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世界の電力消費量の40〜50%を占めるモーターの
高効率化には欠かせない「パワー半導体」に注目が集まる
新興国を中心に電力消費量が増える一方で、石油・石炭など電気をつくるための天然資源の確保は年々難しくなっています。そんな状況のなか、電力消費量の多くを占めるのがモーターです。
日本電機工業会の資料「地球環境保護・省エネルギーのために トップランナーモータ」によると、モーターによる電力消費量は、世界で使用される全電力量の40~50%、日本では約55%も占めているそうです。
そのため電力消費を効率化して電力不足の解消につなげるには、モーターによる電力消費量の削減が不可欠と考えられますが、そこで重要となってくるのがパワー半導体です。パワー半導体はバッテリーからモーターに流れる電圧などを精密に制御する役割を担っており、パワー半導体の高性能化によりモーターの動作効率が改善する効果は相当大きいと考えられています。
現在、スマホやパソコンの出荷減が響いて半導体の需要が下振れしていますが、そのなかにおいてパワー半導体の需要は底堅さを見せています。EV向けを中心に省エネ性能を左右するパワー半導体の引き合いは強く、半導体市場全体のマイナス成長が予想される2023年においてもパワー半導体は約5%成長する見通しとなっています。
高効率・高性能な「次世代型パワー半導体」のなかでも、
EV向けを中心に「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の需要が急増!
現在、パワー半導体の素材としてはシリコンが主流ですが、最近ではより高効率・高性能な製品がつくれる窒化ガリウム(GaN)や酸化ガリウム(Ga2O3)などを使った「次世代パワー半導体」が登場し、注目を集めています。
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そんな次世代パワー半導体の中で、近年、電気自動車(EV)用を中心に需要が急増し、普及期に入ってきたのが炭化ケイ素(SiC)パワー半導体です。電圧がかかっている空間の状態を「電界」と呼びますが、炭化ケイ素は、耐えられる電界の最大強度がシリコンの約10倍と大きいため、高耐圧でありながら低損失な半導体をつくることが可能で、電子機器のさらなる小型化や高効率化を実現できます。
そこで今回は「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の関連銘柄に注目しました。
なお、国内では、ローム(6963)が炭化ケイ素パワー半導体のトップシェアを占めています。ロームは6月に、福岡県の工場に炭化ケイ素パワー半導体の生産棟を新設したことを発表。フランスの調査会社によると現在のロームの世界シェアは10%しかありませんが、ロームは今回の生産棟の新設により、2025年度には世界シェアを30%以上に引き上げる目標を掲げています。そのほか、国内で「炭化ケイ素パワー半導体」のシェア上位に位置する企業としては、三菱電機(6503)や富士電機(6504)が挙げられます。
しかし、今回の銘柄選定ではそうした大型株は避け、個人投資家の売買が中心となる中小型株をピックアップ。炭化ケイ素パワー半導体のほか、その製造装置や素材などを手掛ける銘柄を取り上げました。
【タカトリ(6338)】
10月28日に上方修正を発表したことで株価が急騰!
タカトリ(6338)は、炭化ケイ素やサファイアといった硬脆性素材用の切断装置を扱っています。そのほか、半導体の製造機器や液晶パネルディスプレイの製造機器、炭素繊維・薄膜太陽電池シートなどを手掛け、さらに医療機器分野への新規参入も進めています。10月28日に2023年3月期の業績予想の修正を発表。パワー半導体向け炭化ケイ素材料の切断加工装置が高いマーケットシェアを維持したことで、売上高、各利益ともに上方修正し、株価が急騰しました。現在は過熱感が警戒されるので、押し目を狙いたいところです。
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【Mipox(5381)】
半導体ウエハー面内の転位分布・ひずみ分布の可視化に成功
Mipox(5381)は、研磨フィルムから液体研磨剤、研磨装置など、幅広い研磨材を提供しています。6月30日には、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)」において、名古屋大学未来材料・システム研究所と共同で「半導体ウエハー面内の転位分布・ひずみ分布の可視化」に成功したことを発表。これは半導体製造における検査工程の利便性向上や効率化に貢献する技術で、MipoxのSiC結晶転位高感度可視化装置「XS-1 Sirius」にも実装されています。株価は、10月13日につけた安値503円をボトムにリバウンドを見せており、足元で26週移動平均線を捉えてきました。同線突破からの52週移動平均線をうかがう展開に期待したいところです。
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【東洋炭素(5310)】
約50億円を投じ、半導体向け高機能黒鉛製品の生産能力を増強
東洋炭素(5310)は、半導体・宇宙航空用途など最先端テクノロジー分野で広く採用されている「等方性黒鉛」などを手掛けるカーボンメーカーです。半導体関連としては、等方性黒鉛やそれに表面処理をした材料が「化合物半導体製造用部材」として使用されています。10月27日に、シリコン半導体や炭化ケイ素半導体などへの旺盛な需要に対応するため、約50億円を投資して高純度黒鉛製品とSiCコーティング黒鉛製品の生産能力を増強することを発表しました。株価は、切り上がる13週移動平均線に沿った上昇トレンドが続いており、2018年5月につけた高値4300円を意識したトレンドが期待できます。
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【タムラ製作所(6768)】
パワー半導体チップ接合用の鉛フリーはんだ接合材を開発
タムラ製作所(6768)は、昇圧リアクターやコイル、電流センサー、電子化化学実装関連、パワー半導体など、各事業分野で車載関連製品への取り組みを強化しています。1月5日に、パワー半導体チップ接合用や基板下接合用として新たな鉛フリーはんだ接合材を開発したことを発表。炭化ケイ素や窒化ガリウム、酸化ガリウムなど、次世代パワー半導体への適用試験も進めているようです。株価は、3月8日の安値520円をボトムに、7月以降は切り上がる13週移動平均線を下値支持線としたリバウンドを継続。8月26日につけた高値790円を突破してからのさらなる上昇が期待されます。
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【テセック(6337)】
10月25日発表の上方修正が好感されて株価が急伸!
テセック(6337)は、半導体用の検査装置・測定装置を手掛ける企業で、パワー半導体の測定で強みを持ちます。足元では、10月25日に発表した2023年3月期の業績予想の上方修正が好感され、急伸しました。この上昇により上値を抑えられていた52週移動平均線を大きく上放れる形となり、2021年6月の高値3500円をピークとした下落トレンドから上昇トレンドへの転換が期待されます。
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【ジェイテックコーポレーション(3446)】
炭化ケイ素などの材料の表面を「原子1個分」レベルで平坦化
ジェイテックコーポレーション(3446)は、自社の強みである表面ナノ加工技術を応用し、半導体分野や宇宙分野、医療分野などへの参入を進めています。また、炭化ケイ素やガラスを始めとするさまざまな材料の表面を、原子スケールで平坦化する独自のCARE加工技術を保有。究極の加工法ともいえる「原子1個分」の平坦度の実現を目指しています。株価は5月末以降、下落トレンドが継続していましたが、10月13日の安値1342円をボトムに緩やかなリバウンドを見せています。
⇒ジェイテックコーポレーション(3446)の最新の株価はこちら!
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以上、今回は「炭化ケイ素(SiC)パワー半導体」の関連銘柄を発掘しました。
以前のコラムでは、窒化ガリウム(GaN)や酸化ガリウム(Ga2O3)を使ったパワー半導体に注目しましたが、こちらのほうも変わらず次世代デバイスとして有力視されています。自動車メーカーのEV化が本格化するのはこれからですので、EVに欠かせないパワー半導体は長期的な投資テーマになるでしょう。
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