お盆休みなどで市場参加者が減少し、株式市場の売買が減少して相場があまり動かなくなることを、「夏枯れ相場」と呼びます。しかしながら、東京株式市場は、7月上旬から、すでに「夏枯れ」です。
東証1部の売買代金は、7月12日まで、活況の目安となる2兆円を9営業日連続で下回りました。これは2016年10月以来、約3年ぶりの長期閑散商状です。内外の投資家にとって、日本株への関心が薄まっていることが主因でしょう。
「FOMCでの利下げ観測」や「中国の輸出入の原則」が
日経平均株価の上昇を抑制
日本株への関心が薄まっている背景は、先高観が乏しいからです。先高観が盛り上がらない理由は、円相場の対ドルでの高止まりと、中国景気が浮揚してこないことだとみています。
足元の円相場に関しては、7月末のFOMCでFRBが利下げするとの観測で、日米金利差が縮小し、円買い・ドル売りが優勢です。実際、パウエルFRB議長は7月10~11日の議会証言で、早期の利下げに前向きな姿勢を示しています。これは、我が国輸出関連企業にとってはネガティブです。
一方、中国の2019年6月の貿易統計で、米ドル建ての輸出は前年同月比1.3%減と、5月の1.1%増(速報値)から減少に転じました、輸入は同7.3%減でした。また、中国の2019年4~6月期のGDP(速報値)は、実質で前年同期比6.2%増と、伸び率は今年1~3月期と比べ0.2ポイント低下し、2期ぶりに減速となりました。
このような状況を反映して、日本の6月の工作機械受注額(速報値)は、前年同月比38.0%減の988億円と、好不況の目安とされる1000億円を2016年10月以来、32カ月ぶりに下回り、マイナス幅も5月の同27.3%から拡大しました。これは米中貿易戦争の激化・長期化の悪影響です。これは当然、日本の設備投資関連株にとって逆風です。
好調な米国株のおかげで日本株の先安観は弱いものの、
日経平均VIの上昇には注意!
このように、日経平均株価の上値抑制要因は複数あります。しかしながら、先安観は強まっていません。これは米国株が史上最高値圏で推移していることが主因です。
実際、7月12日の日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は前日比0.38(2.81%)安の13.12でした。日経平均VIは20を超えると、投資家の不安心理が高まっていると解釈されます。これが20を大幅に下回っている現状は、投資家は先行きに下値不安をほぼ抱いていないとみてよいのです。
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ただし、日経平均VIがひとたび上昇傾向を示してくると、ボラティリティーの上昇に連動して機械的な株売りを出す「リスク・パリティ」と呼ばれるファンドの売りが断続的に出て、「ボラ上昇・株式相場急落」という負の連鎖が発生します。
よって、これからは、米国株式市場のボラティリティーを示すVIX指数および日経平均VIの動向により注意を払っておく必要があります。
投資戦略的には、「VIX指数(日経平均VI)が低位安定している間は、日米株式市場共に強気を維持する。逆に、上昇に転じる気配を察したら、即座に弱気に転じ、日米株式市場から撤収・現金化、または腕に覚えがあるならば、先物ショートや個別銘柄の空売りを積極的に行う」ということになります。
テクニカル的には、24カ月移動平均線が
日経平均株価の強力な上値抵抗線に
7月12日時点の日経平均株価のPBRは1.08倍です。12日の日経平均株価の終値は2万1685.90円ですから、PBR が1倍になるは2万79.54円です。基本的には、このPBR1倍の水準が、急落が起きたときにバリュエーション面での下値メドになるでしょう。
一方、当面の上値メドですが、ドル建て日経平均株価の200ドルです。よって、米株がどれだけ強くても、1ドル=110円台の円安にならない限り、日経平均株価は2万2000円を超えることは難しいとみています。
テクニカル的には4月24日の2万2362.92円から6月4日の2万289.64円までの下落幅2073.28円に対する61.8%戻し(2万1570.93円)はすでに達成済みのため、次のターゲットは全値戻しです。
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しかしながら足元では、24カ月移動平均線(7月12日現在2万1837.93円)が強力に抵抗中です。よって、今後、終値で24カ月移動平均線を安定的に超えない限り、2万2362.92円付近までの上昇は期待薄との見方は不変です。
そうこう考えると、今後数カ月間の日経平均株価は、ザックリ2万1000円±1000円のボックス相場を継続するのかもしれません。もしそうなったら、先高観も先安観も乏しい、非常に退屈な相場が続くでしょう。
当然、そんな「横ばいトレンド」の株式市場は魅力が乏しいので、市場参加者は減少した状況が続き、特に、海外投資家の日本株への関心は一段と薄まることでしょう。結果として、東証1部の売買代金の低迷、「閑散相場」は長期化する見通しです。
東証マザーズ指数が1000ポイントを超えるまで、
「小型材料株」より「好業績な大型株」か「米国株」がおすすめ
それにしても深刻なのは、新興市場を中心にした小型材料株の低迷です。7月12日の日経平均株価は前日比42.37円(0.20%)高の2万1685.90円と堅調だったのに、東証マザーズ指数は同20.04(2.18%)安の897.30ポイントと大幅安でした。
この日は、3連休を控え、ポジション調整売りが加速しました。また、リミックスポイント(3825)の子会社で仮想通貨交換業を営む株式会社ビットポイントジャパンの仮想通貨交換所における仮想通貨の不正な流出が判明したことで、仮想通貨関連が売られたことも響きました。
正直、東証マザーズ指数が1000ポイントを割れている状況は、信用取引を活用し短期売買を好む「アクティブ個人」にとっては、「氷河期」です。そして、このような厳しい環境に耐えられず、専業トレーダーの退場が相次いでいるとの噂も聞いています。だから、当面は「新興市場を中心とした小型材料株」は避けて、「好調な米国株」か「好業績の日本の大型株」を売り買いするべきなのです。
もし、どうしてもハイボラの新興銘柄や小型材料株を弄りたいのなら、資金管理とロスカットを通常時よりも厳格化しましょう。具体的には、通常モードよりもロットを落としまし、ロスカットも早目早目を心掛けましょう。
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