【今回のまとめ】
1.石油輸出国機構が減産を見送ったことで原油価格が急落した
2.サウジアラビアはスイング・プロデューサーの役目を放棄した
3.需給関係の悪化は不況ではなく米国でのシェールオイルの増産が原因
4.北米の油井の休止は未だはじまったばかり
5.独立系探索・生産会社、石油サービス会社などが打撃を受ける
原油価格急落
先週、石油輸出国機構(OPEC)が減産見送りを決めました。このニュースを受けて原油価格が急落しています。11月28日の引け値は65.99ドルでした。

スイング・プロデューサー
OPECのリーダーシップを握っているのはサウジアラビアであり、サウジアラビアは歴史的にスイング・プロデューサーの立場をとってきました。
スイング・プロデューサーとは、原油がだぶついているときは自ら減産し、不足しているときは増産することでなるべく価格を安定させる役割を担う国を指します。サウジアラビアがそのような戦略を採ってきた背景には、同国の可採年数(確認埋蔵量÷年間生産高)は63年もあるので、末永く世界の消費者に石油を使い続けてもらえるよう、価格を安定させるのが、長期的に見て最も得策だという信念があったからです。
下は1965年まで遡ったサウジアラビアの原油生産のチャートですが、上のような考えに基づき、1980年代前半に思いっきり減産している様子がよくわかります。

ところが1980年代前半のサウジアラビアの減産にもかかわらず、原油価格は低迷しました。つまりスイング・プロデューサーとしてサウジアラビアに出来ることには、限界があるということをその際、悟ったのです。
今回、サウジアラビアが紳士的な調停役を降りた背景には、そのようなあきらめの気持ちがあります。
アメリカの増産
このサウジアラビアに肉薄するカタチで、いま原油生産をどんどん伸ばしているのがアメリカです。

アメリカの原油生産は1970年をピークにずっと下がり続け、2008年には678.3万バレル/日まで落ち込みました。しかしその後シェールオイルの開発ブームで急角度に生産が伸びてきたわけです。
この結果、世界の石油生産シェアではアメリカは11%までシェアを回復しており、首位のサウジアラビアの13.1%に肉薄しているのです。

アメリカが余り急激に増産したので、世界の原油の生産と消費のバランスは崩れつつあります。これが最近の原油価格崩壊の主因です。
不景気が原油安の原因ではない
なお、世界の景気が悪いので、原油の消費が低迷しているのが今回の原油安の原因だとする意見がありますが、私はその意見には反対です。下のグラフに見られるように原油の消費はここ3年ほど安定的に推移してきました。

たしかに先進国のうち欧州、日本などは景気がハッキリしない状況が続いているわけですが、その一方で中国やインドなどの新興国の原油消費は着実に増えているのです。
従って価格崩落の原因は、やはりシェールオイルにあると考えて間違いないでしょう。
北米の油井の数に注目
そこで注目されるのが北米の油井の数です。

リーマンショック後の不況で天然ガス価格が暴落した際、北米の探索・生産業者たちは天然ガスのリグを休止し、石油のリグに切り替えました。なぜなら原油価格は高止まりしていたからです。
ところがノースダコタ州のバーケン油田やテキサス州のイーグルフォード油田などにおける原油の生産が余りに好調だったので、続々と参入が相次いだわけです。
石油リグカウントは10月10日のピークの1609本から11月25日には1572本まで下がっています。しかし上のグラフを見てもわかるように、この程度の休止は焼け石に水なのです。
シェールオイルの油井の半数近くは、リグを操業する下請け業者との間で長期契約の下に運転されています。これらのリグは契約の関係で、止めたくても止められないのです。それは生産調整には時間がかかることを示唆しています。
どのような銘柄が打撃を受けるか?
それでは具体的にどのような銘柄が今回の原油安の影響を受けるのでしょうか?
まずシェールオイルの生産を得意としている独立系探索・生産会社は打撃を受けると思われます。具体的にはEOGリソーセズ(ティッカーシンボル:EOG)、パイオニア・ナチュラル・リソーセズ(PXD)、コンチネンタル・リソーセズ(CLR)などです。
次にそれらの企業に対してサービスや消耗品などを提供している石油サービス株も影響を免れません。具体的にはハリバートン(HAL)、シュランベルジェ(SLB)などです。
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