良好な6月の米雇用統計を受け、大幅な利下げ期待が後退しました。これが米国株の上値抑制要因となる一方で、日米金利差拡大期待から円高が一服し、日経平均株価の下支え要因となっています。
7月5日発表の6月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が前月比22.4万人増でした。増加幅は前月の7.2万人から急回復し、市場予測の16万人も上回りました。また、平均時給は27.90ドルと前年同月比3.1%増加し、11カ月連続で3%台の伸びを保ちました。
このため、市場では、FRBが7月のFOMCで0.50%の大幅な利下げに踏み切るとの期待が後退しました。7月3日に一時1.94%と2016年11月以来ほぼ2年8カ月ぶりの水準まで低下していた米国10年物の国債利回りですが、8日には2.04%まで上昇しました。
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また、日米金利差拡大の見方からドル買い圧力が強まり、7月8日のNY外国為替市場では、一時1ドル=108円81銭と5月末以来ほぼ1カ月ぶりの円安・ドル高水準をつける場面がありました。
イランが「ウラン濃縮度の上限超過」を発表したことで、
ドル安・円高リスクが高まる!
ところで、イランが7月8日、ウラン濃縮度が2015年の核合意で定めた上限を超過したと発表しました。そしてイランは、欧州など他の合意当事国との協議に進展がなければ、60日後に核合意履行停止の第3弾となる追加措置を取るとしています。これを受け、ペンス米副大統領は8日、「米国の自制を決意の欠如と取り違えてはならない。米軍は、地域の米国の権益や米国民を守るための準備を整えている」と述べ、軍事的対応を示唆して警告したということです。
このように、米国とイランの威嚇の応酬が激化しており、中東の地政学リスクが一段と高まっています。
このため、世界的な投資家がリスクオフとなり、リスク資産の株式が売られ、安全資産の米国国債が買われる可能性が高まります。そうなると、米長期金利低下を背景に、外国為替市場で、ドル安・円高圧力が強まることでしょう。結果、安全通貨の円が対ドルで上昇し、我が国の輸出企業が収益悪化懸念で売られ、日経平均下落も下落するという負の循環に陥る可能性が高まります。要警戒です。
ETFの分配金供出にともなう売りは一段落するものの、
海外投資家の“日本株売り”がネガティブ要因に
需給面では、パッシブ型ETFの決算日における分配金拠出にともなう売りは、まず一つ目の山である7月8日を無事に通過しました。最後の山となる10日の現物・先物合計(推計)約3000億円を吸収すれば、ETF絡みの特殊な売り需要は消滅します。その意味では、需給の最悪期は10日で終了し、11日以降の需給は平常化(改善)する見通しです。
しかしながら、そのまま素直に上がるかと言えば、微妙です。というのは、海外投資家の日本株売りが継続しているからです。
6月第4週(24~28日)、海外投資家の日経平均先物とTOPIX先物を合算した売り越し額は1256億円でした。現物株との合算では1261億円の売り越しとなりました。このように、トレンドフォロー系の投資を好むとされる海外勢の売りスタンスに変化が出ない限り、日経平均株価の順調な上昇は期待薄です。
東証1部・新興市場ともに売買の少ない“閑散相場”なので、
今は保有株を売るべきタイミングではない?
また、市場エネルギーも低下しています。6月の東証1部の1日当たり売買代金は、前月比21%減の1兆9165億円と、2014年8月以来、4年10カ月ぶりの低水準でした。また、新興市場の1日当たりの売買代金は1352億円と、2016年11月以来2年7カ月ぶりの低水準でした。国内外の機関投資家が積極的な売買を手控え、個人投資家も様子見姿勢を崩さないため、閑散相場となっているのでしょう。
なお、現状に関しては、「閑散に売りなし」という相場格言を想起するべきです。多くの銘柄の株価が下がり、底値横這い状態が続いて出来高が少なくなっていると、一般的に投資家は、評価損を抱えたまま保有することに嫌気をさすものです。そして、「もうどうでもいいから売りたい」という衝動にかられがちです。しかしながら、そのような状況は、すでに売りが出尽くしている可能性も高いため、そのような閑散局面では、保有株を売るべきタイミングではないのです。
ただし、日経平均株価が25日移動平均線を割り込んだら、仮に閑散相場が続いていたとしても、いったん株式市場から撤収することはありだと思います。
おそらく、今後、日経平均株価が25日移動平均線を割るケースは、急激な円高進行か、米国株の強烈な調整がきっかけになるとみています。内部要因に日本株を押し上げる材料がほぼ皆無のため、買い方はETFを機械的に買う日銀と、一部の事業法人の自社株買いくらいしか見当たりません。
なお、政治面でも、7月21日投開票の参院選までは選挙一色となり、永田町発のポジティブ材料も出難いでしょう。
日経平均株価が24カ月移動平均線を突破するには、
1ドル=110円以上の円安が欲しい
テクニカル的には、4月24日の2万2362.92円から6月4日の2万289.64円までの下落幅2073.28円に対しての61.8%戻しとなる2万1570.93円は、すでに7月2日の2万1784.22円までの上昇で達成済みです。このため、順当なら次は全値戻しの2万2362.92円です。
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しかし、現在は24カ月移動平均線(6月28日現在2万1764.57円)が強力に抵抗中です。よって、今後、終値で24カ月移動平均線を安定的に超えない限り、2万2362.92円付近までの上昇は夢のまた夢だと思います。
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また、ドル建て日経平均株価の高値は一応200ドルがメドであり、円建て日経平均株価の2万2000円回復にはやはり、1ドル=110円付近の円安の実現が欲しいところです。
短期売買を好む個人投資家は惨憺たる状況なので、
「ハイボラで業績悪の小型株」には手を出さないのが正解
最後に、市場関係者へのヒアリングベースによる、短期売買を好む専業、及び兼業の個人投資家の状況ですが、やはり、よくないようです。
昨年10月以降、現在まで儲けることができていない個人投資家が多く、市場から退場した、もしくは退場の瀬戸際に立たされている人も多数いるもようです。特に、新興市場や、仕手系材料株を信用取引で弄ることが好きな個人投資家ほど、苦戦を強いられているようです。
このため、当面は、彼らが好むような「ハイボラ(価格変動の大きい)で業績の悪いの小型株」は避けて、「低ボラ(価格変動の小さい)で好業績の大型株」をメインに売り買いするべきでしょう。
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