「お宝銘柄」発掘術!

「東証1部の上場基準見直し」で注目度が高まる銘柄はコレだ!「1部昇格」や「1部維持」を目指す銘柄を、時価総額やROEなどによるスクリーニングで探そう!

2019年3月14日公開(2022年3月29日更新)
村瀬 智一
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東証1部上場の基準となる時価総額が
近々引き上げられる!?

 最近、市場参加者の間で話題となっているのが、企業が東証1部へ上場する際に必要な時価総額基準が引き上げられるといった「東証1部の再編・改革」の動きです。みなさんも、このところの新聞紙面で目にすることが増えているかと思います。

 今回は、この「東証1部の再編・改革」に絡んだ銘柄発掘法を紹介したいと思います。

東証1部に上場する企業が増加しすぎたことで
東証1部の再編機運が高まっている

 東証1部上場の時価総額に関する基準は、主に2つあります。

 一つは、東証1部に直接上場する場合の基準で、「250億円以上」の時価総額が必要となります。以前の基準は「500億円以上」でしたが、2008年のリーマン・ショックで新規上場が急減したため、2012年に従来の半分である「250億円以上」に基準が引き下げられた経緯があります。

 もう一つは、東証2部やマザーズから東証1部に“くら替え”をする場合の基準で、優遇措置として時価総額「40億円以上」の条件を満たせばいいことになっています。東証2部やマザーズ経由だと上場基準が大幅に緩くなるため、東証1部企業の増加ペースが高まった2011年以降では、内部昇格が7割超にのぼるといった指摘もよくされています。

 東証1部に上場すると、企業の知名度がアップする、資金調達が楽になるなど、多大なメリットがあります。そのため多くの企業は、東証1部への上場を目指すことになります。そして、いったん東証1部に上場すると、よほどのことがない限り上場は維持されるうえ、機関投資家やインデックスファンドなどの「パッシブ連動資金」による売買の対象になることで、株の流動性が高まります。

 その結果、東証1部の上場企業数は増加を続け、現在は2100社を超えました。他の国の上位市場と比較しても、東証1部は膨張が目立っています。

 現在、東証1部上場銘柄の時価総額を見ると、トップのトヨタ自動車(7203)の約21兆3000億円に対して、一番低い中国工業(5974)は18億円程度しかありません(2019年3月8日時点)。日本を代表する企業が集まる東証1部に、時価総額が小さく、流動性のない銘柄を組み入れる必要が本当にあるのか、疑問が生じるところです。

東証1部の基準見直しにより、
上場企業は天国と地獄へ分かれることに

 こうした問題を解消するため、東京証券取引所は、今回の見直しで上場基準を引き上げるつもりだと思います。具体的には、東証2部やマザーズからのくら替え上場に対する優遇措置を撤廃し、東証1部上場に必要な時価総額を「500億円以上」に統一する案が出ているようです

 新基準の時価総額が「500億円以上」となると、東京証券取引所の全市場(東証1部、2部、JASDAQ、マザーズ)でも1100社ほどしか該当しませんが、上位市場の企業数としては十分でしょう。

 さらに、ロンドン証券取引所には3200社を超える企業が上場していますが、その中から約500社に絞り込んだ「プレミアム上場」という制度があります。東京証券取引所でも、東証1部からさらに銘柄を絞り込んだ「プレミアム市場」を設立する案が出ているようです。

 一方で、既に東証1部に上場していても、新基準に届かない銘柄は東証2部やJASDAQに移動させられるとの見方もあります。東証1部の新基準により、企業は天国と地獄に分かれることになりそうです。

 東証1部への上場基準が見直されたとしても、相当長い移行期間を置くとみられますので、大きな混乱は避けられるでしょう。しかし、パッシブ連動資金は速やかに構成銘柄を移行してくることが考えられますので、時価総額が低く、東証1部からの降格が予測される銘柄への売り圧力は警戒されます。特に流動性に問題がある銘柄については、少ない株数の売りでも大きな変動要因になりやすいです。

「東証1部の再編・改革」を材料にした
銘柄選びの基準は2パターン

 さて、ここまで東証1部の上場基準を取り巻く状況について解説してきましたが、今回はそんな「東証1部の再編・改革」を材料に銘柄選びをしてみたいと思います。具体的には、以下の2つです。

1)時価総額が500億円を上回っている新興銘柄
2)時価総額が500億円前後の東証1部銘柄

 1)の時価総額が明確に500億円を上回っている新興市場の企業については、東証1部への昇格を意識した個人投資家の期待が高まりやすいでしょう。

 2)の時価総額500億円前後のボーダーラインにいる東証1部上場企業については、時価総額の増加を見込んで自社株買いなどの株主還元策を活発化してくることが考えられます。

銘柄をスクリーニングする際には、
時価総額の他にROEも重視しよう!

