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アメリカの決算発表シーズンは、波乱の幕開け!銀行株では、絶好調のJPモルガン・チェースに対しウエルズファーゴは架空口座開設の問題が足枷に!

2016年10月17日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
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決算発表シーズンの始まった米国市場は、
スタートから悪材料が重なって軟調に

 先週から米国は決算発表シーズンを迎えています。

 のっけから遺伝子解析用装置メーカー、イルミナ(ティッカーシンボル:ILMN)が業績を下方修正したことに加え、決算シーズンのトップバッターであるアルコア(ティッカーシンボル:AA)の決算も予想を下回ったことなど、悪材料が重なった結果、米国市場は軟調でした。

ダウ工業株価平均指数チャート(日足・6カ月)*チャート画像をクリックすると最新のチャートがご覧になれます。SBI証券HPより

 週間ベースでは、ダウ工業株価平均指数が-0.55%、S&P500指数が-0.95%、ナスダック総合指数が-1.46%でした。

米国長期債が売られていることで
銀行株に注目が集まる

 一方、米国の長期債は引き続き売られています。10年債の利回りは、1.80%に乗せました。

 こうした長期金利の上昇で、銀行株に注目が集まっています。その理由は、普通、銀行の収益性を決定するのは長期金利から短期金利を引き算した差、つまり「純金利マージン」だからです。

 現在のように長期金利が上昇し始めている局面では、「銀行の純金利マージンが拡大するのでは?」という期待が高まるというわけです。

JPモルガン・チェースの業績は良好
なかでも債券部は前年比+48%と絶好調!

 ちょうどそのようなタイミングの中、先週金曜日に、銀行セクターの先頭を切って、JPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)が第3四半期の決算を発表しました。良い内容でした。

 EPSは予想1.39ドルに対して1.58ドル、売上高は予想236.9億ドルに対して247億ドル、売上高成長率は前年比+8.3%でした。

 マリアン・レイクCFOは「わが行の現在の業績は、エンジン全開の状態だ」と決算カンファレンスコールで自信を見せていました。

 とりわけ債券部は前年比+48%と絶好調でした。6月末の英国の国民投票で、EU離脱派が番狂わせを起こして勝ったことにより市場が大荒れになったわけですが、そのようなボラティリティー(=マーケットのブレ)が高い状況では、投資銀行のトレーディング部門は利益を伸ばしやすいのです。

 加えて、10月14日から米国のマネー・マーケット・ファンド(以下、MMF)のルールが変更になり、「突発的な下げ局面では、MMFの解約をストップできる」ことになりました。MMFは、短期の公社債などを組み込んだ投資信託です。このルール変更に伴い、機関投資家がポートフォリオの入れ替えを行う必要が出たのですが、その際、JPモルガン・チェースが沢山注文を受けました。

 これらはいずれも一過性の材料であり、今後も同行の債券部が今回のような高水準の利益を出せる保証はありません。しかし、JPモルガン・チェースが好調な理由はそれだけではないのです。

 投資銀行フィーは、債券ならびに株式引受フィーの上昇を受け、+14%でした。JPモルガン・チェースは、グローバルの投資銀行フィーのランキングで1位の座を維持、2位以下との差を広げつつあります。

 次にリテール・バンキングに目を転ずると、同行のコンシュマー・バンキング事業は米銀の中で最も急速に成長しており、マーケットシェアを高めています。

 唯一のマイナス要素としては、クレジットカードの焦げ付き比率が上昇していることが目をひきました。これに関し同行は、「最近、新しいITシステムを完成させた。それを駆使し、マーケットシェアを積極的に取りに行く戦略を採っていることが原因だ」としています。言い換えれば、焦げ付き比率の上昇は、意図してやっている事なのです。

ウエルズファーゴは、決済内容は良かったものの
架空口座開設問題が大きなマイナス要因に

 ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)も先週、決算発表しています。

 第3四半期の決算そのものは、EPSが予想1.01ドルに対し1.03ドル、売上高が予想220.6億ドルに対し223億ドルと、まずまずでした。

 しかし同行は、支店における強引な営業姿勢が、210万もの架空口座開設につながった事件が大問題に発展しています。この責任を取り、先週、ジョン・スタンプ会長兼CEOが辞任しました。

 その後を受け、新しくCEOに着任したティム・スローンが先週の決算カンファレンスコールを仕切ったのですが、投資家の中には、「しょせんティム・スローンも問題を起こした現経営陣の一角であり、大胆な粛清はできないだろう」という懐疑派も多いです。

 決算カンファレンスコールでは、支店における数値目標の全廃など、善後策がいろいろ示されました。

 しかしアナリストからは「数値目標を全廃すると、売上高や行員の生産性に悪影響が出るのでは?」という声が上がり、いらいらしたティム・スローンCEOがブチ切れる場面もありました。

 このやりとりからも、失われてしまった投資家の信頼を取り戻すのは容易ではないことがうかがえました。

【今週のまとめ】
注目が集まる銀行株の中では、
勢いに乗るJPモルガンチェースが狙い目!

 銀行株の世界では、長年、ウエルズファーゴの評価が最も高く、時価総額もそれを反映して世界一の座に君臨し続けてきました。しかし、今回の架空口座スキャンダルで同行の経営陣に対する信頼は失われ、時価総額でもJPモルガン・チェースに抜かれました。

 投資対象としては今後集団訴訟が起こされるリスクのあるウエルズファーゴより、勢いに乗っているJPモルガン・チェースの方が良いと思います。

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