ソフトバンクグループ(9984)が、年内にも傘下の携帯事業会社「ソフトバンク」を東証1部に年内に上場させる方針を固めたとの報道が1月15日付日本経済新聞で大々的に報じられました。翌日のソフトバンク株は上昇しマーケットからは一応「歓迎」された格好ですが、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は、この子会社売り出しには「ちょっと問題がある」と解説しています。
携帯事業会社の上場は間違いなく
グループ本体の価値を減少させる
報道によるとソフトバンクは、携帯事業会社の3割を2兆円で投資家に売り出す計画とされています。ということは、ソフトバンクは携帯事業会社の時価総額を6.7兆円と見積もっていることになります。
2017年4-9月期の携帯事業会社の営業利益は4339億円で、ソフトバンク全体の営業利益(8748億円)の約半分を占めます。単純に携帯事業会社の年間営業利益を倍の8678億円とし税金等を3割控除すると、携帯事業会社の年間純利益は6000億円と想定できます。
つまり、ソフトバンクが見積もる携帯事業会社の時価総額は、年間純利益の約11倍程度ということです。ずいぶんと控えめな売出し価格であると言えるでしょう。さすがに2兆円ともなると、あまり強気の価格設定にはできないのかもしれません。
さて、携帯事業会社が上場すると、ソフトバンクは親子上場になります。ソフトバンクが携帯事業会社株の3割を2兆円で売り出すなら、これまで決算で全額取り込んでいた携帯事業会社のセグメント利益(事業部門別利益)が、今後ずっと3割減ることになります。
また、ソフトバンクのバランスシートは、これまで「営業資産」にあった携帯事業会社の2兆円が、株式売却代金として「現金」の項目に移動することになります。ソフトバンクにあっては携帯事業こそが「規制に守られた高収益事業」であり、ソフトバンクを収支と資金の両面から支えていたはずです。
携帯事業会社の上場は、間違いなく親会社ソフトバンク本体の企業価値を減少させることになります。報道は株式売却益として入る2兆円を「海外のIT企業への出資などに充てる」としていますが、携帯事業を凌ぐほどの「規制に守られた高収益事業」など簡単に見つかるはずがありません。
さらに、携帯事業会社が上場するときには当然ながら、その経営はソフトバンクから独立していなければなりません。親会社が7割を保有しながら経営が独立するはずがありません。そもそも親会社が65%以上を保有する連結子会社は、東証1部に上場できない規定になっているはず。どこかにこれをクリアする抜け道があるのでしょうか!?
米国ではメディアと通信の大再編、
ソフトバンクはどう絡む!?
ソフトバンクは2017年9月末現在で約14兆円の有利子負債を抱え、2017年3月期には年間4600億円もの利息を支払っていました。このままでは新たな投資資金が捻出できず、サウジアラビアなどと共同で発足させた「10兆円ファンド」や今回の携帯事業会社の上場話が出てきたものと思われます。
しかし「新たな投資資金」を捻出するために、これまでさんざん儲けた携帯事業会社を“切り売り”しようと決断したのであれば、ビジネスの優先順位を間違えていると感じます。
米国では、携帯電話を始めとする「通信インフラ企業」と放送や映画などの「コンテンツ企業」、それにフェイスブックやグーグルなどの「プラットフォーム企業」が業種の垣根を飛び越えたダイナミックな合従連衡で、新たなビジネス市場が開拓されようとしています。
今、ソフトバンクが最も高く売れるのは、米通信インフラ会社の「スプリント」であり、投資資金が必要ならばこちらを手放すべきでしょう。もし、スプリントを売らずに活用するのであれば、ソニーが持て余している「ソニー・ピクチャーズ」を買収して、通信・コンテンツ・プラットフォームの大再編に参画すべきです。
いま米国で起きている「通信・コンテンツ・プラットフォームの大再編」は世界のメディアビジネスにパラダイムシフトを起こすもので、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』でもたびたび取り上げています。ソフトバンクはこれにメインプレイヤーとして絡める数少ない日本企業であり、孫社長が傍観者でいるはずがありません。携帯事業会社の上場とその後の展開も含め、注目したいところです。
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