闇株新聞[2018年]

「7兆円の運用損」は、何の問題もない!闇株新聞がGPIFの運用成績を精査国債から株式へのシフトはひとまず成功

2015年12月11日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
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経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」。今回は昨年秋にポートフォリオを「国債中心から株式での積極運用へ」と大転換したGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用成果を検証! 

7-9月期は7兆8899億円ものマイナスだったが…

 11月30日に発表されたGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2015年7~9月期運用収益は7兆8899億円ものマイナスになっていました。さっそく「年金が危ない」などとする報道もありましたが、あまり目くじらを立てる必要もなさそうです。

 確かに2015年7~9月期の期間収益率は運用資産比5.59%ものマイナスですが(年率換算ではありません!)、これは2015年8~9月の世界の株式が大きく下落したためです。10月以降の世界の株式市場は大きく回復していますから、2015年10~12月期の運用成績はいくらなんでも回復しているでしょう。

 そもそも年金運用は超長期の運用なので、短期的な相場変動に一喜一憂する必要はありません。相場が上昇時でも下落時でも指標(インデックス)に大きく見劣る運用でなければ一応は合格です。指標を上回る運用などハナからアテにしないことです。

ポートフォリオの大転換は見事なタイミングだった

 GPIFは昨年(2014年)10月31日付で、厚生労働大臣の認可を受けた「中期計画の変更について」というリリースを出していました。その主な内容は基本ポートフォリオの大幅な変更でした。その内訳は以下の通りです。

・国内債券60%(上下8%)→35%(上下10%)大幅減
・国内株式12%(上下6%)→25%(上下9%)大幅増
・外国債券11%(上下5%)→15%(上下4%)やや増
・外国株式12%(上下5%)→25%(上下8%)大幅増

 ところで、このリリースが出された2014年10月31日は、いわゆる「黒田バズーカ2」(日銀の追加量的緩和)が発表された日です。ご存じの通り、そこから日経平均は急上昇し、円安が加速していったのでした。

 追加量的緩和で株高・円安にしてGPIFの運用成果を向上させようとしたのか、あるいは逆にGPIFの資金を使って一層の株高・円安にしようと考えたのかはわかりませんが、とにかく「見事に連携を取っていた」ことになります。

 これには「よくやっていたじゃないか!」と少し感心しています。2012年12月に安倍政権が発足して急激に円安・株高が進んだ局面では、ジョージ・ソロスらヘッジファンドに収益機会を提供しただけだったことを考えれば、大変な進歩です。

GPIFの運用成果を詳しくチェック!

 運用方針が変更される直前(2014年9月末)の国内株式の運用残高は23兆8635億円、年金積立金全体に占める構成割合は17.79%でした。9月末の株価は日経平均1万6173円/TOPIX1326.29ポイントでしたが、10月17日に日経平均1万4532円/TOPIX1177.22ポイントの安値を付けています。

 運用方針の変更は株価的にも絶好のタイミングだったのです。

 次に、四半期毎に収益額(運用資金の増減ではなく純粋の運用成果だけです)と期末のTOPIXを比べてみます。


 この1年間の国内株式の収益合計は2兆1022億円で、その間のTOPIXは1326.26から1411.16まで6.4%上昇、2014年10月17日の安値からだと19.9%も上昇しています。

 2015年9月末の国内株式の運用残高がなぜか記載されておらず、年金積立金全体に占める比率が21.35%とだけ記載されています。

 同時点の運用資産額は135兆1087億円ですが、年金積立額はこれより3~5%多いはずです。とすれば、国内株式の運用総額はだいたい29兆7000億円~30兆3000億円だったと見積もることができます。

結論:GPIFの積極運用への変更は「成功」

 2014年9月末~2015年9月末の国内株式の収益額合計は2兆2011億円で運用資産は6兆1365億円も増えています。ということは、GPIFはこの1年間に国内株式を約4兆円買い増していたことになります。

 仮に2014年9月末時点の国内株式運用残高23兆8635億円をそのまま1年間維持していたとすれば、運用収益はTOPIXの上昇幅(+6.4%)と同じとして、1兆5272億円のプラスです。

 つまり、この1年間で4億円買い増したことで収益額は6000億円ほど多くなったことになり、買い増した4兆円も15%の収益を上げていたことがわかります。

 以上から、追加量的緩和とタイミングを合わせたGPIFの積極運用への変更は、とりあえず「成功」だったと言えるでしょう。

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