北朝鮮情勢の影響で米国市場が下落
なぜ今、北朝鮮と緊張状態がエスカレート?
先週、ダウ工業株価平均指数(NYダウ)は週間ベースで-1.1%と、今年3月以来、最大の下げ幅を記録しました。これは、とうぜん北朝鮮情勢が影響しています。
NYダウ(ダウ工業株30種平均)/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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北朝鮮と米国は、お互いに相手を強く非難し、舌戦はエスカレートしている印象を与えます。なぜ今、両者はここまで昂っているのでしょうか?
それは、今月末に韓国と米国が共同で軍事訓練を行うからです。なおこれは毎年行われています。でも、それを隠れ蓑にして、米国が北朝鮮に突如、先制攻撃をかけるリスクがあると北朝鮮は判断したのだと思います。
だから、そうならないように、北朝鮮が「グアムに大陸間弾道弾を打ちこむ」と米国をけん制しているのです。
グアムに向けた北朝鮮の
ミサイル攻撃をめぐる様々なシナリオ
北朝鮮から見ると、グアムは日本を挟んだ反対側に位置しています。だから、もしミサイル発射が失敗し、ミサイルが日本の領土に墜落すると大きな国際問題になります。
その他、起こりうるシナリオとしては、北朝鮮のミサイルを米国と日本がまんまと空中で撃ち落とすことに成功すれば、北朝鮮の脅しは威力を失うことが考えられます。
逆に、米国のミサイル防衛システムをくぐりぬけ、ミサイルがグアムの近海に届いた場合、米国のミサイル防衛システムが張子の虎だったと認識され、米国は面目を失うとともに、ムキになって対立をエスカレートさせる可能性もあります。
中国やロシアは、極東におけるアメリカの軍事プレゼンスを限定したいと考えています。とくに中国は、アメリカが極東から手を引くと北朝鮮もテンションを下げ、結果として極東全体にとってプラスになるだろうと考えています。
でもアメリカは、その考えには大反対です。
韓国はアメリカの庇護の下にあるので、基本的にアメリカに同調しているものの、ひとたび紛争になれば、それに巻き込まれて大きな被害がでるのは必至なので、中国の考え方に共感を持っている筈です。
地域紛争の経済への影響は
景気サイクルの文脈で考えることが重要
次に、地域紛争が経済に与える影響について考えます。
まず、地域紛争が直接、景気後退の引き金となることは稀です。ただ、景気拡大局面が長く続いて、そろそろくたびれてきたときに、たまたま外部要因が重なると景気暗転の背中を押すことになると思います。
つまり、地域紛争だけに注目するのではなく、「景気サイクルの文脈の中で、地政学的要因がどうそれに働きかけるか?」を考えなくてはいけないということです。
好調な中にも、かげりを感じさせる米国経済
ドル安のメカニズムと投資判断は?
その点、最近のアメリカ経済や株式市場は、好調な中にも「なにか変」という異変を感じさせます。たとえば、「そんなに景気が良いのなら、なぜ長期金利は下がっているの?」ということがよく指摘されます。
また、「景気が良いのに、ドルはダダ下がりじゃないか?」という意見も無視できません。
それについての説明ですが、欧州をはじめとする世界経済は、アメリカ経済に比べると、いま相対的に強くなっています。だから投資家が、資金を欧州などへシフトしはじめたことがドル安の一因だと思われます。
また、極端なドル先高観に訂正が入ったことも見逃せません。
具体的には、米国では去年の11月の大統領選挙の結果を見て、景気に対する強気意見が極端に多くなりました。なぜなら、トランプ大統領が大型減税や大型インフラ投資を打ち出すとぶち上げたからです。
しかし、それらは実現していません。
いま、米国は貿易赤字ですが、一方の欧州はGDPの3.3%に相当する貿易黒字を記録しています。それは、放っておけばドル安になる構造であることを示唆しています。
もしドル安トレンドが今後も続くのであれば、海外から米国へ投資している投資家は、いま米国株に投資するのはリスキーだという判断をするかも知れません。
米国企業の決算が良くても
株が上がらないのはナゼ?
第2四半期決算発表シーズンが終わりましたが、S&P500採用銘柄の1株当たり利益の成長率は、予想の+6%に対し、実際には+10%くらいでした。つまり、今回の決算発表シーズンでは、ポジティブ・サプライズを出した企業が多かったのです。
しかし、良い決算を出しても株が上がらないケースが多く見られました。一例としてエヌヴィディア(ティッカーシンボル:NVDA)の決算は、文句のつけどころが無い良い決算でしたが、株価は決算発表後急落しています。
このように「良い決算なのに、株価は上がらない」という局面は、相場の転換点を示唆する場合が多いので、気を付ける必要があります。
【今週のまとめ】
米国株の軟調は、相場の転換点を示唆しているのかも
北朝鮮情勢を嫌気して、米国株は軟調な展開になっています。
しかし、地域紛争が景気後退を招くことは稀です。もし景気後退が起こるのなら、それはもともと景気サイクルが下り坂にさしかかっていたなどの、景気そのものに由来する理由が背景にあるはずです。
その点、現在の米国経済は好調な中にもかげりを感じさせます。決算が良いにもかかわらず、株が上昇しなくなっているのも相場の転換点を示唆しているので、個人投資家も注意が必要です。
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