業績絶好調、新製品での競争激化、業績の下方修正など株価への注目必至の20銘柄を迷いなき楽天証券経済研究所アナリスト、今中能夫さんが斬る! *太字の銘柄名をクリックすると最新の株価チャートがご覧になれます。
無配転落のソニーを待つ実は明るくて面白い未来
9月17日、ソニー(6758)が通期の業績予想の下方修正と無配転落を発表。スマートフォンの失敗がその大きな要因で「ソニーにはかつての輝きはない」と見限った個人投資家も多く、その結果、株価は急落。
では、私はソニーをどう評価しているのかと言えば、ズバリ、今こそ「買い」。ソニーは見る角度によってまったく違う顔を持っています。ソニーの財務諸表は「今やソニーは映画と音楽と金融の会社」だと強く訴えているのです。
特に映画と音楽の角度から見ると、光り輝く宝石のように見えます。なぜならソニー・ミュージックエンタテインメントは世界市場において1位のユニバーサル・ミュージックに次ぐ2位。さらに映画では、制作費数百億円をかけた超大作を全世界に配給できる力を持つ「ハリウッドメジャー」の7社の中堅にソニー・ピクチャーズエンタテインメントがランクイン。世界的な音楽と映画の会社を持つのは世界でソニーだけです。
自動車や住宅関連で生き残るパナソニック!
こうした世界的なエンタテインメント会社を買収しようと思えば1兆円単位の資金が必要です。ソニーは音楽部門と映画部門で各約2兆円、合わせて約4兆円もの企業価値があると思われます。ところが今のソニーの時価総額はたった2兆円。このギャップをどう見るか。答えは言わずもがなです。
一方でパナソニック(6752)は、コア事業は有望で中長期での投資としては「買い」。自動車と住宅への製品の組み込みがうまく進んでいることを評価します。
さて、9月の社債の償還を乗り越えたシャープ(6753)はどうか。シャープは損益計算書の中身が問題。内容が不明な営業外損失が多すぎ、これでは液晶の営業利益が回復しても最終利益は増えない。不透明な点は多いですが、スマートフォン向け液晶パネルの需要が増加しているので、これはポジティブにとらえてよいでしょう。
独走だったパズドラを追い上げるモンスト
今のゲーム業界はガンホー(3765)、ミクシィ(2121)、コロプラ(3668)の3強の世界です。この中でオススメは株価は急騰しましたがミクシィです。
課金売上高で見ると、これまでガンホーの「パズル&ドラゴンズ」が独走状態でしたが、9月に入るとミクシィの「モンスターストライク」がトップになる日も多くなり、モンストがパズドラを抜き去る日も遠くないでしょう。
現在、スマホを利用者は約6000万人、その約半数がパズドラをダウンロードしていますが、課金が伸びなくなっているようです。一方、モンストは使用が活発で課金も伸びており、この勢いがこの先2年続くこともあり得ます。
1本頼みのミクシィか、多数を配信のコロプラか
ただ、ミクシィはモンストの1本頼みなので、この点をリスクと感じる個人投資家は多くのゲームを配信しているコロプラを買っています。コロプラの予想PERは30倍超、ミクシィは20倍台なので、コロプラのほうが買われているのがわかります。
一方でグリー(3632)やDeNA(2432)はどうなのか。言ってみればこのグリーやDeNAにアンチテーゼを投げかけたのが、平均1万円以下でゲームが楽しめるガンホー、ミクシィ、コロプラ。グリーもDeNAも課金額が高すぎますが、ミクシィは適正水準に抑えています。
米国市場を制するものが自動車業界の覇者となる!
