【今回のまとめ】
1.欧州財務省に相当する機関が存在しないのは、米国独立戦争当時と同じ
2.中央政府による債務肩代わりは、結束の強さを試すことになる
3.小さい政府 vs. 大きい政府は古典的な争点
4.ドイツ人は“怠け者”以上に“無秩序”を嫌う
“財政統合の父”アレキサンダー・ハミルトン
“国家債務は、それが大きすぎない限り天からの贈り物なのである。なぜならそれは連邦政府の結束を強固にする役割を果たすからだ。”
~A national debt, if it's not excessive, will be a national blessing. It will be a powerful cement of our union.~
これは米国の初代財務長官、アレキサンダー・ハミルトンの言葉です。ハミルトンは米国財務省を創設した人であり、米国財務省証券を考案した人でもあります。
現在の欧州は、独立戦争後のアメリカ合衆国の置かれた政治・経済の状況と酷似しています。なぜなら現在の欧州はリスボン条約(EU憲法)の下に統合を進めていますが、財務省は存在せず、財政面での統合が出来ていないからです。
そこで今回は、独立戦争後の米国が破産状態からいかに脱却したかの歴史を振り返ることを通じて、ユーロ問題を考えてみたいと思います。
米国が独立戦争に勝利した後、各州は借金まみれに
米国はもともと英国に支配される13の植民地から成っていました。しかし植民地に対する課税への反発から米国独立戦争が起こります。13植民地は1776年7月4日に、いわゆる米国独立宣言を出します。その後の独立戦争は、結局、13植民地側の勝利に終わります。
しかし戦費がかさみ、経済が疲弊したため、それぞれの植民地(=州政府)は戦債発行で調達したお金を返せなくなりました。州経済は破綻同然で、軍人さんへの給与の支払いすらできなくなりました。
債務の一本化が、1つにまとまる求心力に
当時の米国政府は、言わば「革命政府」なわけですから、それまでにこしらえた借金を全部踏み倒すことも出来たと思います。しかし借金の踏み倒しが起これば、無秩序状態を誘発し、これまで団結して英国を追い出そうとしてきた13州は、今度はお互いに反目し合うリスクがありました。
ハミルトンはそのような無秩序状態を嫌うと同時に、信用こそが国家の基礎という信念を持っていました。いまデフォルトすると、商船の船主、資本家、旧家の紳士などの、お金を貸してくれた投資家は二度と米国を信用しないだろうと考えたのです。
そしてハミルトンは、13州がこしらえた山のような借金を、むしろチャンスだと捉えました。なぜなら債務を一本化することが連邦国家として1つにまとまる求心力になると考えたからです。
そこでハミルトンは、アサンプション(債務肩代わり)という概念を打ちだします。具体的には米国政府がどんどん州政府の借金を肩代わりし、その資金調達のために連邦政府としての国債、つまり現在で言う米国財務省証券を発行したのです。これは13の州がひとつになって借金した方が債券の信用力が増すという、考えてみれば当たり前の理屈を当てはめたに過ぎません。
結局、米国政府が肩代わりした借金は1835年までには完済されました。
これを現在のヨーロッパに置き換えると、さしずめユーロボンド(欧州共同債)の発行がこれに相当します。
財務省の設置で連邦政府が財政を握る
ハミルトンが登場するまで、米国には財務省というものが存在しませんでした。財政権は13の州がそれぞれ持っていたのです。連邦政府には国家予算を策定し税金を取り立てるシステムが確立していなかったのです。
ハミルトンは1789年に組織法(オーガニック・アクト)を立法化し、財務省を設置します。これによって財政権、徴税権の大部分はそれまでの州レベルから連邦政府レベルへと移っていったわけです。
「小さな政府 vs. 大きな政府」の議論はいまの欧州と同じ
ハミルトンのこの構想には大きな反対がありました。なぜなら米国には昔から「小さい事はいいことだ」という価値観があり、彼らは大きくて中央集権的な政府に疑いの目を向けていたからです。(なおここでの「小さな政府」とは国家予算の大小ではなく、地域密着型か、それとも連邦政府か、という文脈です。)
小さな政府を主唱した代表的な政治家がトーマス・ジェファーソンです。ジェファーソンはバージニア州の裕福な農園主の息子であり、農業こそ経済の根幹を成すという価値観を持っていました。
これに対してハミルトンは工業、商業、自由貿易などが今後の経済の中心となると考えました。それらが栄えるためには州際的な取引をどんどん促進し、大きな政府を持つことが良いという価値観だったのです。当時大きな政府を支持する人々はフェデラリスト(連邦主義者)と呼ばれました。
今のヨーロッパでもこれと同様の意見対立があります。つまり国家単位でのアイデンティティや文化を重視する人々と、ヨーロッパ経済圏全体としての利害を考える人々との対立です。
ドイツ人がいちばん嫌うこと、それは「無秩序状態」だ
そこで再び、ヨーロッパはひとつになるべきか? という問題に戻ると、米国の13州の例とは違い、ヨーロッパの場合、歴史的、文化的な違いが大きいので、その面からは統合は難しいと言わざるを得ません。
その反面、ヨーロッパ各国の経済活動を見た場合、世界経済そのものが急速にグローバル化する中で、いままで通り、ギリシャはギリシャだけ、ドイツはドイツだけで経済運営するというのはいささか夢想的な考え方です。仮にBMWが自国市場だけでしか活動できなくなると、売上高の85%が失われるのです。
いまギリシャにユーロ脱退を許すと、ギリシャの銀行は預金の引き出しで大混乱に陥るでしょう。それはスペインにも飛び火する危険性があります。欧州のメガバンクはグローバルに事業展開しているため、危機が起きた場合、それに巻き込まれるリスクがあります。
さらに、ギリシャのユーロ脱退が起きればEU(欧州連合)というコンセプト自体の信用がガタ落ちになり、今後の経済同盟のロードマップを描くことが困難になります。ヨーロッパ域内での政治的対立のテンションも高くなるでしょう。
ドイツはこれまで経済的にはEU、軍事的にはNATO(北大西洋条約機構)という枠組みがあったおかげで、他国からその野心を詮索されることなく経済成長に専念することが出来ました。これはちょうど日本がその憲法の中にハッキリと戦争反対を謳ったことで世界から信用されたのと似ています。
もし経済同盟のロードマップが混とんとすれば、ドイツに対する世界の警戒心も高まらざるをえないのです。
なるほどドイツ人は怠け者が嫌いです。でもそれ以上にドイツ人は無秩序や信用を失う事を嫌っていると思います。そのへんをバランスよく考慮に入れなければ、今回の欧州危機問題でのドイツの立ち回り方を見誤ることになるのではないでしょうか?
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