株ニュースの新解釈
【第135回】 2015年3月17日 保田 隆明

ふるさと納税は地域経済に
どの程度のプラス効果があるかを試算してみた。
~納税額全国3位北海道上士幌町のケース~

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 ふるさと納税は、平成27年度からは寄付金控除の上限金額の倍増や、確定申告手続きの簡素化が予定されており、ますますの利用の拡大が見込まれる。お金が都市部から地方へ巡るという意味では、地方創生の大きな策としても期待されている。

 一方で、ふるさと納税の寄付金のおよそ半分程度は、多くの自治体でお礼の品としての特産品の購入に充てられており、自治体が純粋に使える金額が減ってしまうことから様々な意見も存在する。

 お礼の品の提供を是とする主な主張は、ふるさと納税のお礼の品のほとんどは、各自治体において自給率の高い特産品が用いられているため、自治体によるお礼の品の購入は地域の産業振興につながっており、経済波及効果をもたらしているというものだ。ただし、これまではその経済波及効果を数値化するという試みはなされていない。この地域の産業振興の効果を数値で見ないことには、いつまで経ってもお礼の品をめぐる議論は堂々巡りとなってしまう。

上士幌町のふるさと納税お礼の品で人気の十勝ナイタイ和牛(写真提供:上士幌町)

 そこで、今回は北海道上士幌町に協力していただき、ふるさと納税が地域経済に与える経済波及効果を概算値として試算した。

上士幌町のふるさと納税額は全国3位の約10億円

 上士幌町はメディア露出も多いことから、他にも、メディア露出効果の経済価値を推計し、また、ふるさと納税によって観光客増が発生していると見込まれることから、観光客増分の観光消費額も推計した。

 上士幌町のふるさと納税による調達金額は平成26年度で約10億円と見込まれており、日本で3位に位置すると見られている。そのように調達金額が多い地域での経済波及効果の確認はふるさと納税制度の意義を確認するために重要だと考える。特に、雇用面でのプラス効果、そして、ふるさと納税をきっかけとした観光客の増加の効果が今後顕在化してくれば、その存在意義はより可視化されよう。

 推計結果は、10億円の調達金額に対して、経済波及効果は約12.2億円、域内GDPを約6.6億円押し上げ、雇用者誘発人数は82人と試算された。また、1年間を通じたメディア露出の経済価値は最大で約10.4億円と計算された。加えて、ふるさと納税をきっかけとした観光客増も存在すると予測されるが、その観光消費額は約1800万円と試算した。

経済波及効果は約12.2億円と算出

 経済波及効果の推計は以下のように行った。まず、北海道上士幌町より推計に必要な最低限の関連データを提供いただいた。個人情報は含まず、また、数値は概算値であるので、実際の数値と異なる可能性がある。

 試算は、北海道経済部経済企画室が提供している経済波及効果分析支援ツールの十勝圏版を用いて推計した。同ツールは、北海道開発局「平成17年北海道内地域経済間産業連関表」65部門表を用いている。詳しい計算モデルや前提などは経済波及効果分析支援ツール解説書(平成24年北海道総合政策部計画推進局参事(経済調査)に書いてあるが、よく都道府県などが「なになにの経済波及効果は何億円」のように計算するときに使用するモデルである。

 上士幌町へのヒアリングをもとに、10億円の使い途を確認し、それら65部門に振り分ける。そして、町による10億円の支出による直接効果、1次生産誘発効果、2次生産誘発効果を計算し、その合計値を経済波及効果(生産誘発額)とした。

 たとえば、上士幌町がお礼の品として十勝ナイタイ和牛肉を1万円分購入する場合、1万円は直接効果だが、その肉を作るのに必要な飼料や肥料の生産も必要となり、1次生産誘発効果が発生する。そして、直接効果と1次生産誘発効果によって発生する雇用者所得の増加の一部が消費に回されることで、さらに各産業の生産を誘発し、これが2次生産誘発効果となる。

 その推計結果が、経済波及効果は約12.2億円、域内GDPを約6.6億円押し上げ、雇用者誘発人数は82人である。

人口5000人未満の町に数十人の雇用創出効果

 しかし、この推計には、一つ留意が必要な点がある。それは、計算に必要な各産業での自給率(域内調達率)、投入係数表 、逆行列係数表 の数値は北海道十勝圏のものを、また、消費性向の数値は北海道のものを用いていることである。

 投入係数は、ある産業で、生産物を1単位生産するのに必要な各産業からの原材料などの投入割合を示す係数であり、逆行列係数は、ある産業に1単位の需要が生じる際に、直接・間接の波及効果により、各産業の生産が何単位誘発されるかを示す係数である。

 自給率とともに、これら数値が波及効果の計算結果に大きく影響するが、上士幌町は十勝圏内に属するものの、それら数値は十勝圏全体あるいは北海道全体の数値とは異なることが予想される。特に自給率に関しては、経済圏の規模の小ささゆえにより全体的に低い数値になることが想像される。

 したがって、今回試算した経済波及効果は、経済波及効果を上士幌町に限定せず、十勝圏全体での波及効果とした場合の最大値として理解する必要がある。その他、あくまで経済波及効果を計算する際に置くさまざまな仮定を前提といていることにも留意が必要である。

 加えて、雇用者誘発人数に関しては、先の分析支援ツールの注記にもあるが、実体経済においては生産に増減があっても、それがそのまま直接雇用の増減に結びつくわけではない点にも注意する必要がある。

 今回の上士幌町や上士幌町でお礼の品の特産品を提供している事業者にも雇用に関してヒアリングをしたが、雇用増あるいは新たな設備投資の潜在的需要は現場で確認できるものの、ふるさと納税の制度の持続性に自信が持てず、新規雇用や設備投資に踏み切りにくいという実態も確認することができた。ふるさと納税の地域経済への効果を確実なものとするには、制度の恒久化が必要であろう。

 ただ、いずれにせよ、人口が5000人に満たない町において、理論的にでも数十人規模で雇用を創出しうる効果をふるさと納税は持っているということである。

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