円安メリットが大きいのが自動車業界。日本には乗用車メーカーが8社もあり、すべてが生き残っているのは異例です。日本の自動車会社が強いのは「人への投資」を惜しまなかったからです。幹部候補生を徹底して育成する。仮に20人ずつ20年間で優秀な幹部クラスが400人も育っていることになります。
8社の中でのオススメはズバリ、米国で販売台数を伸ばしている富士重工(7270)、マツダ(7261)、トヨタ(7203)。中国でいくら頑張っても、現地では合弁会社なので利益の半分を取られてしまう。アジアに注目しがちですが、自動車の最重要市場は米国なのです。
たとえばホンダ(7267)は、米国での販売台数がほぼ横ばいと振るわないので、円安でも営業利益はパッとしません。逆に富士重工はレガシィやSUVが北米で販売台数を伸ばし業績は好調。米国人が大好きな中型車や大型車は粗利が小型車に比べて高く、採算がいいのも利点です。
マツダは新型デミオを投入しディーゼルエンジン搭載車で、燃費リッター30キロを達成しています。これは画期的です。今後の販売台数に期待ができます。
トヨタは来年の春以降プリウスをフルモデルチェンジ、新しい新車サイクルが待っているのがポイント。もう一つの注目点は自動ブレーキなどの新安全装置をどの車種のどのグレードに搭載するのか。これが売れ行きを見るバロメーターとなるでしょう。これに円安が重なれば営業利益で10~20%台の持続的な利益成長も可能です。
自動車業界で問題なのは日産(7201)。小型車のハイブリッド車や超低燃費車が出てきていません。研究開発費を積みます必要がありますが、どうなるか不透明です。
エイベックスに潜む意外なリスクとは?
エンタテインメントも、今乗りに乗っている業界。1万~5万人を動員できるスタジアム&アリーナライブが大ブームで、国立競技場の閉鎖に伴い、会場が不足している状態です。このブームの恩恵を受けるのが音楽に強い大手プロダクションのアミューズ(4301)やエイベックス(7860)。
アミューズには福山雅治、サザンオールスターズ、Perfume、ポルノグラフィティといったファンの年齢層が広い日本を代表するアーティストが所属し、そのライブ興行権を持っているのが強み。また欧州でのツアーを成功させた若手のBABYMETALも、来年あたりから伸びてくるでしょう。
一方のエイベックスは、K-POPの大物の東方神起やスーパージュニア、BIGBANGの日本でのライブ興行権を所有しているのが強みと言えます。新たに韓国で人気のEXO(エクソ)のライブ興行権を獲得したことも、今後のプラス材料となると見ています。
ただ、エイベックスにはリスクもあります。
それは東方神起の兵役入隊です。韓国の男性は19~29歳の間に約2年間の兵役が義務付けられており、東方神起の2人は来年後半か再来年に入隊する可能性が出てきています。エイベックスは、現在、東方神起が兵役に行く約2年間を埋め合わせる下準備の真っただ中にあるようです。来年前半に全国5大ドームツアーを予定しています。
ただ、兵役を過度に心配する必要はありません。株価がそれを織り込む形で下落したら、逆にそここそが買いチャンス。なぜなら、日本の東方神起ファンは分裂騒ぎでも離れなかったほど熱烈なので、2年間なんて平気で待ち続けるはず。今度はカムバックを株価は織り込むことになるでしょう。
iPhone6競争の勝ち組はいったい誰?
少し前、通信業界では格安スマホが話題に。総務省がスマートフォンの料金が高止まりしていることを問題視し、来年4月にも携帯電話の「SIMロック解除」を携帯電話会社各社に義務付ける方針を発表。これをきっかけにMVNO(無線通信インフラを自社で持たずに他社から借り受けてサービスを提供する事業者)の話題が株式市場で盛り上がり、関連銘柄は活況となりました。
日本ではガラケーであれスマートフォンであれ、NTTドコモ(9437)の大半の端末を除いた携帯電話にSIMロックがかかっています。このSIMロックが解除されれば、格安スマホが普及する条件は大きく前進します。
そこで有望と思われ買われたのが日本通信(9424)。日本通信の強みは電話。格安スマホでは緊急電話ができなかったり、留守電が使えないケースも多いのですが同社のスマホは普通に使えます。ただし30秒20円という通話料がネック。NTTから電話回線を契約で借りているので、それ以下の設定にすると赤字になってしまうのです。そこで、NTTドコモに対して音声通信網(LTE)の相互接続を申し入れました。これが受け入れられれば、大手3社同様2700円でかけ放題が導入できます。
一方で9月に発売したiPhone向け大容量SIMの出足が好調です。iPhoneは販売台数が多いので、当面はこちらのほうに商機がありそうです。
通信3銘柄の評価はiPhone6の売れ行き次第と言っていいでしょう。シェアを見るとソフトバンク(9984)、au(KDDI:9433)、ドコモの順なのでソフトバンクに軍配。ドコモは正念場、今なら素直にソフトバンクが「買い」です。
*ダイヤモンド・ザイ12月号より抜粋
(取材・文=八村晃代 イラスト=伊尾仁志 撮影=和田佳久)
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