世代を問わずほとんどの日本人が抱えている最も大きな不安が「老後のお金」の問題。なぜ不安なのかと言えば、自分自身の老後の生活費も、生涯で受け取れる年金額も、ちゃんと把握できていないというのがその一番の理由だ。「100年安心」と言われた年金だが、現状維持が不可能なのは明白。今の制度を想定した老後準備は危険すぎる。日本の年金は仕組まれた罠だらけだった。

いよいよこの4月から年金の減額が始まる!
欧米と比較すると日本も68歳支給が不可避

 親や祖父母を見て、老後生活をイメージしていないだろうか? また、「60歳になったら年金生活ができる」と勘違いしていないだろうか?

 残念ながら、これから老後を迎える世代は、相当な準備がない限り、親や祖父母たちのようなゆとりある老後は望めない。退職後、すぐに年金生活に入ることも望めない。

 理由は単純だ。周知のように少子高齢化は急速に進み、現在は現役世代2.5人で老人1人を、8年後の2023年からは現役世代2人以下で1人の老人を支える時代に突入する。加えて国と地方の借金は1035兆円という途方もない金額だ。

 その結果、親や祖父母たちの老後生活を支えた、十分な年金額がもらえなくなるからだ。ちなみに現在の年金制度は現役世代が納める年金保険料と税金を積み立てず、そのまま老人の年金へ回す仕組み。この仕組みが設計された1961年は現役世代11人で老人1人を支えていた。

 このように年金制度はすでに限界に達しているため、4月から本格的な年金の減額がスタートし、将来的にはかなりの水準まで減額される見込みだ。年金減額の詳細を見る前に年金はいったい何歳からもらえるのかを考えてみよう。

 なぜなら支給開始年齢も現状維持が不可能になっているからだ。図を見てほしい。

 主要先進国を見渡せば、米国やドイツは67歳へ、英国は68歳へ支給開始年齢の引き上げを決定している。特に注目は平均寿命だ。この3カ国はいずれも日本の平均寿命より3~6歳も短い。日本は世界で最も長寿なのに、年金支給の開始は最も早い。そんな好都合で矛盾だらけの年金制度が続くはずがない。

 この図から察してほしいのは、世界の趨勢と日本人の寿命を考慮すると、日本でも40代以下の世代は70歳からの支給開始も覚悟しておく必要があるということだ。

男女で異なる支給年齢の引き上げ予定、
支給開始が68歳なら900万円も不足!

 50代の人も安心できない。政府の説明不足で知らない人も多いが、年金の支給開始年齢引き上げは確定している。

 すでに国民年金は65歳支給へ移行しているが、厚生年金も段階的に引き上げが決まっている。さらに遠くない将来に68歳への引き上げが確定的だ。実は2011年に政府は年金支給開始年齢の段階的な引き上げ案を公表している。ただ、「100年安心」と聞かされていた国民の反発が強すぎたため、議論が凍結されたのだ。

 もっとも、議論を封印したとしても年金財政の危機的状況が変わるはずもなく、図にあるように「ゆっくり案」「ハイペース案」のいずれかのパターンで66歳以上に引き上げられると見ていいだろう。

40代は再引き上げ案を想定を。問題は退職年齢と支給開始年齢のギャップ。年下の妻がもらう年齢にも注意。収入の空白期間、夫の年金だけで暮らす期間を確認して老後準備を。

 ここで重要なのは、老後プランを作る上で、若い世代ほど年金の支給開始年齢の引き上げを想定しておくことだ。

 引き上げリスクは、ねんきん定期便にも記載されていないし、国や金融機関が作る年金関連のパンフレットでも、年金は予定どおりの年齢からもらえる前提で書かれている。

 だが仮に月額25万円、年間300万円の年金収入を想定していた場合、支給開始年齢が3年引き上げられたら、総額900万円も収入が不足することになる。想定外だと、こうしたリスクへの対応も厳しいので、図を見て引き上げスケジュールを確認の上、特に40代以下はさらに2年程度の引き上げも想定しておくといいだろう。

物価上昇率と同じ比率で年金は増えない!
年金額の実質価値は年々低下の一途に

 さらに、日本ではこっそり年金を減額する仕組みがすでに導入済みだ。

 現在の年金水準を維持するのは不可能。どのような道筋を辿るにせよ、支給開始年齢は先延ばしされ、将来もらえる年金額は現在の水準より下がることを覚悟しておくべきだ。

 実は年金額を減らすこともすでに確定している。それが2005年に導入された「マクロ経済スライド」という制度だ。今後、新聞やテレビ等で目にする機会も多いと思うので、ぜひ覚えておいてほしい。

 この制度の本質は痛みを伴わずに年金額を減らすこと。従来、国は物価上昇(実際は他にも現役世代の賃金上昇なども複雑に勘案)に合わせて年金額も増やしてきたが、今後は物価が上昇しても、それに合わせて年金の増額はしないことで実質の年金額を減らすのだ。

 もう少し具体的に説明しよう。図を見てほしい。

 従来、例えば物価が3%上昇すれば年金額も3%増額することで、年金受給者の購買力は変わらなかった。しかし、マクロ経済スライド制の下では、年金額は物価上昇率より0.9%低い率でしか増えない。つまり、物価が3%上昇した場合、年金額は2.1%しか増えないのだ。年金額は増えるものの、物価はそれより上がっているので年金受給者の購買力は低下、つまり実質の年金額は減っていくという巧妙なカラクリなのだ。

 ただ、この制度は物価上昇が前提なので、物価が下がるデフレ状態では発動できない。05年の制度導入後は深刻なデフレ経済が続いたので一度も発動されることはなく、一般には話題にもならなかった。ところが消費税増税やアベノミクスによって14年は物価が上昇。この4月からいよいよマクロ経済スライドが発動され、年金額は実質0.9%減額されることが確定したのだ。

 来年以降、そしてその先はどうなるのだろうか。政府も日銀も継続的なインフレにしようと必死なのは周知のとおり。さらに政府では、「マクロ経済スライドをデフレでも実施すべき」という意見が多数を占めていて、「物価の上げ下げに関係なく毎年減額」も現実味を帯びてきた。

 こうした現状をしっかり頭に入れて老後を考えることが重要なのだ。

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