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新型コロナウイルス向けワクチン開発の
最終ステージとなる臨床試験がいよいよ開始!
2020年5月18日の本コラムでは、新型コロナウイルス向けワクチン開発の様子についてお伝えしましたが、その後、各社のワクチン開発プロジェクトは大きな進捗が見られました。
【※5月18日公開の記事はこちら!】
⇒新型コロナの「ワクチン開発」に投資するならこの銘柄!「モデルナ」「バイオンテック」など、“ワープ・スピード作戦”への採用も期待できる米国株を解説!
今回は、その後のワクチン開発の状況を整理したいと思います。
なお、今回の記事で紹介する企業は、すべてトランプ政権のワクチン開発支援制度「ワープ・スピード計画」に採用されています。これまでのところ、すべてのワクチンが期待を上回る臨床結果を出しており、「次のステージ」へと進んでいます。
【バイオンテック】
ワクチン開発競争において先頭に躍り出る
ワクチン開発競争の先頭に躍り出たのは、ファイザー(ティッカーシンボル:PFE)と組んでmRNA技術に依拠したワクチンを開発しているバイオンテック(ティッカーシンボル:BNTX)です。
先週、バイオンテックの「BNT162b1」と呼ばれるワクチンの第2相臨床試験の結果が、臨床試験関連のデータベースにUPされました。45人の被験者から得られた試験結果では、まず比較対象である回復期血清に比べて1.8~2.8倍の中和抗体が見られました。次に、幾何平均濃度にして8〜46.3倍の免疫グロブリン(IgG)が認められました。
もっと平たい言い方をすれば、パワフルで有力な抗体が確認されたということです。
ここで重要なポイントとして強調しておきたいのは、「抗体が出来た!」というだけではこのワクチンが実地に免疫力を発揮するかはわからないということです。それを、これから行われる「第3相臨床試験」で確かめることになります。また、「ワクチンの効き目がどのくらい持続するか?」という点も不明です。
この臨床試験結果は、ワクチン開発を専門に行っている他の研究者によるピア・レビュー、すなわち内容に関する信憑性チェックを経て、有力学会誌に掲載される予定です。
また、今月のどこかのタイミングで、いまドイツで行われている臨床試験のデータも追加で発表される見込みです。
そして、7月中に3万人の被験者を使った大規模な最終ステージ「第3相臨床試験」が始まります。その結果が判明するのは、早くても8月初めだと思われます。
もちろん「第3相臨床試験」の結果が「吉」と出るか「凶」と出るかは、わかりません。ただ、少なくとも7月いっぱいは、バイオンテックに対する市場参加者の期待から、同社の株は買い進まれると予想します。
その後、ワクチンを最終的に承認するのは、米国の食品医薬品局(FDA)の仕事です。そしてFDAは「プラシボに対して50%以上の免疫力を発揮したワクチンだけに承認を出す」と明言しています。バイオンテックのワクチンがこのハードルを越える保証はありませんので、そこだけは覚えておきましょう。
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【モデルナ】
「第3相臨床試験」の結果が出るまでは“じり高”が続くと予測
モデルナ(ティッカーシンボル:MRNA)は、これまでワクチン開発競争で先頭を走っており、7月早々から「第3相臨床試験」を開始する予定だったのですが、準備の関係で開始が少し遅れることが報じられました。
モデルナのワクチンの「第3相臨床試験」は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)がじきじきに担当しますが、今回の遅延は誰かの責任という話ではなく、単に「3万人もの被験者を使う大型の臨床試験を準備するのは簡単じゃない!」ということだと思います。したがって「第3相臨床試験」の遅延を「モデルナのワクチン開発に何か問題が発生したのでは?」と勘繰る必要はありません。
モデルナは当初、株式市場の参加者からチヤホヤされていたのですが、大型の公募増資が「しこり」をつくり、最近は投資家の熱狂が醒めています。ただし、それはモデルナのワクチンがダメと決まったわけではありません。
モデルナのワクチンは、前出のバイオンテックのワクチンと同様にmRNAを利用したもので、同じくらいの確率で承認される可能性があります。モデルナの「第3相臨床試験」の結果が明らかになるのは8月半ばだと思いますが、それまでモデルナの株価は、じりじりと少しずつ上がる“じり高”が続くと予想しています。
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【アストラゼネカ】
8月から「第3相臨床試験」を開始予定
アストラゼネカ(ティッカーシンボル:AZN)は、オックスフォード大学と共同で新型コロナウイルス向けワクチンを開発しており、8月には臨床試験に入る予定です。試験地は米国で、アメリカ国立衛生研究所が担当します。
アストラゼネカのワクチンは、非複製的ウイルス・ベクター・アデノウイルス技術を利用していますが、このワクチンが最終的に承認される可能性は「五分五分」だと考えられています。
