2023年の日本株に影響を与える”材料”をアナリストが解説! カギを握るのは、欧米や中国の景気動向!
発売中のダイヤモンド・ザイ2023年2月号の巻頭特集は「2023年【株】全予測&儲け方」! ロシアによるウクライナ侵攻を皮切りに、相場を揺るがす出来事がたくさんあった2022年が終わり、いよいよ2023年が始まる。そこで気になるのは、相場の先行きだ。この特集では、2023年の日経平均株価の値動き予測や、2023年に値上がりが期待できる国内外の株を紹介! 加えて、為替動向の予測や、これから注目の投資信託なども取り上げているので、2023年の投資計画を考えるうえで役立つはずだ。
今回はこの特集から、2023年の日本株に影響しそうな”材料”を紹介!
米国金利は5%前後で推移した後、利上げストップが共通見解!
ただし、利上げストップ後の景気動向については意見が割れた!
ダイヤモンド・ザイでは、2023年の日経平均株価の値動きについて、相場のプロであるアナリストやストラテジストなど、100人に意見を聞いている。結論から言うと、プロの見方は大きく割れており、「年末にかけて値上がりする」と考える強気派もいれば、「年後半から失速する」と見ている弱気派も。その違いはどこから来るのだろうか?
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大きく影響しているのは、米国の政策金利だ。もっとも、金利動向の予測自体は、強気派も弱気派も大差ない。2023年の前半は5%前後で推移し、その後は利上げがストップするというのが、大方の予測だ。
強気派と弱気派で大きく異なるのは、利上げストップ前後の米国景気に対する考え方。強気派は、年前半の利上げ懸念の後退と、年央からの株価上昇を見込む。「利上げが3月に終了し、米国の景気の底は4~6月期となると予想しています。同時期に米国株が上向きになれば、日本株もツレ高の展開に」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩さん)
さらに、年後半からは2024年の利下げによる景気回復の期待が高まり、結果として年末高になる、という読みだ。なかには「2023年の秋頃に、米国景気の本格的な減速を受けて、FRBが利下げに転換する可能性も」(フィスコの仲村幸浩さん)と、早期の利下げを期待する声もあった。
一方の弱気派は「利上げストップ=政策金利の高止まり」と捉えて、景気悪化を心配する声が多い。
「米国のインフレ水準は依然として非常に高い。金融引き締めが長期化する見通しは変わりません。景気後退への懸念から、株価の本格的な上昇を見込むのは時期尚早です」(ピクテ・ジャパンの糸島孝俊さん)
長期間に及ぶ米国の金融引き締めにより、日本株も年後半に向かって下落していく可能性がある、というわけだ。
景気の先行指標「シリコンサイクル」が春先に底打ちする見通しも!
ゼロコロナ政策の修正で、中国経済の復調に期待!
2023年の年末にかけて株価が上がる、と見る強気派の根拠は、米国の金利動向だけではない。レオス・キャピタルワークスの三宅一弘さんは、半導体の市場動向を示す「シリコンサイクル」に着目する。
シリコンサイクルは、景気の転換をイチ早く捉える重要な指標だ。下図の通り、世界の半導体の出荷額は2022年3月をピークに下落しており、反発のタイミングが気になるところ。
「これまで世界の半導体出荷額は、60カ月平均で底入れしています。これを下回ったのは、アジア通貨危機を含めて過去3回だけ。2023年は欧米を中心に物価高騰が沈静化に向かうと見ており、危機的状況にはならないでしょう。よって、直近のピークから約1年経つ春先頃に、60カ月平均を目安として底打ちすると予測します」(三宅さん)
半導体関連株はナスダックやS&P500の中核を担っている。シリコンサイクルが再び上昇すれば、米国株はもちろん、日本株も上向くと考えられる。
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また、中国の動向も日本経済に多大な影響を及ぼす。2022年の中国は、上海のロックダウンなどの厳しい感染対策で、世界的な物流の混乱を招いた。しかし、経済成長の失速や国民の不満の高まりを受け、緩和方向に動きつつある。2023年3月に開催予定の全国人民代表大会に関心を寄せるプロも。そこで打ち出される方針は注視しておくべきだろう。
弱気派は円高による企業業績の悪化を警戒!
中国と台湾の間では緊張感が高まり、地政学リスクが上昇!
強気派の意見だけでなく、弱気派の見解も紹介しておこう。ニッセイ基礎研究所の井出真吾さんは、米国の政策金利の高止まりにより、米国景気が減速した場合の円高を警戒する。
「大幅な円安からの反動で、2024年3月期は減益が意識されるでしょう。輸出企業を多く含む日経平均株価は、一時2万5000円程度まで下落する場面もあると予想します」(井出さん)
日本株への影響力は米国がもっとも大きいが、他国にもさまざまな懸念材料がくすぶっている。その筆頭が中国だ。前述のように、強気派はゼロコロナ政策の修正による中国経済の回復に期待するが、弱気派は中国の成長鈍化への懸念を強めている。
「中国に加えて、欧州景気にも不安感が漂います。欧州のPMI(購買担当者景気指数。景気の先行指標)は目安の50を割込み、すでに景気後退が心配されている状況。ロシア・ウクライナ紛争を発端としたエネルギー価格の高騰により、工場をフル稼働できないという深刻な状況です」(井出さん)
さらに、米中対立の狭間にある台湾の地政学リスクの上昇も悩みのタネ。台湾では2022年11月の統一地方選で、対中強硬政策を掲げた与党が惨敗した。2023年は2024年の台湾総統選に向け、一層緊張が高まることが懸念され、日本株にも当然影響を及ぼすだろう。
現段階から、2023年は難しい相場環境になることが予想されるが、米国の金利動向やイベントに注意を払い、守りを意識した投資をすることが重要となってきそうだ。
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