2017年までに日経平均2万2000円も十分にありうる
―― 今回の追加緩和は、株式市場や為替市場に、どの程度の影響を与えると考えますか?
永濱 非常に大きな影響があるでしょうね。前回の金融緩和と違うところは、前回はアメリカも日本も金融緩和の方向でした。しかし今回、日本は金融緩和ですが、アメリカは逆にこれから引き締めの方向に向かいます。そういうタイミングで打ち出されたわけですから、規模は小さくても効果は期待できますね。
アメリカのFRBが2017年末までのFFレート(政策金利)の見通しを出していますが、仮に3%を上回ると仮定すれば、状況によっては日経平均が2万2000円、為替が1米ドル=120円に行ってもおかしくありません。
―― 2万2000円! それはいつ頃になりそうでしょうか?
永濱 1米ドル=120円に関しては、来年中に達成する可能性はあります。日経平均の2万2000円は、行くとしたら3年後の2017年くらいまででしょう。
―― 日経平均がそこまで上がりきらず、日本経済が失速するシナリオはありますか?
永濱 もちろんあります。今は金融緩和で市場が明るいムードになっていますけど、例えばまかり間違ってエボラ出血熱が大規模に蔓延したら、そんなものは一気に吹っ飛んでしまいます。
目先で考えれば、ECBの金融政策です。日銀はもう期待以上のことをやったのに対して、ECBもちゃんとやってくれるのかどうか。さらに言えば、アメリカも今後うまく舵取りをして経済の好循環に合ったマイルドな利上げをしてくれればいいのですが、もし拙速な利上げをしてしまえばオーバーキルでアメリカ経済を腰折れさせてしまうリスクがあります。当然、リスクは常につきまとっているわけです。
ただ、そういうリスクが顕在化しなければ、これから3年くらいのタームで日経平均が2万円台を目指せる環境は十分にあります。投資家にとっては、「ここで稼がないで、いつ稼ぐの?」って感じですよ。
結局、日本市場への投資で稼げるのは、アメリカが金融引き締めを行っている時期です。アメリカが金融緩和を視野に入れるような状況になると、円高になってなかなか儲けられなくなりますから。アメリカの過去の経験則を見ると、これから大体2〜3年は金融引き締め局面に入るでしょう。アメリカも今は緩和を止めただけですが、来年から本格的な引き締めに入るでしょうから、そうなると2016~2017年くらいまでは、日本市場は非常にいい投資環境になります。
それ以降は、まだなんとも言えません。そのまま上昇基調が続くかもしれませんが、過去を振り返ると、早ければ金融引き締めから3年くらいでバブル崩壊してしまうこともあります。結局、恐らく次のリスクオフと言いますか、投資で儲かりやすい環境を終了させるのは、アメリカのバブル崩壊だと思います。そして、早ければ2〜3年後にアメリカのバブルが崩壊する可能性がまったくないとは言えません。
ただ、逆に言えばここから2〜3年は個人投資家にとっても大きなチャンスと言えるでしょうね。
注意すべきは国内要因よりも、アメリカの金融政策
―― 年末や春先までなど、短期的に見るとどうでしょうか?
永濱 上昇トレンドにあると言っても、一本調子で上げるとは限りません。先ほども言ったように、ECBが緩和を期待通りやってくれるかどうかにもよります。また、前回マーケットが若干もたついた背景には、アメリカが量的緩和を止めたことがあります。過去を振り返ると、QE1、QE2の時も量的緩和をいったん止めていますが、株は短期的に調整しました。それを考えると、来年のどこかのタイミングでアメリカの利上げ観測が高まってくると、株価の頭が抑えられて調整局面に入る可能性があります。さらに国内要因としては、消費税が上がると仮定すれば、過去の経験則として増税の半年から3カ月前に、株価は先読みして調整してくる可能性があります。
私の予測としては、来年の前半中にいったん株式市場はピークアウトすると思います。早ければ、年末にピークアウトする可能性もあります。ただ、あくまでも上昇トレンドの中での短期調整なので、押し目を拾って長期的に持つ戦略が基本となります。アメリカが金融引き締め局面の間は、上昇トレンドが続くでしょう。
そして、アメリカが金融緩和に入る兆しが出てきたタイミングでリスクオフに転じた方がいいでしょう。バブルが崩壊する前に逃げるわけです。
―― アメリカが引き締めを止めて金融緩和に入るかどうか、個人投資家はどこで判断できますか?
永濱 やっぱり過熱感じゃないでしょうか。短期的にはテクニカル分析で判断すること。ファンダメンタルズ的には、アメリカのインフレ率と失業率でしょうか。アメリカの金融政策は、いわゆる「デュアルマンデート」と呼ばれるようにインフレ率と雇用の最大化を目指しています。具体的には失業率が5%前半に下がって来たりしたら、少し過熱感の兆しが出てくる感じですね。やはり日本の指標よりも、アメリカのインフレ率や失業率を見て判断したほうがいいと思います。
永濱さんの予想通り、これから2~3年で日経平均が2万2000円まで上昇するとしたら、2012年11月から始まったアベノミクス相場はまだまだ終わらないということ。まさに「ここで稼がないで、いつ稼ぐの?」という状況だ。これまでのアベノミクス相場に乗り遅れてしまった投資家にとっても、まだまだ稼ぐチャンスは残っている。短期的な下げ局面をしっかりを見極めながら、積極的に狙って行くといいだろう。
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