9月に入って「高値波乱(高値圏で株価の値動きが荒くなること)」となっていたナスダック総合株価指数が、やや落ち着きを取り戻しつつあります。
ナスダック総合株価指数は、9月2日に1万2074.07ポイントの史上最高値をつけましたが、その後は急落に転じ、前週末11日の安値は1万728.03ポイントでした(終値は1万853.55ポイント)。つまり、高値をつけた2日からわずか6営業日後(7日はレーバー・デーで休場)に1346.04ポイント(11.15%)も下落する場面があったのです。
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ナスダック総合株価指数が大幅反発した理由は、
「新柄コロナ向けワクチン」と「米国企業の大型M&A」の2つ
しかしながら、週明けの9月14日のナスダック総合株価指数は、前週末比203.11ポイント(1.87%)高の1万1056.65ポイントと、3営業日ぶりに大幅反発しました。反発した主因は大きく2つです。まずは、新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン絡みのポジティブなニュースが相次いだため、経済正常化が加速することへの期待が高まったことです。もうひとつは、大型M&Aが続出し、米国企業の成長期待が高まったことです。
新型コロナウイルスのワクチンに関連するニュースとしては、まず、臨床試験を中断していたアストラゼネカ(AZN)が9月12日、英国で臨床試験を再開したと発表しました。また、ファイザー(PFE)のアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)が9月13日、米メディアのインタビューで「開発中のワクチンが有効か10月末までに判明させ、年内にも米国で供給を始める可能性がある」と述べました。
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なお、FDA(米国食品医薬品局)は8月28日、「COVID-19ワクチン・治療薬に関する会合」を10月22日開催すると発表しています。
一方、M&Aに関しては、エヌビディア(NVDA)が9月13日、AI向け半導体での覇権を狙って、ソフトバンクグループ(SBG・9984)から英国の半導体設計大手アームを400億ドルで買収すると発表しました。また、9月14日にムニューシン米財務長官が「オラクル(ORCL)を技術パートナーとする提案を受け取った」と述べたことで、オラクルが「TikTok(ティックトック)」の米国事業を引き受けるとの観測が強まりました。
ナスダック総合株価指数に対する投資家の不安感も薄まり、
ナスダック版の恐怖指数「VXN」も順調に低下
なお、先物・オプション市場では、「ナスダック版恐怖指数」であるCBOE NASDAQ 100 Voltility (VXN)が順調に低下しつつあります。
VXNは、米国を代表する株価指数の一つであるナスダック100指数(NASDAQ-100)のオプション取引価格から算出される指数ですが、VIX(恐怖指数)同様に、数値が高いほど「投資家が相場の先行きを不安視している(下落リスクに怯えている)」とされます。そのVXNは、9月4日に47.63まで急上昇した後、14日には終値が33.56と順調に低下しており、投資家の不安心理が後退している様子が窺えます。
また、商品先物取引委員会(CFTC)の週次報告書によれば、投機筋によるナスダック100指数のネットポジション(買い-売り)に関し、7月10日に4万4700枚の買い越しだったのが、順調に買い越し枚数が減少し、9月11日にはついに1万8500枚の売り越しとなりました。なお、前週の9月4日は8600枚の買い越しでした。
わずか1週間で買い越しサイドから大幅な売り越しサイドになったということは、相当激しいポジションの変更があったのでしょう。ですが、経験則上、概ね2~2.5万枚の売り越しでボトムをつけているため、投機筋のポジション調整はほぼ一巡したと見てよさそうです。
今週のFOMCでは、追加金融緩和策こそ出てこないものの、
パウエル議長の会見で「金融緩和の長期化」が示される可能性は高い
ところで、9月15~16日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備理事会)は追加の金融緩和策を打ち出さないというのが大方の予想です。しかしながら、超絶金融緩和の長期化を示す可能性は高いでしょう。
なぜなら、パウエルFRB議長は8月に、2%超のインフレ率を容認する「平均物価目標」を採用することを発表したため、今回の記者会見でも議長が「ハト派姿勢」を強めると見られるからです。期待通りに議長が「ハト派姿勢」を強調するようなら、これは米国株式市場のみならず、世界の株式市場にとって追い風になると考えます。
自民党優位の状況を背景にした早期の解散総選挙が実現すれば、
長期安定政権誕生による構造改革への期待が高まる!
一方、国内では事前の報道通り、9月14日投開票の自民党総裁選で菅義偉官房長官が新総裁となりました。16日召集の臨時国会で実施される衆参両院の首相指名選挙で、菅氏は新首相として指名される見通しです。
これ自体は大方の予想通りのため、サプライズはまったくありません。ですが、円安・株高を演出してきた「アベノミクス」を踏襲する新政府が、役所の縦割りなどを打破して規制改革を進めるようなら、日本株の先高観は強まることでしょう。
国内政治に関しての市場の関心は、早期の解散総選挙の有無に移っています。自民党内でも、新首相が10月にも解散に踏み切るとの見方も出ているもようです。
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共同通信が9月8日と9日に実施した全国緊急電話世論調査では、次期衆院選の比例代表の投票先について「自民党」と回答した人が48.1%、「合流新党」と回答した人が15.7%だったそうです。
このような自民党優位の状況を背景に、新政権はコロナ禍が続く中でも早期の解散に動くとの見方が強まっているのです。国民によって選ばれていない新政権は「ワンポイントリリーフ政権」でしかありません。しかし、国民に信を問うべく選挙を実施して自民党が大勝するようなら、新政権は長期安定政権となる可能性が高まります。
ただし、菅義偉新総裁は9月14日夕方、解散総選挙の条件について「GoToのときもそうだったが専門家の先生の考え方を参考にして判断しているので、先生方の見方が(新型コロナウイルスが)完全に下火になってきたということでなければ、なかなか難しいのではないか」「収束したらすぐやるのかというと、そんなことでもない」「全体を見ながら判断をしたい」と語ったそうです。
とはいえ、政治家の言葉を額面通り、馬鹿正直に受け止めることはできません。よって、新首相が長期安定政権を目指して早期解散に踏み切る可能性は、低くはないと見ています。
以上のことから、解散総選挙が決まるまでは、新政権による強力かつ長期的なリーダーシップが見込めないため、日本株の先高観は強まることはなく、日経平均株価は概ね2万3500円±1000円のレンジで推移すると見ています。
一方、解散総選挙が決まれば、長期安定政権誕生による構造改革期待の高まりを背景に、前述のレンジを上方ブレイクし、中長期の上昇トレンドが発生すると考えています。
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