1月29日、黒田日銀総裁が、「マイナス金利導入」という、完全に市場の意表を突いた「バズーカ第3弾」を発射しました。このマイナス金利導入が伝わるやいなや、日経平均先物は急騰、そして急落。しかし、最後には強烈な「たくり」で大幅高となりました。
具体的には、まずは日経平均先物は12時38分に1万7850円まで急騰しました。しかしながら、マイナス金利が業績に悪影響を与えるとみられる銀行株が急落し、また、マイナス金利の影響が経済に与えるポジティブな影響は限定的ではないのかという懐疑的な見方が強まり、先物は急落、13時20分には1万6740円まで売り叩かれました。しかし、売り一巡後は急速に買い戻され、結局、前日比600円高の1万7640円で取引を終えました。
当面の日経平均株価の戻しメドは1万8000円付近、
直近の急落はそれほど心配する必要はない
当面の日経平均株価の戻りメドについては、2015年12月1日の2万12.40円から1月21日の1万6017.26円までの下げ幅3995.14円をベースに考えればよいでしょう。この下落幅に対する半値戻しは1万8014.83円、61.8%戻しは1万8486.26円です。まずは、この程度のレベルまでの戻りは期待したいところです。
一方、下値ですが、上昇する5日移動平均線(2日前場現在1万7490.72円)に注目します。同線を割り込むようだと、1番底の1月21日の1万6017.26円に対する2番底形成が意識されるかもだからです。しかしながら、昨年12月1日から今年の1月21日までの立会日数は33日です。これと同期間だけ上昇を続ける想定なら、応答日(1月21日から33営業日)は3月9日になります。3月第2週の金曜日の11日は、先物・オプションのメジャーSQ(オプションと先物の決済が重なる日:3、6、9、12月の第2週金曜)算出日です。よって私は、3月のメジャーSQ前までは堅調な相場を見通しています。まあ、それでも、5日移動平均線を割れたら、慎重に現金比率は高めておきましょう。再び、同線を上回ったら買い戻せばよいだけのことですからね。
急落をあまり意識しなくてよいと思う根拠は、裁定買い残と信用買い残が共にカラカラだからです。1月22日時点の裁定買い残高(期近・期先合計)は2兆1123億円でした。昨年10月2日時点の2兆723億円以来、3カ月半ぶりの低水準です。また、1月22日時点の信用買い残は2兆9692億円です。こちらは昨年6月5日以来およそ7カ月半ぶりに3兆円を下回りました。まあ、相場が急落する過程で、裁定解消売りと信用買い方の決済売りが加速した結果、共に残高が大幅に減少したでしょう。
こうなると、目先は、裁定解消売りで日経平均現物指数の下げが加速したり、値幅が出たりすることはあまり意識する必要はありません。また、信用買い方の追証絡みの投げ売りも、それほど心配する必要はなさそうです。
マイナス金利がメリットになる銘柄、
それは円安がプラスになる輸出企業だ!
このような状況では、何を買うべきなのか? 答えは「国策に売りなし」の相場格言を想起すればよいだけのことです。
今回の国策は「マイナス金利」です。マイナス金利がメリットになる銘柄を買えばよいのです。
まず、マイナス金利は円安を引き起こします。よって、円安がメリットになる輸出企業を買えばよいということになります。また、マイナス金利は、巨額の債務を抱える政府に「利払いの軽減というメリット」を与え、結果、巨額の日本政府の債務の解消に寄与することでしょう。
ただし、民間の過剰債務企業にまで、そのメリットが及ぶかというと話は別で、あくまでも「国債ベース」とみています。それでも、民間ベースでも資金調達コストの低減や、住宅ローン金利の低下などは見込めます。その意味では、その他金融セクターや不動産関連セクターも狙い目でしょう。
逆に、「マイナス金利」は銀行や保険会社にとっては本業及び運用面で強烈な逆風です。このため、銀行や保険セクターは、このマイナス金利政策が終わるメドがつくまでは、投資対象としてはアンタッチャブルです。
株式市場には黒田日銀総裁の
「物価上昇のためなら」の意気込みは伝わった
一方、今回なぜ日銀がマイナス金利導入に追い込まれたかといえば、原油価格急落に伴う期待インフレ率の低下です。原油価格急落の原因は、供給側では「産油国の生産調整が行われず、過剰供給が続いていること」です。一方、需要側は「新興国、特に中国の景気減速が顕著で、原油需要が落ち込んでいること」です。生産調整に関しては、OPEC及び非OPECとの間で、なんとかしようという動きが出つつあるようです。
しかし、中国の景気減速はいかんともしがたいです。ECB(欧州中央銀行)と日銀がマイナス金利を導入し、事実上の通貨安競争をしている状況下、中国の人民元は相対的に割高になります。景気が悪いのに人民元高が続くと、中国の輸出は伸び悩み続け、ますます景気が悪化し、人民元の下落リスク、切り下げ懸念が強まる見通しです。このため、中国向けのビジネスをメインに行っている銘柄も当面はアンタッチャブルでしょう。
中国経済がかなり深刻なことは、上海総合指数が一向に下げ止まらないことからも明らかです。しかし、足元の日本株は完全に「中国離れ」しているので、「目先は無視でいい」と思います。ただし、いつかまた、市場心理が弱気に傾くと、中国発の日本株急落、すなわち「チャイナ・ショック」が発生するとみています。
ただし、間違っても、中国問題が深刻だから、日本株はもう上がらないはずと、決めつけて、安易に空売りをしないことです。
基本的に、自国の株式市場の動向は、政府や中央銀行の行う財政・金融政策がメインです。もちろん、市場シェアの6割~7割を握る外国人投資家の動向は無視できません。しかし、政府や中央銀行の行う財政・金融政策が日本株高に寄与すると、彼らが考えるなら、当然、日本株を買うはずです。
最後に、マイナス金利にはメリットとデメリットがあり、また、日銀の思惑通りに期待インフレ率が高まり、物価が順調に上がるかどうかは現時点では分かりません。
しかし、「物価を上げるならなんでもするぜ!」という黒田日銀の意気込みは伝わっています。当面の日本株と円相場は、その意気込みを評価し続け、株高・円安が継続するのではないかと、期待を込めてみています。
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