小説家・原田ひ香さんと、株主優待名人・桐谷広人さんのスペシャル対談を公開!
ダイヤモンド・ザイ11月号は、”お金”を切り口とした小説が大ヒット中の小説家・原田ひ香さんと、株主優待名人・桐谷広人さんによるスペシャル対談を掲載。お互いの投資歴や、どんな株を保有しているか、さらには実践している節約ワザに至るまで、お金に関するあれこれをたっぷり語り合ってもらっている。投資のヒントもたっぷり詰まっているので、ぜひ参考にしてほしい!
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「桐谷さんの優待株投資を参考に小説を書いたことも」(原田)
「小説でお金の知識が得られるのはいいですね」(桐谷)
原田 桐谷さんの本はほとんど読ませていただいていて、セミナーにも出席したことがあるんですよ! セミナー後に2ショットで写真も撮らせていただいたことがあって。
桐谷 そうなんですか。今回、原田さんの新刊『財布は踊る』(新潮社)を読ませていただきましたが、小説でお金の知識が得られるのはいいですね。
原田 ありがとうございます。桐谷さんの優待株投資はもちろん、信用取引で失敗された話なども、小説を書くときに参考にしています。
たとえば昨年出した『三千円の使いかた』(中央公論新社)。登場人物の専業主婦が、優待株を権利確定日の2カ月前くらいに買って、数千円の利益が出たところで売ってお小遣いにする、というくだりがあります。これは、桐谷さんの記事を参考に書きました。主婦にとって数千円はバカになりません。
桐谷 私は、リーマン・ショックで億単位の損を出しました。その損を少しでも取り返したいと思って、“チリツモ”作戦で、指値注文を使って数千円儲かったところで売ったりしていてね……。当時は、松井証券で1日10万円の約定代金まで売買手数料が無料というサービスがあって、その範囲内で売買していました。いまはネット証券の売買手数料が大変低くなりまして、1日100万円の約定代金までは手数料が無料という証券会社もありますが。ところで、原田さんご自身は投資をされているんですか?
原田 大学時代の先生に「就職したら月8万円ずつお金を貯めなさい。ボーナス時に2万円ずつ足せば1年で100万円になる。結婚するときなどにお金を持っていると自立できるし、気持ちの上で違いますよ」と言われまして。それを実行して1年で100万円貯めました。
桐谷 それはすごいです。なかなかそれだけ貯められる人はいませんね。
原田 その100万円の預け先として、当時、バブル崩壊後で定期預金の金利は下がっていましたので、金利が1~2%つくMMFを買おうと、丸の内にあった山一證券にいきました。そこから、海外債券ファンドや豪ドルへの投資の営業を受けて買いましたね。山一證券が潰れたときには驚きましたけど……。
桐谷 私の山一證券株は紙切れになりましたけど、原田さんの金融商品は戻ってきたはずですよね?
原田 そうですね。それで別の証券会社に資金を移動して、そこで株を勧められて、カゴメ(2811)の株を買ったのが、初めての株式投資でした。
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「含み損が出ていても、株主優待で悔しさが半減されます」(桐谷)
「逆に上がったとき、保有し続けるコツを聞きたいです」(原田)
桐谷 カゴメは2002年に株主優待を新設しました。きっとその頃ですね。単元株数を100株に変更して10万円くらいで買えるように。株主優待ブームの走りがカゴメでした。
原田 私は20万円くらいで買ったと思いますが、途中含み損が出ていても、株主優待が届いているとそれもあまり気にならなくて(笑)。
桐谷 その気持ちはよくわかりますね。含み損が出ていても、株主優待が届けば、その悔しさが半減されます。優待株投資のいいところですよね。
原田 そうなんです! のちに、桐谷さんをテレビでよく拝見するようになったときに「あ! たしかにカゴメを保有していたときは楽しかったわ!」というのを思い出しました。
桐谷 優待株はもう保有していないんですか?
