米企業の決算発表シーズンが終わった
決算発表シーズンが終わりに近づいています。これまでにS&P500指数に採用されている銘柄の91%が決算発表を終えており、そのうち実に70%の企業がEPS(一株当り利益)で事前予想を上回りました。
アリババの好決算が突出していた
黒字化していているのは中心事業の小売りコマース
このように素晴らしい決算を発表する企業が相次ぐ中、ひときわ輝いたのは中国のアリババ(ティッカーシンボル:BABA)の第1四半期(6月期)決算でした。
EPSは予想63セントに対し74セント、売上高は予想45.7億ドルに対し48.4億ドル、売上高成長率は前年比+59%でした。下のグラフに見るように、今回の+59%というのはIPO後、最も高い成長率でした。
また中国小売コマース部門売上高は233.83億人民元(35.18億ドル)で、前年比+49%でした。
アリババは近年、色々な事業に進出してきました。
しかし現在でも同社の中核事業は小売コマース部門です。これはタオバオ(淘宝網)、Tモール(天猫)などから構成されています。
加えてヨークーなどのデジタル・メディア&エンターテイメント部門を持っています。さらに旅行予約サイトなどのローカル・サービス事業を展開しています。
それらのサービスは、アリババ独自のインフラストラクチャによって支えられています。具体的には決済システムのアリペイ(支付宝)、配達網、クラウド・コンピューティングなどから構成されています。
このうちクラウド・コンピューティング部門は、外部のビジネスも獲得しており、売上高は前年比で+156%成長しています。
ただし下のグラフに見るように、現在、黒字化しているのはコアの小売コマース事業だけです。
中核事業小売コマース部門に明るい兆し
取扱高(GMV)成長率の鈍化に歯止めがかかった
アリババの中核事業である小売コマース部門を、もう少し細かく見ることにします。
アリババのビジネス・モデルは、マーケットプレースと呼ばれる市場(いちば)をネット上に開き、いろいろな商品を売る「売り手」と、それらを買ってゆく「買い手」を引き合わせる役目を果たしています。そして各種販売促進サービスを売り手に提供することへの対価が、同社のコアの売上高になっています。
言い換えれば、マーケットプレース上で売買が成立する商い高、言い換えれば取扱高(=それをアリババではGMVと呼んでいます)は、アリババの売上高には計上されないのです。
しかし取扱高(GMV)は、アリババのマーケットプレースがどれだけ活況を呈しているか? ということの大事な指標です。
そのGMVですが、ずっと成長率が鈍化していました。
ここへきてGMV成長率の低下には歯止めがかかった観があります。これは心強いことです。
アリババのモバイルへの移行と
モバイルの課金比率の向上が業績に与える影響とは?
アリババは「売り手」に対する各種販売促進サービス(=広告など)に対して対価をもらっている関係で、その売上高は、たとえばフェイスブックの広告収入と似たような性格を持っています。
一般に広告収入は画面の大きさ(ラップトップか? それともスマホか?)によって単価が変わってきます。
するとユーザーがラップトップからスマホへと移行すると、それがアリババにとって一時的に「アゲンストの風」になります。この様子は下のグラフでモバイルのマネタイゼーション(課金)比率がずっと低かったことからもわかります。
しかしユーザーは圧倒的にスマホへ移行しているわけですから、アリババとしてもスマホへの移行を押し進めないわけにはゆきません。これが一時的な業績の抑圧要因として働きました。なお同様のことは、かつてフェイスブックも経験しました。
現在はモバイルへの移行が、ほぼ完了しつつあります。上のグラフで、今回、初めてモバイルのマネタイゼーション比率(2.8%)が非モバイルのマネタイゼーション比率(2.78%)を上回った点に注目してください。
次にモバイル・ユーザー当たりの売上高をみると、良い感じで伸びています。現在の水準は米ドルに換算すると約21ドルです。
アリババ株のまとめ
アリババはIPO後、ちょうどフェイスブックが経験したのと同じようなモバイルへの移行という試練に直面しました。
今回の決算では、モバイルへの移行が完了し、モバイル・マネタイゼーション比率が非モバイル・マネタイゼーション比率を始めて上回りました。
加えてじりじり下がっていた取扱高の成長率も、下げ止まった観があります。
つまりアリババ株は、IPO後の長い低迷期を脱し、飛躍期に入ったと言えるのです。
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