長い間、安定的な配当が魅力だった医薬品株。だが、今や利益以上に配当を出す企業や自社株買いを積極的に行なう企業など内実は様々だ。一方で、安定配当を謳い2015年11月に上場したのが郵政3社。マイナス金利の導入で運用利回りが低下し、収益構造が怪しくなっている。高配当が魅力だったこれらの株は買いなのか。医薬品株と郵政3社株を検証する。
高配当で有名なあの医薬品株の配当は
なんと利益より額が大きいタコ足だった!
医薬品と言えば、かつては“高配当株”の代名詞とも呼べる存在だった。人が生きている限り医薬の需要はあるので景気に左右されにくく、財務内容は健全。常に潤沢なキャッシュを持っているので安定・高配当が持続できたのだ。
「主力医薬の特許切れや後発薬(ジェネリック)の普及などによって、大手医薬メーカーの収益力は年々下がっており、もはやかつてのような配当余力は失われつつあります」(クォンツ・リサーチ代表の西村公祐さん)
象徴的なのが業界最大手の武田薬品工業(4502)。1株配当は180円と高水準を継続しているが、実態は1株益をはるかに上回る、まさに“タコ足”状態となっている。
業界2位のアステラス製薬(4503)や同3位の第一三共(4568)のように業績がよく、株価の堅調な銘柄もあるが、その分、そうした銘柄は当然ながら配当利回りは低め。
「もはや医薬品=“高配当”という発想は捨てて、業績の伸びている銘柄を成長株として買うのも手という時代になっています」(西村さん)
たとえば、塩野義製薬(4507)などは、主力医薬への選択と集中によって急成長株に変貌を遂げており、かつての安定高配当株の面影はない。
医薬品株の場合、3%前後の配当をコツコツ積み重ねるよりも、こうした株を買い成長に乗ったほうが一気に大きく稼げる可能性がありそうだ。
郵政3者株の現状は雲行きが怪しいが
かつての電力株並みの安定高配当株になれるか!?
安定配当への期待とともに株式公開を果たした日本郵政(6178)、ゆうちょ銀行(7182)、かんぽ生命保険(7181)の郵政3社。だが、安定配当を実現するためには、何よりも安定的な収益基盤を確保することが大前提となる。
「日本郵政は宅配便会社、ゆうちょ銀行はメガバンクをはじめとする民間銀行、かんぽ生命保険は大手国内生保や外資系生保と、手強い民間企業を相手に戦うことになります。本当に儲けられるのか、と心配せずにはいられません」(西村さん)
さらに思わぬ逆風となったのが、日銀が2016年2月に導入したマイナス金利だ。
これによって、グループの稼ぎ頭であるゆうちょ銀行は、貸出金利と調達金利の利鞘の圧縮、主な運用先である国債の利回り低下に苦しむことになった。保険料の大部分を国債で運用するかんぽ生命保険も同様だ。
「一方でたとえ収益が上がらなくても、公共セクターに等しく、いまも政府が筆頭株主である日本郵政も金融2社も、国が絶対に潰さないという安心感があります。かつての“電力株”のように、安定高配当株としてもてはやされるようになる可能性もかなりあります」(西村さん)
そう考えると、株価はまだ下がる可能性があるため、新たな株の売り出しなどの局面で買うのもありだ。
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