経営再建中のシャープは2月25日の臨時取締役会で、鴻海(ホンハイ)傘下に入ると決定しました。ところが後になり、その前日に「偶発債務が3500億円ある」との重要文書を鴻海に送達していたことが判明。鴻海は正式調印を見送る事態に。揺れに揺れた支援先が決まった挙句にこのドタバタ。シャープに何が起きているのか!? 経済の闇に光を当てる刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が読み解きます!
偶発債務3500億円の存在を鴻海に伝えたのは
シャープの機関決定のわずか1日前の非常識
鴻海が「偶発債務が3500億円ある」との重要文書を受け取ったのは24日。当然ながら鴻海は同日中に詳しい内容の確認を求めたはずです。ところがシャープはお構いなしに、25日の臨時取締役会で第三者割当増資などを決定し、発表してしまいました。
「鴻海はどうしてもウチを傘下に入れたいわけだから、多少の(決して多少ではありませんが)問題があっても何とかなるはず」とタカをくくっていたのでしょう。しかし、これほど重大な事項を臨時取締役会の前日に伝えるなど“常識では”理解できません。
鴻海は25日夕方にシャープからの重要文書の受領と正式調印の見送りについて、各報道機関にメールで通知したようです。ところが奇怪なことに日本の報道機関はこれをスルー。同日夜にウォール・ストリート・ジャーナル電子版が伝えているのを見て“はじめて知ったように”報道しました。
しかし、翌26日の朝刊各紙は「シャープが鴻海傘下に」と大きく報じたものの、重要文書の存在や正式調印が延期になったことは隅っこに小さく付け加えられているだけでした。また週末にはどこからともなく「偶発債務はどこの会社にもある万一の潜在損失でまったく気にすることはない」とか「正式調印は3月7日に行われる」など無責任は報道が飛び交いました。
まるで日本のマスコミが総力を挙げて、騒ぎが大きくならないように押え込んでいる気配すらします(正式調印が3月7日であるとの報は鴻海が明確に否定しています)。
偶発債務とは何なのかさっぱりわからず…
シャープ経営陣のタガの緩み具合が酷過ぎる
そもそも3500億円の偶発債務とは何なのか!? 「米国の太陽光ビジネスで提起される可能性がある訴訟費用等」がその一部と伝わってくるだけで、まったく全貌がわかりません。最近のシャープ経営陣の「タガの緩み方」「危機感のなさ」を見ると、もうほとんど損失として認識しなければならないものも結構あるのではと推察せざるを得ません。
ここで「経営危機発覚からのシャープのタガの緩み具合」について振り返ってみましょう。本当にシャープの経営陣は会社の内情を理解して真面目に経営しているのかと疑いたくなる状況です。
閑話休題。最大の疑問は、偶発債務の存在をなぜ機関決定前日になって鴻海に伝えたのか、メインバンクはそのことを知っていたのか、監査法人(あずさ)は知っていたのか、最近まで支援を検討していた産業革新機構は知っていたのか、そもそもシャープ現経営陣は状況を把握していたのか――などです。
直感的には、シャープはここまで巨額赤字を垂れ流しながら「粉飾に近い」決算を続けていたように感じます。「偶発債務」としているものも実際には「損失」として認識しなければならないものがほとんどではないでしょうか。「どうしてもウチを欲しいらしい鴻海が何とかしてくれるだろ」程度に考えていたのかもしれません。
本紙はシャープが2012年3月期と2013年3月期に合計9200億円もの巨額損失を計上し、経営危機が顕在化してからの同社の資本政策と決算内容、メインバンクやJIS(日本政策投資銀行)や鴻海やヘッジファンドが絡んだ救済策に、何かキナ臭いものを感じてきました(詳細は「闇株新聞プレミアム」に列挙していますので、ご興味のある方はお読みください)。
産業革新機構が支援レースから降りた今、
シャープは鴻海に徹底的に買い叩かれる
さて、この杜撰な経営の代償は、シャープ自身が支払うことになりそうです。先ごろまでは鴻海と産業革新機構が「我が方の支援を」と呼びかけていましたが、産業革新機構も3500億円の「偶発債務」をどこかの時点で知らされていたはずで、もう復活することは難しいようです。
鴻海も当然、産業革新機構が支援交渉から降りたことを知っていますから、これから偶発債務を精査して徹底的に買い叩いてくるはずです。シャープ経営陣は鴻海にその口実を与えてしまったことになります。まあ、シャープらしいといえばシャープらしい顛末になりそうです。
ちなみに2月25日に発表された鴻海グループ各社への第三者割当増資の払込価格は1株=118円で、払込日は6月28日~9月5日となっています。6月28日からというのはシャープの定時株主総会が終了してからという意味で、好意的に解釈すればシャープの一般株主の承認を得てからとなりますが、払込みより先に鴻海側が(株主総会決議を経て)経営陣を送り込んでくることになります。
どう考えても郭会長とシャープ現経営陣とではあらゆる意味で「勝負にならない」ため、今後は偶発債務の解釈なども含め一方的に押されることになりそうです。最終的に鴻海が手を引いてしまうことはないものの、その条件は大きく変更になっていくと見ています。
「闇株新聞プレミアム」では、今後もシャープの動向とその裏側についてレポートしていきます。
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