アストラゼネカは、新型コロナウイルス向けワクチン以外にも沢山の薬を持っているので、ワクチンのストーリーは株価にあまり影響を与えないと思います。
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【ジョンソン&ジョンソン】
一時、開発スケジュールが遅れていたが、ここに来て持ち直す
ジョンソン&ジョンソン(ティッカーシンボル:JNJ)は、非複製的ウイルス・ベクター技術に基づいたワクチンを準備中です。ジョンソン&ジョンソンの場合、臨床試験のスケジュールがかなり遅れていたのですが、ここへきて2カ月ほど予定が繰り上がりました。つまり、進捗状況は思いのほか良いと言えます。
ジョンソン&ジョンソンのワクチンの製造は、エマージェント・バイオソリューションズ(ティッカーシンボル:EBS)が担当します。
新型コロナウイルスの材料を手掛かりに株を買うなら、ジョンソン&ジョンソンよりもエマージェント・バイオソリューションズを買うほうが遥かに良いと思います。なぜなら、エマージェント・バイオソリューションズは、ジョンソン&ジョンソンのほかにもアストラゼネカやノヴァヴァックス(ティッカーシンボル:NVAX)、ヴァックスアート(VXRT)などの新型コロナウイルス向けワクチンの製造下請けをすでに受注しているからです。
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⇒米国の新型コロナ関連株では“ワクチン製造下請け”の「エマージェント・バイオソリューションズ」に注目! ワクチン開発競争の勝者に関係なく売上増の可能性大
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【メルク】
IAVIと組んで新型コロナウイルス向けのワクチンを開発
メルク(ティッカーシンボル:MRK)は、非営利科学研究団体IAVIと組んで新型コロナウイルス向けのワクチンを開発します。メルクは、遺伝子組換え水疱性口内炎ウイルス(rVSV)技術を使用しますが、これはザイール・エボラ出血熱ワクチンやERVBOでも使われた実績があります。
メルクのワクチンは、2020年のどこかの時点で臨床試験に入る予定です。
メルクは、上記の試みとは別にテーミス・バイオサイエンスを買収しています。テーミス・バイオサイエンスはオーストリアのウイーンに本社を置く免疫調節療法ベンチャーで、今年3月にフランスのパスツール研究所やピッツバーグ大学とコンソーシアムを組み、新型コロナウイルス向けワクチンの開発に乗り出したばかりです。このコンソーシアムは、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)から支援金を獲得しています。
なお、メルクは大企業なので、新型コロナウイルス向けワクチンのビジネスは「大海の一滴」にしかならず、株価へのインパクトは小さいでしょう。
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【ヴァックスアート】
「経口ワクチン」というユニークな薬を開発するダークホース
ヴァックスアート(VXRT)は、零細なバイオ企業でワクチン開発競争においてはダークホース的な存在でしたが、同社は粘膜アジュバントによる「VAAST(ヴァースト)」と呼ばれる独自技術を援用し、「経口ワクチン」を開発中です。
ヴァックスアートは、これからサルを使った動物試験を行います。その試験では、いわゆる「チャレンジ・スタディー」と呼ばれる手法が採用されます。これは、サルにワクチンを投与した後、新型コロナウイルスにわざと感染させ免疫力を確かめる手法です。
新型コロナウイルスが主に鼻、口、目などから感染することを考えれば、ヴァックスアートの「経口ワクチン」というデザインは理に適っています。また、この「経口ワクチン」は錠剤なので、注射を嫌がる国民にも受け入れやすいと思われます。
ヴァックスアートがライバル企業に比べて零細であるにもかかわらず「ワープ・スピード計画」に滑り込んだ理由は、この「経口ワクチン」というユニークな価値提案のためだと思われます。ただ、正直言って、このワクチンが承認される確率は低いように思います。
【今週のまとめ】
「バイオンテック」が一押し銘柄で、「モデルナ」と
「エマージェント・バイオソリューションズ」も期待大!
新型コロナウイルス向けワクチン開発は、これまでのところ1社の落伍者も出さずに期待以上の安全性や薬効を示し順調に次のステージへと進んでいます。
最も期待されているのはバイオンテックで、その次がモデルナです。これらの企業のワクチンが「第3相臨床試験」で一定の成果を収めれば、秋から冬にかけて新型コロナウイルスが再び猛威を振るう可能性がある中で、最前線で危険に晒されながら患者のケアに当たる医師や看護婦に対して、緊急使用承認というカタチでワクチンを提供するシナリオも現実味を帯びてきています。
銘柄としてはバイオンテックが一押しで、エマージェント・バイオソリューションズとモデルナも強気です。
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