これからは日経平均株価の終値が
8月の安値1万7714.30円を上回るかがカギ
激動の8月相場に続き、波乱の9月相場がスタートしています。日経平均株価の8月安値は26日の1万7714.30円でしたが、9月4日ザラ場中に1万7608.17円、また、7日に1万7478.72円を付け、あっさり1万7714.30円を割り込みました。
ただし、終値ベースでは4日は1万7792.16円、7日は1万7860.47円と、1万7714.30円を割り込んではいません。今後の関心は、1万7714.30円を終値で上回り続けることができるか否かです。上回り続けることができれば「底値固め」の展開が見込めます。逆に、終値で下回るようだと、「底値模索」の展開を余儀なくされる見通しです。
また、日経平均株価はテクニカル的には、5日移動平均線(7日現在1万8019.22円)がザラ場中のレジスタンスとして機能中です。このため、終値で同線を上回ることができるか否かにも要注目です。上回ることができれば「リバウンド開始」が見込めますが、逆に、終値で同線を下回り続けるようだと、「調整局面」が継続する見通しです。
海外投資家は2つの不透明要因を嫌い
日本株を売り続けている
ちなみに、前回当欄で指摘したように、本格的なリバウンド相場入りするためには、200日移動平均線(7日現在1万9076.71円)を超えてくることが必要です。また、5日移動平均線を割り込み続ける限り、大きめの余震が断続的に発生するリスクが高いとの見方も不変です。
なお、前述の8月安値1万7714.30円を、終値で下回るようだと、8月の下落は「本震」ではなく、「前震」となり、9月に発生している今の下落の最終局面が「本震」となる可能性が高まります。もちろん、同程度の規模の地震が複数回発生して「本震」が決めにくい展開も予想されます。しかしながら、いずれにせよ、今後、8月安値1万7714.30円を終値で下回るようだと、相場全体の「ナイアガラの発生」への緊張感が高まることは、ほぼ間違いないとみています。
株式市場における地震とは、それまでの安定的な株式の需給関係が破壊され、相場が急落する現象です。そして、今、日本株の需給を破壊しているのが、海外投資家です。実際、8月第4週(24~28日)の投資部門別株式売買動向では、海外投資家は3週連続で売り越し、売越額は7070億円と、14年3月第2週の9752億円以来の大きさでした。
海外投資家が日本株を売っている理由は、中国景気の先行き、及び、米国金利引き上げという2大不透明要因です。この2大不透明要因が一向に解消されないため、海外投資家は、リスクオフ姿勢を強め、リスク資産である「株式」を売り続けています。
FRBの9月の利上げは
現時点でまったく予想がつかない
ところで、4日発表の8月の米雇用統計が強弱入り交じる内容でしたから、9月16~17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、市場にとって最大の注目イベントです。
8月のそれは、前月比の非農業部門の雇用者増加数は事前の市場予想に届きませんでしたが、6月と7月分がそれぞれ上方修正され、失業率は2008年4月以来の低水準に回復しました。このような状況下、5日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議声明では、「(政策変更の)負の波及効果を最小化する」とし、米利上げをけん制しています。
また、5日、ラガルドIMF専務理事も、「利上げに動く前に雇用、物価に不確実性がないように」と指摘しました。このように外野から利上げ見送りを期待されてはいますが、実際に、政策の独立性を発揮したい、米連邦準備理事会(FRB)が9月に利上げに動くか否かはまったく予想できない情勢です。
中国株は緩やかな下落トレンドをたどっていき、
日本株への影響は少なくなっていく
一方、中国に関しては、G20財務相・中央銀行総裁会議で、周小川中国人民銀行の総裁が6月中旬以前は「株バブル」と認めた上で、「元相場は安定に向かい、株式市場もおおよそ落ち着いた」としています。また、楼継偉財政相も会議で、中国経済に関して、「今後5年間は苦難の過程になるだろう」との認識を示したそうです。その上で、中国政府は7日、「サーキットブレーカー」制度を導入すると発表しました(編集部注:株式市場が大きく変動した際、相場を安定させるために値幅制限や取引中断などの措置が取られること)。
その一方、証券監督当局は6日、「一般の状況下では、市場に介入しない」と改めて表明しました。政府系ファンド「国家隊」の強力かつ人為的な買い支えがなくなるのなら、景気減速を織り込む格好で、中国株は緩やかな下落トレンドを描き続けることでしょう。
市場は急激な変化は嫌いますが、緩やかな変化には寛容です。つまり、今後、中国株が今後下落するにしても、緩やかな下落である限り、日本株の攪乱要因としての存在意義は徐々に低下していく見通しです。そうなると、上海株の上下に合わせて日経平均株価先物を売り買いする「上海株ウォッチ・トレード」も下火になっていくことでしょう(笑)。そして、いつの日か、誰も、上海株の動向に興味がなくなり、特に話題にも上らなくなる。そんな時代が来るかもしれません。
相場が良くなるまで
小型成長株や小型材料株は触るな
ちなみに、8月21日時点の信用取引の買い残は3兆5870億円と07年11月以来、約7年10カ月ぶりの高水準でした。しかし、その後の相場急落を受け、「追い証」が大量発生しました。そして、相場水準が低位で推移する限り、追証絡みの処分売りが今後も出続ける見通しです。
現状、個人信用の体力は著しく低下しています。信用取引を駆使するアクティブ個人のリスク許容度が低下し、リスクテイクしにくい相場環境で、最も厳しい値動きを強いられるのが、高PERの小型成長株や、足元業績の悪い小型材料株(いわゆる「ボロ株」)などですね。その多くは、新興市場や東証2部に属しています。また、東証1部所属でも、時価総額の小さい業績悪銘柄群も同様です。
これらは、仮に戻っても換金売りの対象になり、逆に、値動きが鈍いようなら、見切り売りが出続けることでしょう。とにかく、株式相場が本格的に出直るまでは、個人信用の関与率高い、銘柄群はアンタッチャブルです。需給が悪すぎです。
一方、主力株については、11日の株価指数先物・オプション9月物のSQ算出、14日~15日の日銀の金融政策決定会合、そして、16~17日のFOMCなどの重要イベントを通過するにつれ、方向性が明確になるのではないかと思います。現時点で、底入れして反転上昇となるか、それとも、いったん底割れして急落するか、5分5分とみています。このため、相場の先行きを今、決め付けるのではなく、方向性が出たらその時点で、柔軟かつ適切に、そのトレンドに上手く乗るようにするべきでしょう。
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