インフレが進む米国の現状を、米・シアトル在住のストラテジスト・ポール・サイさんがレポート! 現在の下落局面は長期成長する米国株に投資するチャンス!
発売中のダイヤモンド・ザイ9月号は、特集「【米国株】リアルレポート」を掲載。この特集では、米国に在住するストラテジストなどの株の専門家が、米国の”今”をレポート。米国の物価や不動産価格の現状や、注目すべき最新トピック、また、今だからこそチェックしたい米国株などを紹介しているので、米国株投資に興味がある人には役立つはずだ。
今回はこの特集から、シアトル在住のストラテジストのポール・サイさんによる現地レポートを抜粋して紹介!
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ハイテク産業の中心地・シアトルでは、不動産価格が上昇!
中間層が住宅を手に入れるのは難しい時代に突入
ストラテジストのポール・サイさんは、米国のハイテク産業の中心地であるシアトル在住。この記事では、ポールさんに聞いたシアトルの現状や、米国株投資をするうえで、ポールさんが注目するトピックなどを紹介していこう。
シアトルでは近年、住宅価格が急騰しているという。下の写真はポールさんの自宅近くの物件だが、販売価格はおよそ150万ドル(※1ドル=136円で計算すると、2億円超)だ。
「5年前だと、シアトルの一般的な住宅の価格は、25万~50万ドルといったところでした。しかし、今年に入ってからは50万~100万ドルに。もはや住宅は、中間層が購入できる水準ではなくなりました」(ポールさん)
11月の米国議会中間選挙では、バイデン大統領率いる民主党が、議席を大きく減らすと見られている。これは、バイデン政権がインフレ対策で後手に回ったことも影響している。
「民主党幹部らは、人工妊娠中絶問題を中間選挙の争点としたい考えです。共和党が議会で過半数を制することになれば、女性の権利などに影響が及ぶと訴えていますが、各種調査を見ると共和党が議席を大きく増やしそうです」
共和党の政策は温暖化対策への不支持など、米国企業、特にエネルギー業界などにとっては追い風だ。
「共和党政権の政策によって、米国社会では軋轢が生じる可能性はあります。だからといって、米国経済の強さが揺らぐことはないでしょう」
家電や衣料品などの買い控えで小売り大手は大打撃!
ガソリンの値引き販売などで集客するコストコが勝ち組に!
現在のインフレで値上がりしているのは、もちろん不動産だけではない。エネルギーと食料品価格の上昇が、家計を圧迫する大きな要因になっている。
この影響で、大手小売りチェーンのウォルマート(WMT)とターゲット(TGT)の2022年1~3月期決算は、利益が市場予測を大きく下回った。決算発表から現在(※7月5日時点)に至るまでの間に、ウォルマートは約20%、ターゲットは約35%も株価が下落している。利益率が高い家電や衣料品などを、消費者が買い控えたためだ。
その一方で、比較的株価が堅調な小売り企業もある。それが、会員制の大型量販店チェーンを展開するコストコ(COST)だ。
「シアトルのガソリン価格は1ガロン6ドル程度ですが、コストコは会員向けに、約17%ディスカウントした1ガロン5ドルで販売しています。それが、集客につながっている。また、顧客のニーズに合った商品展開も強みで、直近決算でも、売上高と利益がともに市場予測を上回りました」
また、インフレは低所得者層ほどダメージが大きくなる。しかし、コストコの顧客は中間層がメインなので、インフレの影響が比較的抑えられる。
「最近は円安の影響なのか、コストコでは日本製品も増えています。私が大好きな日本製のいちごドリンクミックスが安くなっていました。コストコは健康に配慮した製品や、シーズンに合わせた商品展開が魅力。顧客のニーズを捉えており、多少の値上げなら販売減にはつながらないでしょう」
アマゾンの株価がコロナ前の水準まで下落!
ビジネスモデルが強固な企業は長期では回復するので、今が買い時!
こうした状況下で、一時期ほどの勢いがない米国株だが、この先の見通しはどうか。ポールさんは「物価高やそれを抑えるための利上げによって、株式市場は2022年10月頃まで厳しい展開が続くものの、年末になれば株価は上昇へ転じる」と予測している。
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その復活のときまでに買っておきたいのが「大手IT株」だと、ポールさんは言う。大手IT株は2022年に入ってから値下がりが目立っており、その代表格がアマゾン(AMZN)だ。下のチャートが示すとおり、アマゾンの株価はコロナ前の水準近くまで下落した。
ほかの大手IT企業も、同様に下落が続いている。特に、メタ・プラットフォームズ(META)やネットフリックス(NFLX)は、業績見通しの悪化で大幅下落。メタ・プラットフォームズはPERが13倍、ネットフリックスはPERが約16倍になるまで売り込まれている。
しかし、「ビジネスモデルが強固な企業は、長期で見れば業績が回復し、それに伴って株価が上昇する」と、ポールさんは話す。
「ここ、シアトルに本社があるアマゾンやマイクロソフト(MSFT)は、利上げで不況になったからといって、ビジネスモデルが崩れるわけではない。これからも多くの企業が、生産性向上のためDXへの投資を拡大するはず。その要となる技術を持つ両社は、長期成長が続くでしょう」
そもそも、これまでの株高はコロナ特需の影響が大きかった。年初からの下げで、今は一時のような過熱感がなくなっている。「長期投資家であれば、こういったタイミングで投資を検討するのが賢い戦略」というポールさんのアドバイスに従って、物色を検討してみてもいいかもしれない。
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