【今回のまとめ】
1.ナスダックの独歩安は需給の影響大
2.実体経済は強弱観が対立している
3.足下の景況感としては、欧州は強く、中国が弱い
4.世界第二位の中国経済の急速な冷え込みは、いずれ先進国にも影響を及ぼす
ナスダックは需給関係で売られている
先週の米国株式市場は、ダウ工業株価平均指数が+0.4%、S&P500指数が-0.1%、ナスダック総合指数が-1.3%でした。
ダウ工業株価平均指数が新高値圏にあるのに対して、ナスダック総合指数が高値から-6.9%となっている主な理由は、去年以降の相場のリーダーシップをとってきたグーグル(ティッカーシンボル:GOOGL)、アマゾン(AMZN)などのネット株が崩れていることによります。
このへんの銘柄には個別銘柄の勢いの強さに着目する、いわゆるモメンタム筋が沢山乗っており、彼らの売りが、さらに売りを呼ぶという悪循環に陥っています。言い換えれば、業績見通しの暗転と言うよりも、テクニカル的なアヤで下げているわけです。
一方、物色は大型石油株のような、手垢のついてない対象へと移ってきています。具体的な銘柄で言えばエクソンモービル(XOM)のような株です。ダウ工業株価平均指数とナスダック総合指数との間でパフォーマンスの開きが大きくなっているのは、そのような事情によります。
実体経済はマチマチ
一方、実体経済を見ると強気材料と弱気材料が混在する、見極めの難しい状況となっています。
アメリカ経済を見ると、冬場の悪天候に振り回された消費は、かなり戻ってきています。下は小売店の既存店売上比較のデータですが、4月は2年半ぶりに力強い反発となっています。

その一方で住宅市場の回復は、遅々として進んでいません。

住宅市場の戻りの悪さに関しては、先週の議会証言で、イエレンFRB議長も言及していました。これは米国連邦準備制度理事会がこの問題に大いに関心を持っていることを示しています。
欧州委員会は1年に4回、世界の景気の見通しに関して報告書を出します。先週発表された最新の予想では、アメリカの2014年のGDPが0.1パーセンテージ・ポイントだけ引き下げられました。これは既に述べた厳冬の影響を考慮した結果です。

日本に関しては、欧州委員会は今年の予想を同じく0.1パーセンテージ・ポイント引き下げています。

消費税引き上げの影響が、当初予想より少し大きかったことが原因です。
ユーロ圏18か国に関しては、2014年の数字の変更はありませんでした。

しかし何よりも今回の報告書で注目されたのは、中国のGDP予想がどんどん下がっている点でした。

これらのことから何がわかるのでしょうか?
まず2014年に関しては、ユーロ圏18か国の予想だけが引き下げられなかったということは、足下の景況感として欧州だけが悪化していないということを意味します。
再三再四に渡るドラギ総裁のユーロのトークダウン(=口先介入で通貨安を演出すること)にもかかわらず、ユーロがしっかりしている理由は、ここにあります。
米国に関してはFRBが粛々と債券買い入れプログラムの縮小を行っていることからもわかるとおり、基本的には米国経済は強いという認識が市場参加者の間に定着しています。
しかし世界で二番目に大きな経済である中国経済の減速が、ここへきて鮮明となっているので、これが何時かは米国、欧州など先進国の経済にも影響を及ぼすことが心配されます。
事実、先週のイエレン議長の議会証言でも新興国経済の鈍化に対する言及がありました。これは異例です。
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