8月の株式市場は、多くの個人投資家にとって厳しい環境になっています。8月9日の日経平均株価は前日比257.30円安の1万9738.71円と大幅続落し、ついに、それまで狭いレンジでの値動きに留まっていたボックス相場から、下放れてしまいました。8月15日前場の時点では1万9789.13円まで持ち直しているものの、前日14日には一時1万9486.48円まで下落する場面がありました。
一方、8月4日時点の信用買い残は、前週比270億円減の2兆6368億円と、金額ベースで9週ぶりに減少しました。また、信用評価損益率は4日時点でマイナス9.20%と、前週の7.87%から悪化しました。悪化は2週連続のことです。上値の重さを嫌気した個人投資家が買い建玉の整理売りを始めたようです。そして、おそらく、10日時点の信用評価損益率は一段と悪化していることでしょう。このため、信用買い方の見切り売り需要は一段と強まってしまったと考えます。
米国と北朝鮮の軍事衝突リスクで主力株も続落、
警戒が和らいでも市場は一喜一憂の見通し
8月9日以降、東証1部の主力株も崩れてしまった主因は、やはり、米国と北朝鮮との軍事衝突リスクの高まりです。10日に、北朝鮮が日本上空を通過させて米領グアムに弾道ミサイルを発射すると予告したことを受けて、トランプ米大統領は11日朝、「軍事的な解決策は完全に準備ができている」とツイッターに投稿するなど、両国の緊張が高まりました。また、一部週刊誌は、『[スクープ!]トランプ米大統領が安倍に通告「9月9日、北朝鮮をアメリカは空爆する」』と題した記事を掲載しました。
このような状況を受け、外国為替市場では安全資産の円や、米国債や金(ゴールド)が買われています。一方、それまで堅調だったNYダウも、8月10日は前日比204.69ドル安の2万1844.01ドルと、3日続落しました。7日までダウは9日連続で過去最高値を更新しましたが、さすがにここ最近のリスクオフのムードが強まりを受け、米国株式にも売り圧力が強まったのでしょう。
また、8月10日のナスダック総合株価指数は大幅に続落し、前日比135.460ポイント(2.1%)安の6216.872ポイントでした。アップル、アマゾン、フェイスブック、アルファベット(旧グーグル)など主力のIT関連株が大きく下げたことが響きました。米国のIT関連株の下落は、わが国のIT関連株の下落に直結し、同時に、日経平均株価を力強く押し下げます。
ただし、8月13日、ポンペオCIA長官やマクマスター米大統領補佐官が米朝は戦争間際にあるとの見方を否定しました。また、ティラーソン米国務長官とマティス米国防長官は連名で、「北朝鮮に外交及び経済的な圧力をかけ、不可逆的な朝鮮半島の非核化と弾道ミサイル開発計画の解体を目指している」との認識を、14日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿しました。
このように、米政府高官から外交による解決を目指す発言が相次いだことで、北朝鮮問題への警戒が和らぎ、IT関連が買い戻され、8月14日のナスダック総合株価指数は大幅続伸しています。これはこれで明るい兆しです。それでも、米朝軍事衝突リスクがゼロになったわけではないので、今後も、朝鮮半島の地政学リスクに関するニュースフローに、市場は一喜一憂する見通しです。
日経平均株価は下値不安の強い状況が続き、
東証マザーズ指数は短期・中期の下落トレンドに
なお、テクニカル的には、日経平均株価は25日移動平均線(8月14日時点1万9993.53円)を下回っている限り、調整局面が続き、下値不安の強い状況が続く見通しです。信用取引の買い方は戻れば売りたいし、逆に、追証との絡みもあって下げが加速するようなら売らざるを得ない状況に追い込まれるでしょう。日経平均株価が25日移動平均線を上回るまでは、買い方の不安は払拭されることはなさそうです。それでも下値では日銀やGPIFの買いが見込めるため、日経平均株価の下値は最大でも52週移動平均線(14日時点1万8755.90円)程度とみています。
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つまり、主力の東証1部の大型株に関しては、短期的な調整局面ですが、中期的には上昇トレンドが継続しているとみています。しかしながら、足元では、新興市場を中心に小型材料株の下落に拍車が掛かっているので、小型株市場をメインにして、且つ、損切りできていない個人投資家は、既に、追証発生の負の連鎖に、巻き込まれています。
例えば、8月14日の東証マザーズ指数は前週末10日終値比10.84ポイント(1.01%)安の1067.35ポイントと、3日続落しました。テクニカル的には、5日移動平均線(14日時点1092.63ポイント)、25日移動平均線(同1150.46ポイント)、75日移動平均線(同1123.99ポイント)全て下回っています。私は、東証マザーズ指数には、短期・中期の下落トレンドが既に発生していると認識しています。
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イナゴタワー倒壊でイナゴ銘柄は底なし沼へ
安易な押し目買いをせず、「セリクラ」を待て!
現在、新興市場を中心に、いたるところで、「イナゴタワー(イナゴによる回転売買の結果描かれる、タワーのようなチャート)」が倒壊しています。多くのイナゴ銘柄は、思惑・好需給だけを材料に、バリュエーションを無視して買い上げられて、実態以上に高い株価が実現しました。しかしながら、これらのイナゴ好みの銘柄群は、ひとたび人気が離散すると、目も当てられないナイアガラが発生することが常です。バリュエーションを無視した株価が形成されたのですから、当然の帰結ではあります。
以前当コラムで指摘しましたが、多くのイナゴタワーは、底なしの沼の上に建設されているようなものなのです。そして、タワーが崩壊すると、住民のイナゴは一気に沼に叩き落されます。当然、泳げないイナゴ達は底なし沼に落ちて、溺死するしかありません。
よって、現状の新興市場の惨状をから判断して、兜町にはイナゴの溺死体が無数打ち上げられているはずです。そして、この溺死体の処理にはそれなりの時間が必要と考えます。このため、ここ最近にタワーが形成された銘柄については、戻り売り圧力が相当強いと判断されるため、安易な押し目買いは控えるべきなのです。
ただし、投資家心理が好転し、市場がリスクオンムードになったら話は別です。それまでさんざん売り叩かれた新興市場などの小型材料株は急反発するはずです。今はそのタイミングを待ちましょう。その急反発の直前には、信用取引を行う個人投資家による「セリングクライマックス(セリクラ)」が高い確率で発生するでしょう。
「下がるから売る、売るから下がる」という負の循環の最終局面は、毎度毎度のことですが、信用取引の買い方の追証絡みの投げ売りと、バーゲンハンターの買いが激しくぶつかるのが「セリングクライマックス」です。よって、セリクラが実現するまでは、新興市場を中心とした小型材料株に近づいてはいけません。なお、セリクラは、「上がるから買う、買うから上がる」という正の循環の起点でもあります。
以上のことから、当面の小型材料株については、「安易な押し目買いを控え、虎視眈々とセリクラを狙う!」という戦略をお勧めします。
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