【今回のまとめ】
1.FOMC声明文から「辛抱強く」と言う表現が消えた
2.これは景気に対する自信のあらわれである
3.次のキーワードは「リーズナブルに自信が持てる」という表現だ
4.いまは「リーズナブルに自信が持てる」状況ではない
5.雇用統計ではなく物価統計に注目せよ
6.フェイスブックが新波動入りしている
7.フェイスブックの営業キャッシュフロー・マージンはピカピカ
FOMC声明文から「辛抱強く」の単語が消えた
先週、連邦公開市場委員会(FOMC)が終わり、その声明文の中から「辛抱強く(patient)」超低金利を維持するという表現が消えました。
これはアメリカの政策金利であるフェデラルファンズ・レートを、いつでも利上げできる準備が整ったことを意味します。
実際の利上げのタイミングは、6月ないしは9月のFOMCになると思います。
株式市場は好感
普通、利上げは預金など固定利付の投資対象の魅力を増し、逆に株式の魅力を減じる効果があります。とりわけそれまで緩和基調だった政策金利が、一転して利上げされるときは相場が荒れるのが常です。
それにもかかわらず先週の米国株式市場は急伸しました。ダウ工業株価平均指数は+2.1%、S&P500指数は+2.7%、ナスダック総合指数は+3.2%でした。
なかでもナスダック総合指数は先週の取引を5,026.42で終えており、引け値ベースでの過去最高値である2000年3月10日の5,048.62に肉薄しています。
もはや「リーマンショック後」ではない
連邦準備制度理事会(FRB)が近くフェデラルファンズ・レートの引き上げをシグナルしているにもかかわらず、なぜ市場はそれを好感したのでしょうか?
好感した第一の理由は、リーマンショック以降、長く続いた不況からアメリカ経済がようやく脱し、平常に戻ったという安堵感によると思います。
さらにフェデラルファンズ・レートを引き上げても大丈夫なくらい米国経済の足腰は強いという確認のシグナルと受け止めた投資家もいます。
なぜ利上げが必要か?
そもそも利上げの意図は、景気の過熱を避け、景気サイクルを長持ちさせることにあります。従って通常の経済下では、絶えず政策金利を引き上げ、ないしは引き下げることにより調節するのが自然の姿なのです。ここ6年ほどは、余りにも景気が弱かったので、そういうフツーの事すら出来なかったわけです。
FRBの次のキーワードとは?
今回、「辛抱強く」という表現が消えたことで、FRBは利上げに対して、いつでもそれが実施できる、いわば自然体のスタンスになりました。
しかしいつでもそれが実施できるからといって、すぐに利上げが始まるというわけではありません。イエレン議長は利上げを開始する前提として、まず米国の消費者物価指数がFRBの目標値である2%にむけて上昇してゆくことに関し、「リーズナブルに自信が持てる(reasonably confident)」ようになったら、実施すると発言しています。
その観点からすれば、今は未だ「リーズナブルに自信が持てる」状況とは程遠いです。実際、先週のFOMCでメンバーが示したコアPCEインフレ予想は、2015年、2016年ともに引き下げられています。
コアPCEのPCEとはPersonal Consumption Expenditureの頭文字を取ったもので、個人消費支出の意味です。「コア」とは、変動の激しいエネルギーなどを除いた数字という意味です。
すると2016年のコアPCEインフレ予想が、去年の12月のFOMCの際の予想値1.85%から今回は1.7%に下がっているということは、インフレが2%に向けて上がって行くというシナリオに「リーズナブルに自信が持てる」どころか、逆の方向へ行ってしまっているわけです。
FOMCで「辛抱強く」の表現が消え、利上げへの下ごしらえが完了したにもかかわらず、普通ならドル高になるはずのドルは逆に売られ、また普通なら売られるはずの長期債も買われた理由は、このインフレ期待の後退にあります。
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