新年度入りしてから、東京株式市場の景色は一変しました。5日前場の日経平均株価はザラ場中で3月1日以来、約1カ月ぶりに、1万6000円を割り込みました。
4日のNYダウが反落したことや、NY原油先物価格が続落したことに加え、東京外国為替市場で、円相場が3月18日以来約半月ぶりに1ドル=110円台を付けたことが嫌気されたためです。
なお、1日の日経平均株価は前日比594.51円安の1万6164.16円でした。年度初日としては1995年4月3日の758円以来、21年ぶりの大きさです。また、この急落で3月1日の1万6085.51円以来、1カ月ぶりの安値水準にまで売り叩かれました。
ちなみに、日経平均株価は3月31日に1万6758.67円と、25日移動平均線(31日現在1万6804.83円)を割り込んでしまいした。このため、テクニカル的には、下値に関して要注意の状況に変化していました。そうはいっても、わずか1日であそこまでの急落だと損切りを含め、適切に対応しきれなかった投資家は多いと思います。
日銀短観でもっともネガティブだったのは
大企業の想定為替レートが117円46銭だったこと
1日の急落のきっかけは、冴えない日銀短観でした。円高進行や新興国経済鈍化を受け、大企業製造業DI(業況判断指数)はプラス6と前回調査から6ポイントも悪化しました。悪化幅は3年3カ月ぶりの大きさで、水準としても2013年6月以来の低水準でした。市場予想のプラス8も下回りました。
一方、訪日外国人の伸び鈍化や、国内の個人消費の停滞で、非製造業DIも悪化しました。前回のプラス25から3ポイント悪化しプラス22でした。市場予想のプラス23を下回り、15年3月のプラス19以来の低さでした。
このように、製造業、非製造業共にDIが足元で予想以上に悪化していることに加え、3カ月先の先行きDIは製造業がプラス3、非製造業がプラス17と、それぞれ一段の悪化を見込んでいます。
また、経常利益の増益率は大企業全産業で2015年度は3.9%(製造業マイナス3.5%、非製造業11.9%)にとどまり、2016年度は2.0%の減益(製造業マイナス1.9%、非製造業マイナス2.1%)に転じる見通しです。
このように、DI及び経常利益は、非常に厳しい内容でしたが、市場が今回の短観で最もネガティブに反応したことは、大企業・製造業の事業計画の前提となっている想定為替レートが、現在のレートよりも大幅な円安・ドル高の1ドル=117円46銭(上期117円45銭、下期117円46銭)となっていることです。
つまり、現状のドル/円のレートが続けば、大企業製造業の業績が、もう一段の下押しする可能性が高いのです。4月下旬から16年3月期決算の発表が本格化します。そこで、17年3月期の主力の輸出企業のガイダンスが、市場の想定を超えて保守的になるリスクに、市場は怯えることになりました。
原油先物価格が強い動きにならないと
日経平均株価は厳しい状況が続く
さらに、ここにきて、原油先物価格の動向が不穏です。主要な産油国は4月17日にドーハで会合を開き、そこで、産油量を1月の水準で凍結することが協議される見通しです。
しかし、サウジアラビアのムハンマド副皇太子は、増産凍結にイランが参加しない場合、サウジも加わらない考えを示しました。一方、イランのザンギャネ石油相は「原油生産量が日量400万バレルに達しない限り、原油の増産凍結に参加しない」との考えを表明しています。これで本当に、増産凍結で産油国が合意できるのか、市場は疑心暗鬼になっています。
このような状況に加え、外国為替市場では、3月29日にイエレンFRB議長が講演で、追加利上げを「慎重に進める」と表明したことをきっかけに、円高・ドル安に振れています。この為替動向を受け、ドル安が好感されて米国株は非常に強い動きを続けている一方、円高が嫌気され日経平均株価は非常に弱い動きを余儀なくされています。なぜなら、ドル安は米製造業の業績にプラス、円高は日本の製造業の業績にマイナスだからです。
現状のように、円高や新興国経済鈍化を背景に、企業及び家計のマインドが悪化し、さらに、企業収益の悪化懸念が燻る中、原油先物安で、投資家が「リスク・オフ」になるのなら、日経平均株価が調整するのは仕方ありません。円高がピークアウトするか、原油先物価格が再び強い動きになるまでは、厳しい状況が続くでしょう。
いまは「強い銘柄のデイトレ」がおすすめ
デイトレが出来ない人は「現金比率を高く」する
テクニカル的にも、日経平均株価が25日移動平均線を下回っている間は、短期需給が悪く、下値不安が強い状況が続く見通しです。
ちなみに、4日に5日移動平均線(4日現在1万6605.71円)と25日移動平均線(同1万6802.22円)のデッド・クロスが実現しました。こうなると、この下降する5日移動平均線が強力なレジスタンスとして機能することでしょう。5日移動平均線に頭を抑えられ続けるようなら、日経平均株価は下値模索を継続することを覚悟しないといけません。
日経平均株価が下値模索している間は、徹底的なリスク管理を行わないといけません。まずは、「生き残る」ことを優先しましょう。また、そのような相場になると、投機資金は、数少ない強い銘柄に集中し、弱い銘柄は容赦なく叩き売られる傾向があります。なぜなら、新規マネーの流入がないため、限られた投機マネーが、資金効率を求めて、右に左に動くだけだからです。つまり、日替わりで、「強い銘柄を買うために、弱い銘柄を換金売りする」ということが行われるのです。よって、このような時期は、「強い銘柄のデイトレ」に徹しましょう。スイングは、よほど自信のある銘柄以外は避けた方がいいと思います。
また、デイトレをすることができないのなら、株式の組み入れ比率を極端に抑えたりすることも有効です。2月中旬にかけて起こった急落・底入れ場面が将来到来したときに、買い出動できるように現金比率を高めておくのです。
当面の日経平均株価に関しては、2月12日の1万4865.77円~3月14日の1万7291.35円のレンジで動くとみています。この中値が1万6078.56円です。この中値付近は、売り方と買い方の勢力の均衡点と考えます。
この中値から、上に行くのか、下に行くのかの見極めが重要ですが、少なくとも、日経平均株価が25日移動平均線も5日移動平均線も下回っている限りは、「下」を警戒するべきです。
「上」を期待するのは、5日移動平均線を上回ってからでも遅くはないと思います。もちろん、2月12日のように追証発生に絡む投げ売りが出て、短期的なセリング・クライマックス時も買い場であり、「上」を期待できますが、今は、そこまでの売り込まれた局面ではありません。
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