「NISA」は、投資で得られた利益にかかる税金を非課税にできる制度です。現行の「NISA」には、「つみたてNISA」「一般NISA」「ジュニアNISA」がありますが、これらは2023年末をもって新規の投資が終了し、2024年からは「新NISA」として制度が大きく拡充されます。
今回は、投資にかかる税金について整理した上で、あらためて「NISA」の優位性を検証したいと思います。
株や投資信託などへの投資で得られた利益には
通常なら20%超の税金がかかってしまう
投資で得られた利益には、税金がかかります。どんな税金がいくらかかるかは金融商品によって異なります。
◆主な金融商品にかかる税金 | |
預貯金・株式・ 債券・ 投資信託・ 外貨預金の利息・FX |
源泉分離課税 20.315% (所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) ※復興特別所得税は2037年末までの予定 |
金 | 源泉分離課税 金投信・ETFは20.315% 総合課税 金地金・純金積立は他の所得と合わせて課税 (所得税は5~45%、住民税は10%) |
外貨預金の為替差益・ 不動産投資・ 仮想通貨・ ソーシャルレンディング |
総合課税 他の所得と合わせて課税 (所得税は5〜45%、住民税は10%) |
生命保険の満期保険金・ 死亡保険金・個人年金 |
総合課税 受取人の関係によって、他の所得と合わせて課税 (所得税は5〜45%、住民税は10%)、贈与税、相続税 |
生命保険の解約返戻金 | 源泉分離課税 保険期間が5年以内であるなど一定の要件を満たす場合は20.315% 総合課税 払込保険料との差益が一時所得 他の所得と合わせて課税 (所得税は5〜45%、住民税は10%) |
(株)Money&You作成
現行の「つみたてNISA」で投資できる金融商品は「投資信託」と「ETF(上場投資信託)」です。また、2024年からはじまる「新NISA」で投資できる金融商品は、つみたて投資枠がつみたてNISAと同じ「投資信託」と「ETF」、成長投資枠が「株」「投資信託」「ETF」「REIT(不動産投資信託)」となっています。
【※関連記事はこちら!】
⇒新NISAの「つみたて投資枠」に関する“8つの疑問”を解説!「つみたてNISA」「特定口座」から移管すべきか、金額や積立日の設定など、新NISAの素朴な疑問を解決
上の表にあるように、通常、株や投資信託などへの投資で得られた利益には20.315%の税金がかかります。利益には、株から得られる配当金、投資信託から得られる分配金、そして株や投資信託の値上がり益などがあります。いずれの利益に対しても20.315%の税金がかかります。
例えば、ある日本株に100万円投資して、3万円の配当金をもらったとします。その後、投資した株が150万円に値上がりしたところで売却した場合にかかる税金は、
・配当金にかかる税金 3万円×20.315%=6094円
・値上がり益にかかる税金 50万円×20.315%=10万1575円
で、合計10万7669円になります。
配当金と値上がり益、合わせて53万円の利益に対して、実に11万円近くもの税金を払わなければならないのです。そうすると手取りは42万円ほどになってしまいます。確かにそういうルールだといえばその通りなのですが、なんだか残念な気持ちになってしてしまいます。
しかし、仮に「NISA」口座で上記のような投資をしたら、かかる税金はゼロですから、配当金と値上がり益の53万円がそのままもらえます。この差は大きいですよね。
ちなみに、給与などの勤労収入にかかる税金(所得税)は、日本の場合、課税所得に応じて5%から最大で45%となっています。加えて、一律10%の住民税もかかります。それに比べると、投資の利益にかかる税金は利益がいくらでも20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)ですから、勤労収入にかかる税金よりも優遇されていると言えます。
つまり、働いてお金持ちを目指すよりは、投資でお金持ちを目指すほうが税金面では有利なのです。そのうえ、NISAを利用すれば、投資の利益にかかる20.315%の税金すらゼロになるのですから、いかにNISAがすごい制度であるかがわかります。
毎月の積立投資でも「課税」と「非課税」の差は大きい
投資で得られた利益が非課税になることの効果は、積立投資でも十分に発揮されます。
例えば、毎月1万円ずつ20年にわたって投資信託に積立投資したとします。投資の元本は合計240万円です。これが運用によって年3%増えたとき、「つみたてNISA」のような非課税口座の場合は328万円になります。一方、課税口座の場合、そこから税金が引かれて手取りは310万円。実に18万円もの差が生じる結果となりました。
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上記は「月1万円の積立投資を20年続ける」という例で試算しましたが、投資金額が増えたり、投資期間が長くなったりすれば、課税と非課税の差はさらに大きくなります。つみたてNISAでは、投資額の上限が毎月3万3333円、非課税期間が最長20年でした。しかし2024年から始まる「新NISA」では「つみたて投資枠」の投資額の上限は毎月10万円、非課税期間は無期限です。さらに、「成長投資枠」を使えば、月30万円まで積立投資をすることが可能です。
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⇒2024年に始まる「新しいNISA」を解説! 非課税保有期間は無期限、投資限度額は年360万円に拡大など、「つみたてNISA」「一般NISA」との違いや活用法を解説
「新NISA」で人気が出そうな高配当株投資。
「米国株」や「米国ETF」は注意が必要
前述のように「新NISA」では非課税期間が無期限になったため、配当金や分配金ととても相性が良くなりました。配当金や分配金が出る株式や投資信託の場合、「新NISA」での投資なら、保有している間はずっと配当金や分配金を非課税で得られるからです。
ただし、注意が必要なこともあります。高配当で人気が高い投資先に米国株や米国ETFがあります。米国株は株主還元に積極的で、年4回配当を行うのが一般的。さらに、配当金の額を60年以上、毎年増やし続けている「連続増配銘柄」もたくさんあるので、新NISAの成長投資枠で投資したくなります。
【※関連記事はこちら!】
⇒【米国株】新NISAにおすすめの“超長期の連続増配株”2銘柄! 45年連続増配の「メドトロニック」、28年連続増配の「IBM」は、業績安定+高配当で新NISAに最適
しかし、新NISAで米国株や米国ETFに投資する場合、配当金には米国内で10%の税金がかかることを覚えておきましょう。本来、米国株や米国ETFの配当金からはまず米国で10%の税金が引かれ、次に残った金額から日本で20.315%の税金が引かれます。しかし、これでは「二重課税」になってしまうため、確定申告で「外国税額控除」を申請することで、外国で支払った税額を所得税や住民税から直接差し引くことができます。つまり、税金が戻ってきます。
NISAを利用して米国株や米国ETFの配当金を得た場合、日本の20.315%の税金はかかりません。しかし、そのため二重課税の状態ではなくなってしまうため、米国での10%の税金は支払うことになります。外国税額控除はできません。
もちろん、NISAを活用することで税金は安くはなりますが、NISAを活用しても米国株・米国ETFの配当金にかかる税金はゼロにできない点は押さえておきましょう。
税金の負担が大きい日本において、非課税で投資ができるNISAはぜひ活用すべき制度です。2024年から始まる新NISAは非課税期間の無期限化、非課税枠の増加といった「神(かみ)改正」が行われるのですから、これを活用しない手はありません。まだNISAを利用していない方はもちろん、すでに利用している方もよりお金を増やせるよう、上手に活用していきましょう。
(株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト 中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書累計100万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。
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150本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 540本 | − |
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |