを取り戻すというシナリオにならないとも限りません。
とにかく、全ての市場参加者から憎まれ、毛嫌いされている投資対象は(本当に「売り」のシナリオしかありえないのだろうか?)という事を一考するに値します。
そこで金鉱株のチャートをいくつか掲げておきます。
まずず世界最大の産金会社、バリック・ゴールド(ティッカーシンボル:ABX)です。同社は負債が多く、経営が不安視されています。
株価単位:米ドル 13年3月1日~6月21日・日足
次はゴールドコープ(ティッカーシンボル:GG)です。
株価単位:米ドル 13年3月1日~6月21日・日足
最後はキンロス・ゴールド(ティッカーシンボル:KGC)です。
株価単位:米ドル 13年3月1日~6月21日・日足
これらの金鉱株はいずれも極めて投機的な投資対象であり、マクロ経済の流れも、相場的にも向かい風が吹きまくっています。したがって中長期的なバイ&ホールドには向きません。
しかし、これらの銘柄を巡る、現在の極端に悲観一色の相場観にはどこかで訂正が入ると考えるべきでしょう。
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