リーマンショックで世界経済の危機は終わらない――そう主張し、今年4-5月の欧州債務問題による相場波乱の予想も的中させたエコノミストの中原圭介さん。中原さんはこの8月から10月にかけても世界の経済と金融市場には危機が続くと警鐘を鳴らしている。スペイン長期国債の金利が危機ラインと言われる7%を超える中、欧州各国の首脳やECBなどは危機回避に必死だが、それでもやはり危機は起きるのだろうか――。中原さんに、直近の状況を踏まえて最新の予測を語ってもらった。
ECB会合は期待外れだったが、8月中の欧州発の危機拡大は遠のいた
中原圭介(なかはらけいすけ)金融・経営のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」のエコノミスト兼ファイナンシャルプランナー。サブプライムショックや2011年の日経平均、今年5月の欧州危機を当てるなど、経済予測の正確さには定評がある。主な著書に『経済予測脳で人生が変わる!』(ダイヤモンド社)、新刊は『これから世界で起こること』(東洋経済新報社)私の予想通り4-5月には欧州債務問題が再燃して金融市場が混乱しました。
その後の欧州債務問題の焦点はギリシャからスペインに移り、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は7月26日に「どんなことをしてもユーロを守る」と発言し、8月2日には3月に停止した南欧国債の購入の準備を始めると表明しました。
しかし、ECBやEFSF(欧州金融安定化基金)による南欧国債買い取りという対応だけでは、債務危機を先送りするための「時間稼ぎ」にすぎず、問題の抜本的な解決策には程遠いと私はみています。
というのも、現在のスペインの長期国債の6%~7%という金利では、10年間で元利金支払いが1.8倍~2倍に膨れ上がる計算になるからです。これでは、いくら財政健全化の努力を重ねても、債務が膨らんでいくばかりです。
2日のドラギ総裁の南欧国債再開の方針の表明は、内容的に全く期待外れなものでした。その方法・金額・時期などに関する具体的な言及が全ない上に、前提として財政危機国からの申請があることEFSFも購入を始めることといった、決してハードルが低くない条件を付けてきているからです。
しかし予想外にも7日には、メルケル政権の報道官が「ドイツ政府としてECBの南欧国債購入の計画を支持する」と発言しました。メルケル政権はドイツ連銀と国民の反対を押し切る覚悟を決めた模様です。
これでEFSFが南欧国債を購入できる可能性が高まりました。スペインのラホイ首相もEUに支援を依頼すると見られており、これでドラギ総裁が先日示した国債購入の前提条件が揃いそうです。
早ければ、今月中にもECBとEFSFによる南欧国債の購入が始まるという観測があり、欧州の金融市場では安心感が広がって来ています。とりあえずは、8月の欧州発の混乱が避けられる見通しが立てられるようになりました。



