大統領選挙結果を受けた
先週の相場の総括
先週火曜日、11月8日に米大統領選挙が実施され、共和党のドナルド・トランプが次期大統領に選ばれました。
このニュースが伝えられると、一旦、ダウ工業株価平均指数などの先物は急落しました。ところが水曜日から金曜日にかけてのマーケットは、トランプ大統領を歓迎するカタチで、堅調な展開となりました。
結局、先週1週間のパフォーマンスは、ダウ工業株価平均指数が+5.34%、S&P500指数が+3.79%、ナスダック総合指数が+3.76%でした。
ダウ工業株価平均指数チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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セクターでは、銀行、建設、ヘルスケア、百貨店などが買われました。目立ったところでは、JPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)、マーチン・マリエッタ・マテリアルズ(ティッカーシンボル:MLM)、アムジェン(ティッカーシンボル:AMGN)、メイシーズ(ティッカーシンボル:M)などが買われました。
このうちヘルスケアが買われた理由は、薬価高騰でヘルスケア・セクターに対し厳しく責任追及すると思われていたヒラリー・クリントンが負けたことに対する安堵の表れです。だからヘルスケア株は、厳密な意味ではトランプ関連株ではありません。
ヘルスケア・セクター以外で先週、値を飛ばした銘柄は、いずれもトランプ関連銘柄です。そこでそれらの銘柄、ないしはセクターに少し行数を割いて説明したいと思います。
【銀行】
5兆ドル規模の超大型減税と
金融機関の規制緩和が追い風に
トランプは大統領就任後、真っ先に税制改革に取り組むと見られています。
具体的には、これまで7段階に分かれていた所得税率を、一挙に3段階に簡素化することを提唱しています。新税率は12%、25%、33%です。現在の最高税率は39.6%ですから、裕福層にとっては大きな減税となります。法人税も現行の35%を15%にすると言っています。
実際、一連の税制改革を実施すると5兆ドル前後も減税になるそうです。
このことは、足らない分を国債の増発で補わなければいけないことを意味します。それは国債の需給悪化を招き、国債価格の下落、ひいては利回りの上昇を引き起こすでしょう。
債券の利回り上昇は、銀行にとって純金利マージン(調達金利と運用金利の差)の拡大を意味します。
加えて、トランプは「リーマンショック以降に民主党が主導して成立させたドッド・フランク法は、金融機関をがんじがらめに縛る悪法なので、これを緩めることでもっと銀行が貸出できるようにする」と言っています。
これらのことから、銀行の収益機会は拡大すると見込まれるのです。
銘柄的には、前出のJPモルガン・チェースが本命です。加えてバンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)も良いでしょう。
【建設】
1兆ドル規模のインフラストラクチャ投資の恩恵を
ダイレクトに受ける企業とは?
トランプは、1兆ドルにものぼるインフラストラクチャ投資を行うとしています。高速道路、橋梁などがその主な投資対象です。このことは建設機械メーカーやエンジニアリング会社に追い風が吹くことを意味します。
しかし、それらの企業の多くは米国だけでなくグローバルに事業展開しています。その分、利益を押し上げる効果が薄まってしまいます。
むしろ建設骨材を扱っている企業の方が、売上高の100%が米国内であることに加え、売上のかなりの部分を高速道路に依存しているので、直接、恩恵に浴します。
具体的な銘柄としては、前出のマーチン・マリエッタ・マテリアルズのほか、ヴァルカン・マテリアルズ(ティッカーシンボル:VMC)が関連銘柄になります。
【百貨店】
裕福層を厚遇する減税政策が
高級百貨店の売上げアップにつながる
投資家が選挙前に予想していなかったものの、よく考えてみれば当然、恩恵をこうむるセクターとして、百貨店を挙げることが出来ます。
上で説明したように、5兆ドルの減税になるということは、消費者の手元にお金が残るわけなので、それが消費に回るに違いない……そういう論法です。
ここで重要なのは、トランプの税制はとりわけ裕福層を厚遇する点です。
だから、低所得者向け量販店ではなく、もっと高級な百貨店、具体的には前出のメイシーズに加えてノードストローム(ティッカーシンボル:JWN)やジュエリーのティファニー(ティッカーシンボル:TIF)が最も恩恵を受けます。
トランプ当選で損するセクターも
フェイスブックやアマゾン、グーグルは要注意!
最後に、トランプが大統領になることで不利になるセクターにも言及しておきます。
それはフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)、ネットフリックス(ティッカーシンボル:NFLX)、グーグルの親会社アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)に代表されるネット株です。
その理由は、上に書いたように、今後、米国債は需給関係の悪化から売られることが予想されるからです。
債券が売られると市中金利は上昇します。金利上昇局面では高いバリュエーション(株価評価)の企業ほど評価の低下がきつくなる傾向があります。
ネット株はこれまでチヤホヤされてきただけに、バリュエーションが高く、そのような評価下落の最大の犠牲者になるというわけです。これらの株を保有している人は、今後、より慎重な判断が必要となるでしょう。
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