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S&P500に大差をつけた「バーベル戦略」の片翼を担った石油株。中期ではいいけれど、長期でなぜ持ってはいけない?

2023年3月9日公開(2023年3月7日更新)
ポール・サイ
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好パフォーマンスを上げてきた「バーベル戦略」とは何か?

 ポール氏の最初の就職先は石油会社だったわけだが、ポール氏がメルマガで一番最初に推奨したのも実は石油会社の株だった。その中にはポール氏が社会人第一歩を踏み出した会社、エクソン・モービル(ティッカー:XOM)も含まれていた。自分が在籍していた会社だから、よくわかっているという面もあっただろうが、もちろん、それだけでポール氏がポートフォリオに組み入れたわけではない。

 そもそもメルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」でポール氏がとってきた基本戦略は「バーベル戦略」というものだった。バーベル戦略は、対照的な性質を持つ資産を組み合わせる投資手法だが、ポール氏によると、この言葉は元々はフィデリティ投信で使われ始めた言葉だという。

 本記事シリーズではこれまでテクノロジー株の話ばかり紹介してきたが、それはポール氏が取っていたバーベル戦略における一方のバーベルのことだけだった。バーベルのもう一方には、石油株をはじめとしたエネルギー株を組み入れており、これもポール氏のポートフォリオが好パフォーマンスを挙げた原動力となっていたのだ。

 「インフレが強い状況だったので、インフレだったらエネルギー株、コモディティ株がいいということがありました。その一方、インフレがピークアウトしてきて、金利のピークアウトも見えてくると、金利に敏感なテクノロジー株が良くなってきます。そこで、これらを組み合わせたバーベル戦略をとることにしたのです」

悲観の中にチャンスあり! 世界的な脱炭素の流れから将来性がないと思われていた石油株

 2022年8月12日、「米国株!石油・エネルギーセクター研究」と題したメルマガで、ポール氏は石油株について解説し、買いを推奨していた。この時、石油株は結構上昇したあと、高値からは少し調整しているような状況だった。

 以下はエクソン・モービルの2022年8月上旬頃までの週足チャートだ。

エクソン・モービル 週足エクソン・モービル 週足(2022年8月上旬頃まで) 出所:TradingView

 本記事でこれまで取り上げてきたテクノロジー株と異なり、石油株は直近、すごく株価が下がっているわけではなく、むしろ上昇していたわけだが、ポール氏はなぜ石油株がまだ上昇すると考えたのか。メルマガからその解説を一部引用してみよう。

なぜまだ上昇すると考えているのか? 簡単に説明すると、地球温暖化によって石油会社は将来がないとマーケットは考えました。2015年から2020年、2021年まで原油価格は横ばいでした。そして、コロナによって需給バランスが崩れ、保存キャパがたりないことを理由として、史上未聞のマイナスにまで株価が下落しました。これは投資機会のひとつのシグナルになります。大きなパニックの時は投資チャンスである場合は多いです。例えばエクソン・モービル(XOM)の配当は年間2回で、2020年の配当利回りは10%以上にまでなりました。

 世界的な脱炭素の流れにより、石油会社には将来性がないとマーケットは見ている。しかし、それは行き過ぎている──ポール氏の視点はやはり悲観の中にあったのだった。石油株は上がってきてはいたものの、ここ数年のS&P500指数との比較で言えば、まだまだ大した上昇ではないともポール氏は見ていたようだ。

エクソン・モービル週足とS&P500指数週足エクソン・モービル(ローソク足)とS&P500指数(ラインチャート) 週足 出所:TradingView

 そして実際、ポール氏が買いを推奨した2022年8月以降、石油株はさらに上がっていった。その模様は、直近まで表示期間を延ばした以下のチャートのとおりだ。

エクソン・モービル 週足エクソン・モービル 週足 出所:TradingView

  では、石油株はここからもさらに大きな上昇が見込めるのだろうか?

 「石油株は結構上がってきましたので、以前ほどは強気ではありません。すべて売るわけでもないですが…。

 そして、石油株は中期ではいいと思いますが、長期でもったままにしてはいけない株です。これが大事な点です。石油株は海運株などと同じようにサイクルのある循環株です。この種の株はサイクルを考えて売買しないといけません。サイクルのピークはまだだと思いますが、サイクルの半分以上のところまではもう来ていると思っています」

 石油株は循環株(シクリカル銘柄)であり、長期的にずっと持ちっぱなしではいけないということだ。よく「中長期投資」と大ざっぱに言うことがあるが、「中期」と「長期」をしっかり分けなくてはいけないケースもあるのだ。そして、買い時を考えるだけでなく、いい売り時も逃さないとポール氏は目を光らせている。

 実際、ポール氏はフィデリティ投信時代にアナリストとして循環株である海運株を担当しており、その売り時をしっかり見定めたという。当時のエピソードなどを含め、以下のポール氏の連載記事では、豊富な事例とともに循環株のことが詳しく解説されている。ぜひご参考に。

[参考記事]
私の歩んできた道(3) アメリカの名門投信会社フィデリティで経験したシクリカル銘柄の見極め方。銀行株はもう追いかけない方がいい。その理由とは?

(つづく)

(取材・文/フリーライター・井口稔)

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

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