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東大卒のプロポーカープレイヤー・木原直哉さんが実践する「株式投資で儲ける方法」は? 機関投資家が参加しない銘柄に絞り、決算を先読みできるデータを探せ!

2024年9月6日公開(2024年8月30日更新)
ザイ編集部
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“世界一”に輝いたこともあるプロポーカープレイヤーにして、株式投資でも成功している木原直哉さんに「株で儲ける方法」を直撃!

ダイヤモンド・ザイでは、毎号異なるゲストに「お金との向き合い方」について聞くインタビュー記事「おカネの本音!」を掲載している。発売中のダイヤモンド・ザイ10月号のゲストは、プロポーカープレイヤーの木原直哉さん。

東大卒のプロポーカープレイヤーの木原さんは、世界最大のポーカートーナメントで日本人として初の優勝を飾り、その後も数々の偉業を成し遂げてきた日本ポーカー界のレジェンド。実は、株式投資のかなりの腕前のようだ。今回はそんな木原さんに、ポーカーの腕を磨く方法や、株式投資のスタイルなどを聞いた!
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日本人で初めてポーカーの世界タイトルを獲得!
年に2カ月ほど米国で出稼ぎして、1年間の収入を稼ぐ!

木原直哉さん木原直哉さん●プロポーカープレイヤー。東京大学理学部卒後、ポーカープロに。2012年の第42回世界ポーカー選手権大会(WSOP)で、日本人として初優勝をはたす。優勝賞金の約51万ドル(当時のレートで約4000万円)を獲得した。さらに2022年の第53回WSOPでは3つのイベントでファイナルテーブルに進出(3位、5位、3位)するなど、日本ポーカー界のレジェンド。

──ポーカーの世界大会でタイトルを取られたそうですね。

木原 毎年5~7月に米国のラスベガスで行われている「ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー」(WSOP)という世界最大のポーカートーナメントがあります。その2012年の大会で、サイドイベントの一つに優勝し、賞金約51万2000ドル(当時の為替レートで約4000万円)を獲得しました。WSOPの世界タイトルを手にした日本人は、僕が初めてです。

──ポーカーを始めてから、たった5年での快挙だったとか。

木原 東大を休学中だった2007年のゴールデンウイークに始めたので、5年ちょっとですね。

──そもそも、なぜ始めようと?

木原 友人に教わって、とても面白いと思って始めました。最初は少し負けましたが、やっていくうちに少しずつ稼げるようになった。バックギャモンの世界選手権後にカンヌに行ったとき、ポーカーのキャッシュゲームが現地のカジノで行われていて、安いレートでやってみたところ想像以上に勝てて、そこから少しずつのめり込むようになりました。

──麻雀もバックギャモンもプロ級だったとか。なぜ、ポーカーのプロに?

木原 麻雀は今でこそMリーグ(トッププロだけが出場できる、麻雀のプロリーグ戦)ができて食える世界になってはいますが、当時の麻雀やバックギャモンは、事実上プロとして食べていくのがとても難しかった。

 一方で、ポーカーは市場がとても大きくて、食える世界であることを実感できた。それまで満遍なく時間を使っていたのですが、次第にポーカーに使う時間が増えていきました。

 また、まとまった休みに海外にポーカーを打ちに行く予定を立てると、それがまたモチベーションにつながる、という循環も良かったんです。

──ということは、基本的に海外で稼いでおられる?

木原 年に2カ月ほど米国に滞在し、カジノなどのキャッシュゲームで稼ぎながら、トーナメントに出場しています。2カ月の“出稼ぎ”で1年間の収入を稼ぐという感じですね。

──稼ぎのメインは、トーナメントではなく、平場(キャッシュゲーム)ということなんですか?

木原 そうならざるを得ないですね。というのは、数千人規模のトーナメントでも、賞金の半分は9人だけが参加できるファイナルテーブルに分配される。そのため、とても資金の分散が大きく、世界トップクラスの実力があっても、数十回参加したくらいでは、収支はマイナスになる可能性が高い。それでもトーナメントに出場するのは優勝したときの名誉が大きいからです。

──トーナメントへの出場だけでは、食えないということですね。

木原 ええ。ポーカープロたちの主戦場はキャッシュゲームなんです。

──つまりキャッシュゲームなら、勝てる確率が圧倒的に高まると。

木原 強い人なら、しっかりと勝てるレートで打てば一週間単位で負けることはとても少なく、一カ月単位ではほぼ負けません。もちろん高いレートはレベルも跳ね上がるので、その見極めが大切にはなりますが。

──どうすれば、強くなれるのでしょうか?

木原 なにより、たくさんゲームをプレイして経験を積むのが大切です。それに加えて、今からポーカーで強くなりたいのなら、メジャーなゲームであれば、AI(人工知能)が利用可能なので、それを使って勉強することが、近道になると思います。

──レートを上げると、勝てる確率はかなり下がるのですか?

木原 一つレートを上げるだけでまったく違うレベルになります。テーブル全体のレベルが跳ね上がるだけじゃなく、遊びでやっている人の割合も減ります。プロと一言で言っても、その中でとても大きな実力差があるので、弱いプロが食われる場になったりします。

 一方で、堅実に勝てるレートを選べば、長期的には負けようがない「時給仕事」になります。ただその場合、レートが低いので、資金を有効に活用できないという側面もある。

株式投資は株主優待狙いからスタート!
機関投資家が取引しない中小型のバリュー株を狙う!

──ところで、木原さんは株式投資もしているそうですね。始めたきっかけを教えてください。

木原 もともと、株主優待狙いの株は、いくつか持っていたんです。本格的に投資を始めたきっかけは、持っていた銘柄の1つが海外の投資ファンドに乗っ取られそうになり、ホワイトナイトの救済によって株価が大きく上がったことですね。インパクトのある材料が出ると、株ってこんなにも値上がりするんだと思って、がぜん興味が湧きました。

木原さん

──どんな投資スタンスで取引を行っているのですか?

木原 中小型のバリュー株(割安株)を買って、3カ月から年単位で保有するのが基本ですね。3年保有している銘柄も2つあります。結果的に短期売買になることもあるし、短期の意識で売買することもありますが、その比率は低いです。

──なぜ、中小型株に投資を?

木原 時価総額が数十億から数百億円程度の中小型株は、機関投資家が買うには小さすぎる銘柄なんです。機関投資家などの強いプレイヤーがいないので、値が大きく動いて「やられる」心配は少ないですからね。

 そんな中小型株の中から好決算につながる材料を持った銘柄を発掘し、決算をまたいで売り買いする戦略を取っています。

──ぜひ、いくつか具体例を教えてください。

木原 昨年儲かった銘柄の一つに、日本色材工業研究所(4920)があります。昨年1月にコロナが5類になるというニュースが出て、それによって恩恵が受ける銘柄は何かと考え、「口紅」じゃないかと考えたのです。外出はできる状況でしたので、化粧品全体としてのインパクトは小さいでしょうが、口紅は大きいだろうと。

 そこで、口紅をメインで作っている銘柄を探したのですが、いろんな化粧品を作っている会社しか見当たりませんでした。しかし、その過程で、口紅の原料をたくさん作っている小型銘柄を発見した。それが日本色材工業研究所だったのです。

  2023年1月末から仕込み、一時期少し下がりましたが、“脱マスク”銘柄として話題になり急騰したので売ったんです。ですが、株価が調整したので買い直し、4月の決算発表で上がったところで売った。その後も株価が下がったところで買って、7月の決算に向けて上昇したときにぜんぶ売りました。何度か売買しましたが、その後は決算短信を読んでも、株価が上がるイメージが湧かなかったので売買していません。

公表データの確認で決算を先読みできる!
本業のポーカーを軸にしつつ、資金効率の良い株式投資は続行!

──まさに、先読みの勝利ですね。

木原 ええ。もう一つ、決算の先読みで売買したのがトラスト(3347)です。この会社は、営業利益の約75%をレンタカー事業、約25%を中古車の輸出事業で稼いでいます。しかし、当期利益を見るとレンタカー事業の割合が約60%、中古車の輸出事業が約40%です。レンタカー事業は安定した収益をあげていたので、中古車の輸出事業の動向が決算のカギになります。

 トラストは2022年の年末から、業績が悪化して株価も急落しました。その理由は、輸出先としてかなりの割合を占めていたバングラデシュが、輸入規制を行ったから。それを知った後、日本からバングラデシュへの中古車の輸出台数を掲載しているサイトを見つけたんです。

 2023年2月までは輸出台数は地を這っていました。3~9月は持ち直しましたが、例年より少ない台数でした。それが10月に入り、輸出台数が跳ね上がったのです。その台数が11~12月も維持されれば、2月の本決算で大幅な増収増益を発表すると思い、ゆっくり仕込むつもりだった。ただ、大きな資金を持った人が買ったようで、それが影響してある程度の数量しか買えなかった。その後、株価は高値をつけます。

 ところが、年末に11月の輸出台数が発表されると、9月までの数量とほぼ同じ台数で期待外れだった。そこで一気に売却しました。想定と違うデータが出て、決算まで持たずに売却にしましたが、それでもある程度利益をあげることができました。

──目の付けどころが、さすがです。かなり儲けているようですが、株式投資は続けていく予定ですか?

木原 本業はポーカーですが、ポーカーは確実に稼げるレートでは資金を有効活用できない。株式投資は資金が増えても対戦相手が強くなるということがなく、資金効率が良いので、株式投資は続けるつもりです。

──最後に、ポーカーや株式投資をするうえで、木原さんが心掛けていることを教えてください。

木原 負けたときに「ああしておけばよかった」と考えてしまうことが多いのは、ポーカーも株式投資も同じだと思います。ただ、それは結果論で、間違えた反省なのです。

 正しいプレイをして、それが裏目に出ることもあれば、間違えたプレイをしてそれが正当化されることもあります。そこがポーカーや株式投資に共通する難しいところです。結果を見ると過去の判断への評価に影響を与えてしまう。でも未来が分からない前提で、どうプレイするかが大切なのです。

 また、考えても答えが絶対に出ないことを考えるのは時間と思考リソースの無駄です。その時間と思考リソースは、考えたり調べたりしたら答えが出ることに対して使うという意識を持ち続けることが大切です。

 今考えていることは調べたら分かることなのか、調べても絶対に分からない事なのか。その判断を常にしていくことが大切だと思います。
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