海外空売りファンドが日本企業を標的にするケースが立て続けに起こりました。今のところはまだ「局地戦」に過ぎませんが、これから続々と日本に上陸してくる気配がしています。次に狙われるのはどの企業なのか!? 金融・経済のプロも愛読しネタ元にしていると評判の刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が、大胆に切り込みます!
世界的に株価が天井に近づけば「買い」より「売り」で儲ける方が簡単になります。伊藤忠やサイバーダインは、あらかじめ売り玉を仕込んだ空売りファンドが自社レポートで売り煽る手口でしたが、空売り専門でなくとも同じことはできますし、レポートなど出さずとも売買手腕(売り叩き)だけで大儲けするファンドはゴマンとあります。
[参考記事]
●サイバーダインが「売り推奨レポート」で大幅下落、空売りファンドが大挙して日本市場に押し寄せる!?(2016年8月26日)
●空売り投資家「グラウカス」が日本上陸。伊藤忠(8001)は第2の東芝事件になるか!?(2016年8月5日)
そこでどういう企業が次の「空売りターゲット」になるのかを考えてみます。会計上の不正を探るとか、高度な業績予想などは必要ありません。実力に比べ株価が高い企業はどこかを考えればいいのです(本紙は個別銘柄の売買推奨をしていません)。
独自の会計処理で実態が見えにくい
楽天の減損処理事業はまだまだある!?
例えば楽天(4755)です。2015年12月期連結決算は、売上高こそ前年比19%増の7135億円でしたが、営業利益は同11%減の946億円、減損損失が381億円もあり最終損益は同37%減の444億円となっていました。
この減損額の6割以上は2010年に買収しECサイト運営「プライス・ミニスター」と、2011年に傘下に収めた電子書籍企業「kobo」で、両社とも200億円以上を投じながら収益化できていません。
2016年1~6月期連結決算は売上高が前年同期比11%増の3689億円でしたが、営業利益は同11%減の488億円とさらに減り、最終損益も同4%減の265億円となっています。
楽天は(今に始まったことではありませんが)非経常的な損失を決算から除外する「独自の処理方法」を採用、2016年1~6月期に「在外営業活動体の換算差額」として675億円もの損失を“外出し”しており、四半期包括利益合計額が443億円の赤字となっています。
この「在外営業活動体の換算差額」とは海外子会社の為替差損を含む減損処理額のはずですが、2015年通期には107億円「だけ」でした。楽天の決算は大変に実態がわかりにくいのです。
また別に発表している資料では、楽天ののれん代は2015年12月末の3694億円から2016年6月末の3270億円まで424億円も減少していますが(それだけ減損処理しているはずですが)、まだまだ高水準です。
その中には2014年2月に「突然」9億ドルもの大金を支払って買収したキプロスのSNS会社Viber分が2015年12月末に1001億円、2016年6月末に854億円(ようやく減損した?)含まれています。償却対象はまだまだありそうです。
ECは下り坂、外郭は金融事業なのに
PBRが異様に高い理由とは!?
つまり、楽天の収益モデルとは単にスタートが早かっただけでそれほど差別化できているわけでもないEC事業を中心に、銀行、証券、カード、保険などを付け加えたものでしかなく、アマゾンなど海外大手が日本でシェアを伸ばしていくと、たちまち収益が陰ってしまうことになります。
そのうえ、手当たり次第に買収した海外子会社の収益化も遅れ、減損負担が一気に加わることになります。EC事業が行き詰まると、その悪影響はとんでもないスピードでグループ全体の損益と資産に広がることになるはずです。
楽天の先週末(8月26日)の株価は1272円で、本年高値の1428円(1月4日)から11%しか下落していません。楽天は通期収益予想を発表しないためPERは計算不能ですが、先週末時点のPBRは2.97倍もあります。
楽天の連結資産には銀行/証券/カード/保険などの金融関連が多いのですが、これら事業を単体で行う企業はPBR1倍を大きく下回るのが普通です。それに比べ楽天の株価が異常に高いのは、投資家がいまだに「高成長企業」あるいは「IT企業」のイメージを抱いているからでしょう。
楽天の株は流動性があり、海外での貸株調達も容易です。海外のファンドはこういうところを見逃しません。すでに数多くのファンド(空売り専門ファンドとは限りません)に目を付けられていると考えても不思議ではありません。
苦境なのに株価が高いソニーも
すでにファンドに狙われている!?
もうひとつ、実力に比べ株価が異様に高い例としてぱっと思いつく企業にソニー(6758)があります。7月29日に発表された2016年4~6月期連結決算では、営業利益が前年同期比42%減の562億円、最終損益が同74%減の211億円と暗雲が立ちこめています。
通期決算予想も下方修正して営業利益を前年比2%増の3000億円、最終損益を同46%減の800億円としていますが、円高も進んでおり「とてもそんな下方修正で収まる」ようには思えません。
ソニーについては今週の『闇株新聞プレミアム』で、さらに詳しく解説しています。ご興味のある方は是非そちらの記事もお読みいただければと思います。
また闇株新聞では読者の方からの質問にお答えするコーナーもあります。「この企業について解説せよ」とのリクエスト、空売りファンドの手口についてなど、読者の皆様から質問には随時お答えしています。こちらもぜひご活用ください。
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