原田 今はあまり持っていません。カゴメの次は、震災後にコロワイド(7616)や東急レクリエーション(9631)などを買いました。でも、私は株価が上がると売りたくなってしまう。下がるのは結構我慢できるのですが、上がるのは我慢できない性分で……。いずれも上がったときに売ってしまいました。
その後に買い戻そうとしても、株価が倍以上になっていて再び買うのは難しかった。だから、株価が上がっても保有し続けられるコツを桐谷さんにお聞きしたいくらいです。
桐谷 私もある程度高くなると売ることがありますが、コロワイドやオリックス(8591)は売ったことがないですね。自分にとっていい株主優待は売らないです。でも、ある程度儲かったら売るのは正解だと思いますよ。その後は、売った優待株の株価が上がっても、忘れるぐらいの気持ちでね。ただ、売値より高い株価で買い戻すのは私も好きではないです。別の安い優待株を買えばいいと思います。
原田 なるほどです。今保有しているのはクリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387)や、「丸亀製麺」のトリドールホールディングス(3397)くらい。あと、株主優待で映画が観られる東京テアトル(9633)は昔から持っています。数年前に東京テアトルが配給した『この世界の片隅に』という映画は、素晴らしい映画でした。
桐谷 私もテアトル新宿で観ました。
原田 自分が保有している優待企業がいい映画を作って、人気も出て。そういうところは、投資をしていて本当にうれしい点だなと思います。
「桐谷さんおすすめの優待株をチェックすることも」(原田)
「先読みが苦手な人には優待投資が一番だと思います」(桐谷)
桐谷 東京テアトルはかつて、不動産投資で失敗して潰れそうになったんですよ。でも映画の株主優待を出していて、映画ファンが株を売らなかったから助かった、と「株主通信」で社長が言ってました。株主優待は会社にもメリットがあります。
個人投資家にとっては、優待狙いは農業と同じで、時間がかかるけども確実に収穫できる。将棋と投資は、一手先を読む点が共通していますが、それが難しい人に優待株はおすすめです。
原田 桐谷さんが本や雑誌でおすすめしている銘柄をチェックすることもあります。株価が安くなったら買おうかな、と考えたり。JT(2914)やオリックスが株主優待をやめると発表しましたが、これについては桐谷さんはどうお考えですか。
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桐谷 両方とも大量に持っています。JTは4000円くらいから買い下がって、今2300円くらい(※2022年9月時点)。大損していますね。でも、高配当なので、株主優待をやめてもそこまでがっかりしていません。気長に配当をもらいながら戻りを待とうかと。オリックスは、今名物になっている「ふるさと優待」を始める前から持っていました。やめても配当を増やすと思いますし、株価は下がらないので、そこまで気にしていません。
原田 たしかにJTは株主優待の廃止を発表してから株価が安定したようにも感じますね。ところで、ザイ(2022年5月号)に載っていた桐谷さんの節約ワザもスゴかったですね!
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桐谷 昔から無駄遣いが嫌いでして。お金があっても全然使いたいと思いません。とにかく今は、「優待券を少しでも期限内に消費しなきゃいかん!」と思って走り回っています。税理士にも「色々経費にできますよ」と言われますが、家賃以外はほぼ全部、株主優待を使うから、経費が計上できない……。『財布は踊る』では、節約の話もたくさん出てきますね。
原田 小説の主人公は節約家ですが、桐谷さんの節約ワザはそれを上回るくらいですよ。
桐谷 主人公と同じように、私もシャワーを出してお湯になるまでの水はバケツで受け、洗濯に使います。
原田 私は今の洗濯機の高い性能を考えると、洗剤をそこまで使わなくても汚れが落ちるのでは? と思って、洗剤を少ししか使いません。結構節約家です(笑)
桐谷 小説にメルカリの話も出てきましたが、私も一度テレビ番組「月曜から夜ふかし」でやりましてね。とりわけ発送に戸惑いました。この小説は、投資だけでなく、メルカリをやってみたい人や節約したい人にも参考になりますね。
原田 そうですね。今回の小説には奨学金の問題も盛込みました。若い人が、奨学金のために人生をあきらめるのは残念です。現時点で私が考えた一つの解決策が書けたと思います。私の小説の感想を見ると「小説を読んで、NISAやiDeCoをやってみようかな」という人も。
桐谷 数年前に老後2000万円問題が話題になったあたりから、お金のことを皆さん考えるようになったんじゃないかな。昔ほどお金の話がタブー視されなくなりました。
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「投資を学ぶなら本や雑誌を読むのが一番いいのでは」(原田)
「最初は少額で、体験しながら学んでいくのもいいですね」(桐谷)
原田 最近はFIREという言葉が流行るなど、お金について話すことが以前より普通になってきました。テレビ番組で見たのですが、金貨やコインは、人類が物々交換するような時代を経て、豊かになってからできたそう。金貨は貯めることもできて、そこから分業が始まった。豊かになったから、小説などの文化も生まれた。それを思うと、お金のことを考えることは大切だし、決して汚いことではないと思います。
桐谷 ただ、すぐに儲けようと思って、よくわからないまま高額なセミナーに参加するのは反対です。
原田 私も、投資を学ぶなら本や雑誌を読むのが一番いいのではないかと。
桐谷 まずは5万円以下などの少額で買える株を1つ買ってみることです。今は5万円以下で買える優待株が100社以上ありますから。冒頭でも話しましたが、株や投資信託の売買手数料はだいぶ下がりました。だから、自分で体験しながら学んでいくのがいいと思いますね。
(写真=新潮社)
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