【今回のまとめ】
1.キプロスが欧州連合(EU)の示した救済条件に大筋で合意した
2.第2位「ライキバンク」顧客の10万ユーロ以上の預金は「全損」も?
3.ライキバンクは分割され、消滅する
4.ギリシャ、スペインの預金者が浮足立つ可能性も
キプロス第2位の銀行が“処理”の対象に
日本時間の3月25日(月)朝、ブリュッセルで開かれていたユーログループの会合の席上、キプロスがEUの示した危機回避案に大筋で合意しました。
それによると、キプロス第2位の銀行である「ライキバンク(=キプロス・ポピュラー銀行)」の顧客は預金のうち10万ユーロ以上の部分に関しては預金保証の対象とならないため、全額が失われるリスクが生じることになりました。(これは、下に述べる「預金税」ではありません。)
一方、キプロス最大手である「キプロス銀行」の10万ユーロ以上の大口預金に関しては、現在のところまだ詳細はわかっていません。
またライキバンクは“グッドバンク”(よい部分)と“バッドバンク”(悪い部分)に分けられ、事実上消滅する見通しです。よい部分に関してはキプロス銀行と統合される見込みです。
なお今回キプロス政府とEUとの間でできあがった合意は、今後、ユーログループでの表決、さらにドイツ議会での表決で可決されることが必要となります。
キプロス問題、これまでの経緯をおさらい
3月16日(土)に、EUがキプロスに対して「100億ユーロの金融支援を行う用意があるが、それには条件がある。キプロス自身も58億ユーロのお金を探して来い!」と宣告しました。
58億ユーロを工面する具体的な方法として銀行預金に課税するという方法が提案されました。これは「預金税」と呼ばれるものです。10万ユーロ以上の預金に対しては9.9%、それ以下の部分については6.75%を“税金”という名の下に、政府が没収するわけです。
なぜ「預金封鎖」をしたのか?
なお、課税が発表されると、その前に預金を全部引き出したいと考えるのが人情ですから、皆が銀行に殺到します。すると“取り付け騒ぎ”に発展する恐れがあります。
そこでお金を引き出したり、別の口座に動かしたりできないように銀行取引を凍結する必要が出ます。これを「預金封鎖」と言います。現在、キプロスでは市民の生活に必要な最低限のキャッシュだけはATM(現金自動預け払い機)から出せる状態になっています。
さて「58億ユーロを預金税でかき集めて来い!」と命令されたキプロス政府は、同国の憲法の手続きに従い、上記の預金税を議会の表決にかけました。
その結果、預金税はアッサリ否決されてしまいました。
しかし「もしかして、自分の預金がアブナイかもしれない」ということは、すでに庶民に知れ渡ってしまいました。このためキプロスの銀行は、もう通常の業務を続けることはできません。
議会にEU案を却下されたキプロス政府が取った措置
そこでキプロス政府は、何とか大混乱を未然に防ぐため一連の方策を講じました。
まず「銀行整理法案」が可決されました。これは経営内容が悪い銀行を、速やかによい部分と悪い部分に分け、出血を喰いとめる方法です。
キプロスの場合、2番目に大きいライキバンクの経営内容がとりわけ悪いため、これをグッドバンクとバッドバンクに分け、グッドバンク部分を1位のキプロス銀行と合併させる必要が出たのです。
次に「資本規制法案」が可決されました。これは一度に電信振替などの方法で持ち出せる金額を制限する法律です。預金の流出を食い止めるのがその目的です。今回の決定にはチェッキング口座(=小切手が振り出せる口座)の利用を大幅に制限することも含まれています。
なぜ小切手すら振り出せないようにするかといえば、キプロス国内に銀行口座をもっている預金者が、たとえば「第三国に本社を置く○×証券」に口座を開き、そこへ小切手を送れば預金を移せてしまうからです。
最悪の場合は“物々交換”の時代へ逆戻り
このように小切手の動きを封じるとなると、キプロス国内のあらゆる商取引がやりにくくなることが予想されます。上に書いたように現金の引き出しも制限されているわけですから、この規制が長引けば、最悪の場合“物々交換”の時代にもどるような不都合さが生じるリスクがあるのです。
さらに、3つ目の方策として「連帯投資基金」の設立が可決されました。これはキプロス政府の持つ資産をこの基金に移管し、その信用力を担保にお金を前借りするという仕組みです。具体的には地中海沖の天然ガス田の権益やキプロス市民の年金ファンドの資産などを「ちょっと拝借」することになると言われています。
もちろんキプロス政府は「何とか銀行を救おう」という善意からこれらの非常事態下での措置を講じようとしているだと思いますが、ちょっと間違えば、庶民は銀行預金の一部だけでなく年金も失うリスクに晒されるわけで、政府が国民の財産の処分に関して勝手に判断を差し挟むことを可能にする、上記の一連の立法には批判の声もあります。
この連帯投資基金が実際に実行に移されるかどうかに関しては、現在のところ判然としません。
日本は、戦後で唯一“預金封鎖に成功”した国
なお預金税は過去にいろいろな国で導入が試みられましたが、その大半は失敗に終わっています。第二次世界大戦以降で唯一、預金封鎖に成功したのは日本です。
当時日本は戦争で多額の債務を抱えており、しかも太平洋戦争の過程で財閥の経済支配が強まり、貧富の差が拡大しました。そこで戦後の国家の立て直しに際しては、偏在する富を是正することが欠かせないと、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は考えたのです。そこで預金封鎖をした上で、旧円を新円に切り替えることを実施しました。
ギリシャ、スペインに飛び火するか注目
さて、話をキプロスにもどすと、キプロス政府がEUの意向に沿うと決めたことで、当面、欧州中央銀行(ECB)からの緊急流動性支援プログラム(ELA)は継続されると思います。
これは言わばキプロスに対する「酸素補給」です。しかし、これでキプロスの危機が一件落着するかどうかは、まだ予断を許しません。
実は、今回の騒動で当初の予想より上手くいっていたこともあります。それは少なくともこれまでのところギリシャやスペインなどの近隣国では取り付け騒ぎが起こっていないということです。
ただ、今回、ライキバンクの大口預金者が10万ユーロ以上の部分に関して全てを失う可能性が出たことを見て、近隣国の預金者が浮足立つ可能性が無いとは言い切れなくなってきました。
とくにイタリアの場合、先の選挙の後、現在もまだ多数派形成ができておらず、政治は空白になっています。仮に再選挙ということになった場合、ユーロ離脱派が大幅に得票を伸ばす可能性もあります。
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