台湾・鴻海(ホンハイ)によるシャープの買収が正式に決定しました。当初は4890億円とされた買収額は合意後にシャープが「3500億円の偶発債務リスクがある」ことを伝えたために延期に。鴻海は買収額の引き下げを迫り、結果3880億円で合意となりました。これでひとまず一件落着かと思いきや経済の闇に迫る刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は「まだまだ目が離せない」との見方。いったいどういうことなのでしょう!?
1000億円減額でまとまった買収交渉
鴻海は粉飾隠し疑惑も織り込み済み
3月30日、シャープは2016年3月期連結最終損益が2000億円規模の赤字(2015年3月期も2223億円の赤字)となることを発表し、延期されていた鴻海による株式引受契約を4月2日に締結したを発表しました。
延期されていた理由は皆さんご存知の通り、シャープが4890億円の第三者割当増資を引き受ける鴻海の傘下に入ることを機関決定(取締役決議)しておきながら、その前日に3500億円規模の「偶発債務」があることを鴻海にこっそりメールで伝えたからです。鴻海は当然のように予定されていた正式調印を延期しました。
今回の再合意は総額4890億円と発表されていた第三社割当増資(払い込み価格=118円)を1000億円減額し、主力のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が新たにシャープに3000億円の融資枠を設定、さらに両行が保有する合計2000億円の優先株のうち1000億円を額面で買い取る合意を3年程度延期することなどのようです。
偶発債務については3月3日付本欄「鴻海(ホンハイ)傘下入り目前のシャープがしっぺ返しを食らいそうな巨額債務の存在」で、シャープが巨額赤字を垂れ流しながら「粉飾に近い」決算を続けており、この3500億円に「隠れ損失」や「不正会計」が少なからず含まれているのではないかと予想しました。
巨額赤字を垂れ流しても経営陣の犯罪とはなりませんが、そこに「意識的に隠した損失」や「不正会計」などが含まれると経営陣が刑事責任を問われる恐れがあります。シャープは東芝のように「周囲が遠慮して犯罪にならないように気を使ってくれる」社会的に影響力のある企業でもありません。
ゆえにこれらの「偶発債務」は、監査法人にも、東京証券取引所にも、有価証券報告書を提出する金融庁(財務局)にも、産業革新機構にも、そしてずっと鴻海にも言い出せず、いよいよ正式合意となった直前に「恐る恐る」伝えて鴻海の反応を見るしかなかったわけです。
この言い出せなかった相手の中に主力のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行を入れていませんが、今回も3000億円の新たな融資枠設定や優先株の買い取り延期を、ほとんど抵抗せずに受け入れているように思えるところから、ある程度は認識(覚悟)していたはずと感じます。
さすがに今回の鴻海は、その3500億円の「偶発債務」とやらを徹底的に調査したはずで、その結果が1000億円の減額であるなら、その最大損失を1000億円以内と見積もったことになります。
つまり仮にシャープに「隠れ損失」や「不正会計」があったとしても、鴻海は今回の1000億円の減額を以って「見事に」処理できたことになります。そして2016年3月期に在庫評価損など堂々と落とせるものは必要以上に落とし、2000億円規模の損失を傘下に入れる前に計上させてしまうでしょう。
第三者割当増資の払込日より前に
シャープを支配する鴻海が何かしてくる!?
それでもなお問題が残ります。第三者割当増資の減額では、鴻海が「66%」と合意したシャープの議決権を減らすはずもなく、払い込み価格を当初の1株=118円から88円に引き下げました。
しかし、本日(4月4日終値)の株価は130円なので、このままだと有利発行(新株を引受人に有利な価格で発行すること)となり株主総会の承認がいります。また、発表された時から気になっていたのですが、この第三者割当増資の払込日が6月28日~9月5日の間となっており、今回さらにエンドを1か月ほど延期するようです。
この6月28日とは「シャープの定時株主総会終了後」という意味のはずです。ということは、鴻海はシャープに1円も払い込んでいない段階で定時株主総会の承認を受け取締役会の過半数を握ることになります。そして、そこからはどんな鴻海寄りの機関決定もできてしまうことになります。
そのため鴻海は事前に1000億円の保証金を差し入れることにはなっているようですが、取締役会の過半数を獲得することになっている鴻海がシャープにいくら保証金を払っても、実際には何の保全にもなりません。
定時株主総会を経て3880億円を払い込む前にシャープを支配権を握った鴻海が、何をしてくるか!? まだまだ目が離せません。金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」ではシャープの裏側と鴻海の動向を引き続きウォッチして、闇に迫ってまいります。
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