 銘柄選びにあたっては様々な条件設定が考えられますが、今回はあえてシンプルに、時価総額とROE(自己資本利益率)を使って選定しました。

 ROEは、「企業が自己資本をどれだけ有効に活用して利益を上げているか」を示す指標であり、自己資本に対する「経営の効率性」を示しています。

・ROE(%) = 当期純利益÷自己資本×100

 ROEが投資家の関心を集める契機となったのが、2013年11月に日本取引所グループと日本経済新聞社などが開発・算出した「JPX日経インデックス400」です。

 JPX日経インデックス400の狙いは、資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数であることです。JPX日経インデックス400は、「適格基準によるスクリーニング」、「市場流動性指標によるスクリーニング」、「定量的な指標によるスコアリング」などが銘柄選定の基準になっていますが、定量的な指標によるスコアリングとしてROEが採用されたことで市場関係者の注目を集めました。

 さらに、2014年8月には、経済産業省による「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトから、「伊藤レポート」という報告書が示されました。この報告書の中には、以下のような文面があります。

 「収益性を表す指標は多様であるが、株主は本源的に自らに帰属する資本が、いかに効率的に事業活動で活用され、どれだけの成果を上げているかに強い関心をもつ。そうした関心を表す、グローバルに通用する有力な指標がROE(自己資本利益率)なのである。」
「個々の企業の資本コストの水準は異なるが、グローバルな投資家から認められるにはまずは第一ステップとして、最低限8%を上回るROEを達成することに各企業はコミットすべきである。」
(経済産業省「伊藤レポート」2016年より抜粋)

 つまり、「伊藤レポート」は、企業にとってのROEの重要さを述べているのです。こうした流れにより、近年は投資家の間でもROEが重視されるようになってきました。

東証1部への昇格が期待される銘柄の
「スクリーニング条件」と「スクリーニング結果」は?

 では、まず東証1部への昇格が期待できる銘柄として、さきほど挙げた1)「時価総額が500億円を上回っている新興銘柄」をピックアップしてみましょう。具体的には、東証2部、ジャスダック市場、マザーズ市場の中から、以下の2つの条件を満たす銘柄を抽出しました。(2019年3月8日時点)

・時価総額が500億円以上
・ROEが8%以上

 これらの銘柄は、上場基準の変更によって、一気に東証1部へ昇格することが期待されます。

東証1部への昇格が期待できる銘柄 ※2019年3月8日時点
銘柄名(コード) 市場 時価総額
(億円)
予想ROE
(%)
最新株価
日本マクドナルドホールディングス(2702) JAS 6794 11.9
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ワークマン(7564) JAS 3749 15.6
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ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324) JAS 3289 10.4
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セリア(2782) JAS 2821 18.7
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ミクシィ(2121) マザ 2057 16.0
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東映アニメーション(4816) JAS 1932 16.4
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ナカニシ(7716) JAS 1797 10.0
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三谷商事(8066) 東2 1698 8.5
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Kudan(4425) マザ 1464 18.2
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PKSHA Technology(2702) マザ 1383 9.9
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ティーケーピー(3479) マザ 1061 14.0
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UUUM(3990) マザ 1025 28.3
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ジャパンインベストメントアドバイザー(7172) マザ 1008 24.4
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MTG(7806) マザ 997 10.6
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沖縄セルラー電話(9436) JAS 984 11.3
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UTグループ(2146) JAS 972 52.3
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弁護士ドットコム(6027) マザ 956 19.6
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ラクス(3923) マザ 842 25.2
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RPAホールディングス(6572) マザ 814 24.1
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GMOフィナンシャルホールディングス(7177) JAS 813 23.2
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MCJ(6670) 東2 807 16.9
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イトクロ(6049) マザ 761 22.1
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ニューフレアテクノロジー(6256) JAS 722 13.1
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SHIFT(3697) マザ 633 36.0
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上村工業(4966) 東2 606 8.8 
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オイシックス・ラ・大地(2702) マザ 594 20.9
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夢真ホールディングス(2702) JAS 591 31.9
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エスビー食品(2805) 東2 585 9.0
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HEROZ(4382) マザ 550 15.6
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ソフトウェア・サービス(3733) JAS 525 14.4
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ブルボン(2208) 東2 506 8.0 
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東証1部への残留のためのサバイバルゲーム!
ボーダーライン上の企業には時価総額引き上げ策に期待

