はっきり言って、多くの買い方にとって2016年相場は最悪のスタートでしたね。1月8日の日経平均株価は前日比69.38円安の1万7697.96円と、年初から5日続落でした。これは指数算出を開始した1950年9月以来以来で初めてのことです。
年初から4日続落した1995年は
年足が「辛うじて陽線」で終わった
8日で5日続落ですから、当たり前のことですが、7日までは4日続落でした。日経平均株価が年初から4日続落するのは1995年以来21年ぶりのことでした。1995年は、1月17日に阪神・淡路大震災が発生し、2月27日にはベアリングス銀行を破産させたニック・リーソン事件、そして、3月20日には地下鉄サリン事件と、非常に暗い事件や災害が年初から連続しました。
一方、95年の日経平均株価は、大発会の始値は1万9724.76円でした。その後、7月に1万4295.90円の年間安値を付け、11月までは大発会の始値が年間高値でした。しかし、12月に入り年間高値2万23.52円を付けるなど、年末高となり、大納会の終値は1万9868.15円と、年足の実体はわずか143.39円ながら、辛うじて「陽線」でした。
1990年の日経平均株価は
1年間で1万5000円以上下落した
ところで、2016年年初の相場の雰囲気は、バブル崩壊時の1990年の相場に似ているとの指摘があります。
前年の1989年12月29日の大納会、日経平均株価は史上最高値の3万8915.87円で引けていました。そして、翌90年の大発会の始値は3万8921.65円でした。これが10月1日に1万9781.70円と、2万円大台を瞬間割り込むまで下落しました。その後、買い戻され、大納会は2万3848.71円で取引を終えました。しかしながら、終わってみれば、年足は実体が1万5072.94円という、超絶な「長大陰線」でした。
この90年の日経平均株価の暴落は、日銀による急激な金利引き上げと、大蔵省による「総量規制」によって引き起こされました。
まず、日銀は、89年5月31日から公定歩合を0.75%引き上げ、年3.25%にしたのを手始めに、10月11日に0.5%引き上げ年3.75%へ、12月25日に0.5%引き上げ年4.25%へ引き上げました。翌90年になっても、金融引き締めの手を緩めず、3月20日に1.00%引き上げ年5.25%へ、8月30日にも0.75%引き上げ年6.00%へ、1年強で計5回、都合3.5%の急激な公定歩合の引き上げを行ったのです。
一方の大蔵省は、1990年3月に、金融機関に対して「総量規制」という、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える行政指導を実行しました。この規制が翌91年12月20日に解除されるまで約1年9カ月続きました。
この日銀と大蔵省のバブル潰しを目的とした政策発動により、株価と不動産価格の暴落が発生しました。
日銀の金融政策へのスタンスは
1995年と現在は真逆となっている
一方、95年に関しては、日銀は4月14日に公定歩合を0.75%引き下げ年1.0%へ、9月8日には年0.50%引き下げ年0.5%にしました。また、その前の3月31日は、「当面の金融調節方針について」を公表し、"現在の公定歩合の水準と整合的な範囲内で、金融緩和の効果が発揮されるよう、短期金融市場金利の低下を促すことが適当と判断した。"としました。そして、7月7日には再び「当面の金融調節方針について」を公表し、"市場金利は、平均的にみて現行公定歩合をある程度下回って推移することを想定している。日本銀行としては、本措置により、金利全般がさらに低下し、物価安定の下での景気の着実な回復に資することを期待している。"としたのです。
また、95年は阪神・淡路大震災直後からドル安・円高になり、震災前の1月16日に1ドル=98.69円が4月19日には当時の史上最高値の79.75円を4月19日に付けました。しかし、7月7日に、日米による協調為替介入(七夕介入)が実施され、ようやくドル高・円安トレンドに転換し、7月6日85.17円だったのが7月7日に86.70円へ、9月には一時104.28円までドル高・円安が進みました。
以上のことから、2016年の相場が90年のような超絶暴落相場になる可能性は低いとみています。なぜなら、現在の日銀の金融政策のスタンスが、90年の強烈引き締めとは真逆の超金融緩和スタンスで、95年のように景気配慮型のスタンスだからです。また、大蔵省の行った総量規制のような行政による過剰な市場介入も見受けられません。
ですが、目先は、協調介入が期待できるドル/円レートでもなさそうです。よって、短期的には95年7月7日以降の、株高・円安は期待しにくいですね。
原油安、中国経済の不透明感などから
外国人投資家の日本株買いには期待ができない
なお、日本株が上昇基調に回帰するためには、外国人投資家の買いが必要です。しかし、2015年の外国人は日本株を2509億円売り越しました。外国人が年間を通じて日本株を売り越すのはリーマン・ショックのあった2008年以来7年ぶりのことです。
しかし、足元では、原油安に歯止めが掛からず、中国経済の不透明感が強いです。サウジアラビアとイランが国交を断絶するなど、中東情勢も不透明です。また、北朝鮮が6日に水爆実験を行ったと主張し、これへの対応で米軍のB-52戦略爆撃機が朝鮮半島上空に展開するなど朝鮮半島情勢も緊迫化しています。
また、足元のドル安/円高で、輸出企業の業績下方修正リスクが高まり、また、訪日観光客の減少及び消費意欲減退が危惧されます。これが企業収益悪化懸念として意識される見通しです。これでは、外国人投資家の日本株の買いは期待薄です。
短期的に売られ過ぎのサインは出ており
自立反発が起こっても不思議ではない状況
一方、8日時点の東証1部の騰落レシオは62.9%と、2012年6月以来約3年7カ月ぶりの水準に低下しています。短期的に売られ過ぎを示唆しています。このため、テクニカル面では、いつ自律反発が起こっても不思議はない状況です。
リバウンドが開始した際の戻りメドは、日経平均株価で25日移動平均線(8日現在1万8948.93円)です。投資戦略的には、あなたが、相場が底入れたと判断したら、25日移動平均線付近までのリバウンド狙いで、買いはありでしょう。
ただし、いずれにせよ、今のような下落トレンドの明確な相場では無理はしないことです。買い方にとって儲け易い局面がくるまでは、種銭を減らさないことに腐心するべきです。とにかく致命的なダメージを被らないこと。これを最重要課題にして、「命大事に」相場に臨んでください。
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