運用哲学に心酔してさわかみファンドの積立購入を続けるうちに、自分自身でも個別株への投資をスタートさせた内田さん(仮名・埼玉県在住・40代男性)。弟子が師匠を超えることが多々あるように、今では、さわかみファンドをはるかに凌ぐ運用成績をあげているという。その投資手法とともに今注目している銘柄を聞いた。
「日本初」または「日本発」の意気込みを持つ
少数銘柄を選抜して買い増しを繰り返す!
今から17年ほど前、内田さんが社会人になった頃から、その運用哲学に心酔して購入を続けた投信が「さわかみファンド」で、多くの投資家がご存じの通り、本格的な長期投資を標榜するファンドだ。
内田さんはこのさわかみファンドの投資手法を踏襲した結果、現在の中核を占める銘柄は、いずれも10年以上の保有になっているという。
この内田さんの長期投資のスタンスは、最初に手本とした「さわかみファンド」以上に徹底している。内田さんの株式投資は、単なる値上がり益の追求ではない。社会に貢献している企業の株を買ってとことん保有し続けることで、自分自身も世の中の役に立ちたいと考えているのだ。
ただし、さわかみファンドと大きく異なるのが集中投資という点だ。わずか4銘柄が資産全体に占めるウエートは95%に達している。
「現状はそーせいグループ(4565)が約55%、ツノダ(7308)が約15%、サンテック(1960)が約15%、岡山製紙(3892)が約10%。相場全体が下げて株価が割安になった局面などを見計らって、どんどん買い増ししていきました。投資を始めて以来、常に10銘柄以下の保有にとどめています。数が増えすぎると、管理できなくなるからです」
中核4銘柄のうち、冒頭で触れたように社会貢献度に惚れ込んで買ったのは、そーせいグループ(4565)だ。
「そーせいグループ(4565)は、社長の日本発のグローバルバイオ企業として世界中の患者さんに貢献するとの信念に惚れ込んで04年から株主に。07~11年の株価低迷期も安すぎると考え社長の経営理念を信じて、大量に買い増していったら、12年後半から上昇し始め、さらに今年5月から急騰し8000円台の高値をつけ、一気に資産価値が膨らみました。安値での大量購入により平均買い単価が1000円台前半になっています」
その結果、株へのトータルの投入資金は約600万円だが、現在の資産価値は8000万円に迫る。しかし、内田さんは究極の長期投資を貫き、そーせいグループ(4565)の株をまだまだ売らないつもりだ。
岡山製紙など地方で奮闘する企業のほか
バイオ関連の株にも大きな期待をかける!
まさかの出来事で、泣く泣く売ってしまった銘柄もある。その代表例がACCESS(4813)だ。
「日本発のソフトウエアを広く世界に送り出すという創業者(荒川元会長)の信念に感銘を受けました。そして、有言実行で組み込みブラウザの世界的企業にまで成長しましたが、09年10月に荒川元会長が病で急死。社外取締役のオリックス宮内社長と当時ローソンの新浪社社長の存在に期待し、すぐに売れませんでしたが、結局、信念に近づくのは難しいと感じて13年にすべて売却しました」
とはいえ、02年12月に135万円で買って、1対5の株式分割もあり04年5月に一部を319万円で売却したのだから、大成功である。
経営者の信念に期待をかけて投資しているので、内田さんは株主総会に出席し、経営姿勢の微妙な変化も見逃さないようにしている。実際、アンジェスMG(4563)は株主総会をキッカケに見切り売りした。
「バイオベンチャーだからまだ業績が伴わないのは当たり前ですが、赤字でも株主を続けるには社長を信じられることが大前提。ところが、同社は社長の説明通りには新薬開発が進まず、次第に信用できなくなった。結局、7年以上保有し続けたものの、株主を止めました」
結果的に、その後も株価は下落し続けている。
残る3銘柄は別の尺度から選んだ銘柄だ。内田さんはこう説明する。
「キャッシュリッチ(手元の現金が潤沢)で、PBRが1倍割れの割安銘柄もターゲットとしています。その中でも、地方で頑張っている企業に期待を寄せています。岡山製紙に対しては、製紙業界の再編が進むことも期待しています」
最後に、現在の内田さんは、日本初&日本発となる可能性大とみているバイオ分野への期待がひときわ高いという。内田さんは、NISA口座をバイオ関連銘柄のみでその枠を使い切っているとのことだ。
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