 次に、2)の「時価総額が500億円前後の東証1部銘柄」に着目してみましょう。これらの銘柄は東証1部上場を維持するため、自社株買いなどの株主還元策を行い、時価総額を引き上げる動きが活発化することが期待できます。

 抽出条件は、以下の3つです。(2019年3月8日時点)

・時価総額が400億円以上600億円未満
・予想ROEが8%以上
・売買代金(25日平均)が2億円以上

 時価総額とROEの条件だけだと該当する銘柄数がかなり多くなるので、さらに流動性を考慮するため、売買代金に関する条件も追加しました。その結果が以下の銘柄です。

期自社株買いなど、時価総額の引き上げ施策が活発化しそうな銘柄 ※2019年3月8日時点
銘柄名(コード) 時価総額
(億円)
予想ROE
(%)
最新株価
北の達人コーポレーション(2930) 593 63.1
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ホシデン(6804) 590 8.1
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アニコム ホールディングス(8715) 575 10.1
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サムティ(3244) 575 14.6
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Gunosy(6047) 569 21.0
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クオールホールディングス(3034) 566 12.1
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マクロミル(3978) 563 16.6
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物語コーポレーション(3097) 557 16.8
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オプティム(3694) 555 12.2
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大豊建設(1822) 549 9.2
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コムチュア(3844) 528 33.1
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ペッパーフードサービス(3053) 518 98.6
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イオンファンタジー(4343) 518 11.6
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ベイカレント・コンサルティング(6532) 518 17.6
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黒崎播磨(5352) 509 14.4
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ジャパンベストレスキューシステム(2453) 501 20.9
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イーレックス(9517) 500 15.1
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ヤマシンフィルタ(6240) 493 9.6
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JCU(4975) 476 19.5
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アトラエ(4028) 472 14.2
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石原産業(4028) 467 10.3
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ソディック(6143) 448 8.1
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関東電化工業(4047) 447 16.3
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幸楽苑ホールディングス(7554) 431 20.8
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エボラブルアジア(6191) 425 22.4
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フィックスターズ(3687) 415 26.7
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TOKYO BASE(3415) 412 20.4
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オロ(3983) 405 16.8
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「東証1部の再編・改革」が
市場の話題になる相場局面を待て!

 以上、今回は「東証1部の再編・改革」に絡んだ銘柄発掘法を解説しました。

 今回紹介した方法はとてもシンプルではありますが、抽出された結果をみると、個人投資家に人気のある銘柄が比較的多く挙げられています。「東証1部の再編・改革」が話題に上がる相場局面においては、参考になるかと思います。

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以前はライブスター証券だったが、2021年1月から現在の名称に。売買手数料を見ると、1日定額プランなら1日100万円まで無料。1日100万円超の価格帯でも大手ネット証券より割安だ。そのうえ信用取引の売買手数料が完全無料と、すべての手数料プランにおいてトップレベルの安さを誇る。そのお得さは株主優待名人・桐谷さんのお墨付き。2023年10月に新取引ツール「NEOTRADER」が登場。PC版は板情報を利用した高速発注や特殊注文、多彩な気配情報、チャート表示などオールインワンの高機能ツールに仕上がっている。また「NEOTRADER」のスマホアプリ版もリリースされた。低コストで日本株(現物・信用)やCFDをアクティブにトレードしたい人におすすめ。また、売買頻度の少ない初心者や中長期の投資家にとっても、新NISA対応や低コストな個性派投資信託の取り扱いがあり、おすすめの証券会社と言える。
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