世界でも高いGDP成長率を誇ってきたインド経済が、
最近スランプに陥っている
インドは、ビジネス・フレンドリーなことで知られるモディ首相の下、今年9月に法人税率を35%から25%へ引き下げるなど、近年、相次いで経済改革を打ち出し、主要国としては世界で最も高いGDP成長率を誇ってきました。
しかし、このところのインド経済はスランプに陥っています。その理由は、シャドーバンキングの問題の表面化やそれによる取り付け騒ぎの発生、ムーディーズによるダウングレードなど、問題が相次いだことです。
シャドーバンキング問題の表面化により、
短期で見るとインド経済の見通しは厳しい
歴史的にインドの銀行セクターは、国有銀行が銀行の総資産の69%を占め、大きな役割を果たしてきました。しかし、国有銀行はコーポレート・ガバナンスが弱く、特定の大口貸付先と癒着的な関係が続き、不健全な融資が焦げ付くケースも散見されてきました。
そこで国有銀行が融資基準を厳格化したため、大口の借り手はノンバンクのいわゆるシャドーバンクにローンの借り換えを依存しました。これらのシャドーバンクは銀行よりも監督が緩く、融資の自由度が高いため、不動産セクターを中心に積極的に貸付を伸ばしてきました。
しかし、2019年9月にシャドーバンクのひとつPMCが大口貸付先の焦げ付きから政府に接収されました。そして、政府が預金の引き出しを制限したため、預金者がパニックを起こして窓口に殺到するという事件がありました。
この事件の後、シャドーバンクの融資は鈍っており、インド経済全体に金詰り感が出ています。具体的には、住宅ローンや自動車ローン、法人融資などが受けにくくなっています。その影響で、自動車メーカーや建設セクターは冷え込みを感じています。
こうした状況を受けて格付け機関ムーディーズは、11月8日にインドの長期ソブリン格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げました。現在、インドの長期ソブリン格付けはかろうじて投資適格を維持している状態です。
このように、短期に見たときのインド経済の見通しは厳しいです。とりわけ、国有銀行が抱えたままになっている不健全なローンをほぐすのには時間がかかると思います。
しかし、長期で見るとインド経済には期待できると思います。
「インフレ体質の改善」や「直接投資の高さ」など、
長期で見ればインド経済には良い材料も!
まず、歴史的にインド経済の泣き所だったインフレ体質は、このところぐっと改善してきている印象を受けます。
次に、長期的展望に基づきインドの将来性に目を付けた海外からインドへの直接投資は高水準で推移しています。
さらに、「インド・ルピーは大丈夫か?」という問題に関しては、外貨準備高がひとつの目安になります。
戦争や経済制裁などで通常の外国との資金のやり取りがパタリと止まった場合、中央銀行が外貨準備を取り崩して「通貨防衛」します。しかし、国民生活に必要なガソリンや食料、その他輸入品は、外国から買い続けなければならず、その分のおカネは出て行ってしまうのです。なので、通貨防衛の原資となる外貨準備と輸入額の比較が目安となります。
通常、これが3カ月分を切ると「アブナイ」と考えられていますが、2019年のインドの外貨準備高は輸入額の6.8カ月分あるので、鉄壁だと言えるでしょう。
これらのデータから、目先のゴタゴタが片付けばインド株は再び上昇すると思われます。
インドに投資するには、ETF(上場型投信)を利用するのが良いと思います。具体的な銘柄としては、大型株中心に投資したい場合はウィズダムツリー・インド株収益ファンド(ティッカーシンボル:EPI)、小型株・内需のストーリーならヴァンエック・ベクトル・インド小型株ETF(ティッカーシンボル:SCIF)が好適です。
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【今週のまとめ】
インドは、長期的に最も期待できる新興国のひとつ!
現在の不景気感を乗り越えての再上昇に期待
インドはダイナミックなリーダーの下、ビジネス・フレンドリーな政策を次々に打ち出してきました。長期では最も期待できる新興国のひとつだと言えます。足下ではシャドーバンキングの問題から金詰りの問題が生じており、不景気感が漂っていますが、これを乗り越えればインド株は再び上昇すると思います。
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