好況が長く続いていることにより
世界中で“横着な考え方”がはびこり出している
2008年にリーマンショックが世界を揺さぶりましたが、あれからほぼ10年を経過し、当時の苦い記憶は風化しつつあります。世界経済はおおむね順調であり、投資家、経営者、そして政治家の心の中には慢心が忍び込んでいます。
こういう時こそ投資家は兜の緒を締めなければいけません。
テスラのCEOが「株式の非公開化」をツイート
1989年のUAL事件の再現か!?
慢心を示す一つの例として、先週、テスラ・モーターズ(ティッカーシンボル:TSLA)のイーロン・マスクCEOが、「一株当たり420ドルで非公開化することを考えている。もう資金の手当てもメドがついている」と突然ツイートしたことを挙げることができると思います。
このところテスラは、「モデル3」の量産が思い通りに進んでおらず、投資家から批判されてきました。いっそのこと株式を非公開化すれば、株主からの突き上げも無くなるというわけです。
しかしこのツイートはじっくり考えた上での行動ではなく、つい軽いノリでやってしまった観があります。一株当たり420ドルで非公開化するなら700億ドルが必要であり、これは簡単に調達できる金額ではありません。先週の時点では、銀行団がそういうディールに合意したという話は伝わって来ません。
今週、テスラの取締役会は銀行各行とミーティングを持ち、そのような融資が可能かどうかを打診するとともに、「このようなディールが一般株主の利害をちゃんと守っているか?」を検討します。私の考えでは銀行を説得するのは容易ではないと思います。
実は、今回のテスラの非公開化の宣言と同じようなことが1989年にありました。UAL(ユナイテッド航空)が、「$300で非公開化する!」と宣言したのです。あのときは銀行団から「NO」を突き付けられ、UALの株価は一気に半値に暴落しました。
もし、テスラ取締役会と銀行団のミーティングが不調に終われば、1989年のUAL事件のような衝撃が走るリスクがあります。
トルコのエルドアン大統領の政策により
トルコリラ危機が勃発!
慢心を示すもうひとつの例は、トルコのエルドアン大統領です。
エルドアン大統領は、6月に実施された総選挙で勝利し、向こう10年間、政権の座に居座ることが決まりました。これですっかり気が大きくなったエルドアン大統領は、自分の娘婿を財務大臣に指名しました。これとは別に、中央銀行総裁の人事権も大統領が掌握できるよう法律が改正されています。
つまり、限りなく独裁政権に近い体制を着々と整えているのです。
エルドアン大統領は、選挙で勝つために選挙前の利上げを控えました。折からトルコではインフレが昂進しており、投資家からは「早く利上げしないと手遅れになる!」という声が上がっていました。
選挙後の7月24日、トルコ中銀は政策金利を17.8%に引き上げました。つまりトルコリラの防衛に乗り出したのです。しかし、中銀が完全に後手に回ってしまった観は否めません。
このところトルコリラが急落しているのは、そのような事情によります。
トルコの対外債務はGDPの53%に達しており、新興国の中では債務が多い方です。しかもそのうちの約3分の1が、向こう1年以内に償還を迎えます。トルコリラが急落したので外貨建ての借金の返済負担は逆に雪だるま式に増えており、それが返済を困難にしています。
トルコに国粋主義が蔓延!
アメリカ人宣教師をスパイ容疑で拘束
さらに悪いことに、トルコでは最近国粋的なムードが広がっており、「外国からの圧力に屈してはいけない!」という論調が聞かれます。
もちろん愛国心は大いに結構ですが、今回のトルコにおける外国排斥ムードは、エルドアン大統領が選挙で勝つためにわざと「外敵」を強調したために起こったことだと分析する専門家も居ます。
その一例として、かつてエルドアン大統領の仲間のひとりだったギュレン師が、その後、エルドアン大統領と険悪な仲となり、ギュレン師はアメリカに渡りました。トルコは「アメリカがギュレン師をかくまっている!」と非難し、米国政府に対してギュレン師の身柄引き渡しを要求しています。アメリカ政府は、身柄引き渡しを拒否しています。
これに対抗するため、トルコはトルコ内に居たアメリカ人宣教師、アンドリュー・ブランソン氏をスパイ容疑で拘束しました。現在、ブランソン氏は自宅軟禁されています。
つまり、アメリカとトルコの関係が冷えている理由は、別にアメリカ側が一方的にトルコに意地悪しているからではなく、そもそもエルドアン大統領の一派の仲間割れが根底にあるのです。
アメリカは、アンドリュー・ブランソン氏の釈放を求めていますが、トルコはこれを拒否しました。このためアメリカは、トルコの2名の閣僚に対し、アメリカ国内の資産を凍結するなどの経済制裁を発表しています。
さらにアメリカは、イランの核問題を巡って各国に「イランに対して経済制裁に協力して欲しい」と呼びかけていますが、それを無視する格好でトルコの国有銀行、ハルバンクがイランと取引していることを突き止めました。そこで米国政府は、ハルバンクの調査に乗り出しています。
つまり、今回のトルコリラ暴落の背景には、エルドアン大統領が選挙を有利に進めるため金利政策に口出ししたことに加え、外交面で重要なパートナーであるアメリカとわざと事を構えるような選択をしたことが大いに関係しているのです。これらは、自らが蒔いたタネです。
2016年のクーデター未遂事件を乗り切り、6月の選挙で勝利したことで、エルドアン大統領が慢心したというわけです。
上がらない「VIX指数」は
投資家の慢心を示唆している!
さて、俗に「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数は、先週金曜日の時点で13.16でありまだまだとても低い位置にあります。
それは、投資家が慢心していることを示しています。
今週以降、9月3日のレーバーデーまでは、ウォール街関係者の夏休みの取得がピークになる時期であり、マーケットは閑散が予想されます。また、シニアのトレーダーやファンド・マネージャーがビーチへ行くため、トレーディング・ルームは「二軍」の若手によって留守番されることになります。
こういう時に市場を動かす大きなニュースが出ると、経験に乏しい若手が慌てやすいと思います。
【今週のまとめ】
市場環境が良好な今こそ、
世界中の投資家は兜の緒を締めることが必要
長い景気拡大とブル・マーケットで投資家のガードは下がっています。しかし、テスラのイーロン・マスクCEOの軽率なツイートやトルコのエルドアン大統領の市場を甘く見た一連の行動などにもわかるように、だんだん経営者、政治家、投資家は横着になってきています。
1989年の「UAL事件」のように信用サイクルは急転直下で暗転することもあるわけで、投資家は兜の緒を締める必要があると思います。
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