これまで、マザーズに代表される新興市場には、日米欧の金融政策や為替を巡る駆け引きや、新興国経済鈍化の影響を、東証1部の主力株に比べて受け難いことが評価され、アクティブ個人を中心にした短期資金の流入が加速していました。しかしながら、昨日5月16日はその巻き戻しが起こりました。
16日の日経平均株価は前週末比54.19円(0.33%)高の1万6466.40円と小動きでした。
マザーズは人気株が軒並み総崩れとなり指数が下落
アクティブな個人投資家がダメージを受けた可能性も
一方、東証マザーズ指数は同81.65ポイント(6.76%)安の1125.37ポイントと、大幅安となりました。人気株が総崩れとなりました。そーせいグループ(4565)は前週末比3750円(14.83%)安の2万1530円、JIG-SA(3914)は同5000円(24.91%)安の1万5070円のストップ安売り気配、ブランジスタ(6176)は同3000円(23.35%)安の9850円のストップ安売り気配など、マザーズの人気株が叩き売られました。
16日は、前週末比3000円高(ストップ高)の1万5850円で、後場の取引をスタートさせたブランジスタが14時前から急落を開始したことや、そーせいがほぼ同じタイミングで下落幅を拡大させたことが、他の人気銘柄の換金売りを誘発させました。終わってみれば、ブランジスタの後場の値動きは、ストップ高で寄って、ストップ安売り気配となり、値幅は6000円と非常に大きなものとなりました。
なお、13日取引終了後、マザーズ市場の人気銘柄のそーせいグループやJIG-SAが決算発表を行いました。これが結果として、「目先の好材料出尽くしの売り」や「失望売り」を出すきっかけとなったようです。
また、16日のマザーズの急落を受け、短期売買を繰り返すアクティブ個人の多くが、相当のダメージを被った可能性が高そうです。実際、真偽のほどは不明ながら、16日は一部の証券会社では通常の3倍程度の追証が発生したとの観測も囁かれています。
マザーズ指数に関しては、4月21日の1230.82ポイントが1番天井、5月2日の1097.66ポイントがネックライン、5月12日の1229.34ポイントが2番天井の「ダブルトップ」を形成しつつあります。このため、今後、ネックラインを割り込むようだと、ザックリ言えば、1097-(1230-1097)=964ポイント程度までの下落は覚悟しておく必要があります。一方、5日移動平均線(16日現在1190.56ポイント)を上回り、かつ、5日移動平均線が安定的に上昇するようなら、再び、マザーズ市場は活況となるでしょう。
日本株はドル/円次第の展開
ドル/円が105~110円なら日本株は現状レベルで推移
一方、日経平均株価に関しては、引き続き、円相場に左右される展開が予想されます。主要企業360社が今期見通しの前提とする想定為替レートは、1ドル=110円としたところが全体の52%と過半を超えています。
業種別では、電機や機械は110円、自動車は105円の想定が多く、このため、日経平均株価の上値余地拡大には、1ドル=110円を超えた円安が必要でしょう。一方、105円を大きく下回る円高にならない限り、日経平均株価が急落することもなさそうです。
よって、当面の日経平均株価の想定レンジは、5月2日の1万5975.47円~4月25日の1万7613.56円です。このレンジを下にブレイクするには105円を下回る円高が、逆に、上にブレイクするには110円を上回る円安が必要でしょう。
もう少し具体的に言えば、ドル/円相場が1ドル=105円~110円で推移する限り、日経平均株価は25日移動平均線(16日現在1万6559.53円)ベースのボリンジャーバンドマイナス1σ(同1万6000.84円)~プラス1σ(同1万7108.57円)で「バンドウォーク」するとみています。そして、110円を超えて円安に振れるようならプラス2σ(同1万7662.43円)を目指し、逆に、105円を下回り円高に振れるようならマイナス2σ(同1万5446.98円)を目指すと考えています。
ちなみに、急激な円高を受け、大幅に下振れした場合、日経平均株価の下値メドはPBR1倍の水準である1万4702.14円(16日現在)が強く意識されるでしょう。逆に、円安が想定以上に進んだ場合でも、200日移動平均線(16日現在1万8076.21円)が強力な抵抗として意識されそうです。
急激な円高になる原因として想定されるのは、原油先物価格の急落、米国経済失速懸念の強まりを背景とした米国株の急落、中国景気鈍化懸念の強まりに伴う世界景気失速リスクの高まり等です。つまり、これらは日本政府の力の及ばないものです。
株式市場は消費税増税先送りなど財政政策の発動を期待
伊勢志摩サミットが日本株に与える影響は軽微
一方、仮に、円安に振れなくても日本株が上がる原因として考えられるのは、18日の16年1~3月期GDP速報値を受けての、安倍政権による財政政策の発動期待の一段の高まりです。
具体的には、来年4月実施予定の消費税の増税先送りはもちろん、大規模な公共投資や、構造改革や成長戦略をパッケージにした経済対策の策定です。今月26~27日の伊勢志摩サミット後に、このあたりの財政政策が打ち出されるとの期待が盛り上がるようなら、日本株は堅調に推移することが可能でしょう。
逆に、そのような経済対策が打ち出されないようなら、日経平均株価は前述のPBR1倍方向に下落する公算が大きいとみています。
現時点では、伊勢志摩サミットでは、ドイツが財政出動に慎重で、米国が日本政府の為替介入を強く牽制しています。このため、G7の協調的な積極的な財政出動は難しく、協調的な為替レートの設定も無理のようです。よって、伊勢志摩サミットに対する日本株への影響は軽微であり「毒にも薬にもならない」のではないでしょうか。
以上のことから、目先の東京株式市場で積極的に買えるのは、外部環境の影響を受け難い「好業績の内需株」ですね。とりわけ、政府が打ち出すであろう公共投資(国土強靭化)と成長戦略でメリットを享受する銘柄を狙うべきでしょう。
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