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12月8日の地震で「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されたが
サプライチェーン網の混乱などはなく、日本経済への影響は限定的
12月8日の23時15分頃に青森県東方沖で発生した地震により、北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、岩手県に対する津波警報が発表されました。そして、今回の地震の規模が条件を満たしたため、気象庁は9日午前2時に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。これは日本海溝・千鳥海溝像の領域でマグニチュード7.0以上の地震が発生した際、その影響で新たに発生する可能性のある大規模地震への警戒を呼びかけるもので、発表されたのは2022年12月の制度運用開始後、初めてのことです。
この注意情報は、今後1週間のうちに大規模地震が発生する可能性が平常時の約0.1%から約1%に高まっているとして注意喚起しています。発生の可能性が約1%のため“空振り”に終わる可能性が高いものの、今後1週間は大きな地震の発生を警戒しておく必要があります。
ただ、2011年3月の東日本大震災後のサプライチェーン網の混乱や当時の円高進行を受けて、さまざまな企業が生産拠点の海外移転を実行しました。つまり、国内での巨大地震発生によるサプライチェーンの断絶に備えた企業のリスク管理はすでに実施済みであり、日本経済の巨大地震への耐性力は大幅に強化されていると考えていいでしょう。
11月の「景気ウオッチャー調査」は前月比で低下しており、
「景気は持ち直している」という政府コメントはやや楽観的
ところで、内閣府が12月8日に公表した11月の「景気ウオッチャー調査(街角景気)」を見ると、3か月前と比較した現状の景気を評価する「現状判断DI」は、前月と比べてで0.4ポイント低い48.7でした。これは7カ月ぶりの低下であり、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下しました。
一方、2~3カ月先の景気の先行きを予測する「先行き判断DI」は50.3でした。横ばいを意味する50は超えたものの、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが低下したことで、前月の数字を2.8ポイント下回りました。
この結果に対して内閣府は「景気は持ち直している。先行きについては、価格上昇の影響などを懸念しつつも、持ち直しが続くと見られる」とまとめました。ですが、今後顕在化するであろう日中関係悪化の日本経済への悪影響を考慮すると、内閣府の見解は“やや楽観的過ぎ”ではないかと私は見ています。
その一方で、政府は11月28日に「総合経済対策」の裏付けとなる2025年度補正予算案を閣議決定したこともあり、景気の腰折れは回避される見通しです。2 025年度補正予算案については、高市首相が規模にこだわった結果、一般会計の歳出は18.3兆円と昨年度の13.9兆をおよそ4兆円上回っています。
12月に日銀の利上げと米FRBの利下げが重なることで、
日米金利差が縮小して円安から円高へ反転する見通し
このような環境下、日銀は12月18〜19日に金融政策決定会合を開き、政策金利を0.75%に引き上げる見通しです。この利上げにより、日銀が1.0~2.5%と推計する「景気を冷やしも加熱もしない中立金利」の下限に近づくことになります。
なお、日銀の植田総裁は12月1日の講演で「内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向をさまざまなデータや情報をもとに点検・議論し、利上げの是非について適切に判断したい」と発言しています。このため、日銀は12月の会合以降も利上げ路線を維持する見通しです。
今回の利上げは、円安による輸入物価の上昇に歯止めをかけることが主目的と見られます。厚生労働省が12月8日発表した10月の毎月勤労統計調査では、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比で0.7%減少しました。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、10カ月連続の減少となっています。このため、日銀は物価上昇を抑制するべく利上げを実施し、個人消費を下支えする必要があるのです。
FRBが利下げするタイミングで日銀が利上げを行うことで、日米の金利差は縮小します。その結果、円キャリートレード(日本円の低金利を利用して資金を調達し、その資金を高金利の外国通貨に投資する手法)の巻き戻しが加速し、円安から円高に反転することが期待できます。
米ドル/円チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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また12月8日、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが1.97%に上昇しました。これは、2007年6月以来およそ18年半ぶりの高さです。
日本国債が売られて長期金利の上昇が続く背景には「日銀のターミナルレート(中央銀行による金融引き締めサイクルにおける最終的な政策金利水準のこと)が一体どのレベルで落ち着くのか」という点について、一段と不透明になっていることがあります。
また、高市政権の掲げる「責任ある積極財政」の下で財政弛緩や国債の需給悪化への懸念が強まっているため、タームプレミアム(長期債の利回りに含まれる投資家が要求する追加リターンのこと)が拡大していることも長期金利の上昇に影響しています。
たしかに、長期金利の上昇は株式市場の上値圧迫要因のひとつではあります。とりわけ住宅ローンに関しては、新たに固定型で借り入れたり、変動型から固定型に借り換える人には重い金利負担となり、消費低迷の一因となるからです。
ですが、以前に新発10年物国債利回りが1.97%だった2007年とは異なり、2025年の日本経済は「成長+インフレ」の好循環にあります。そのため「長期金利2%」は財政・金融の持続可能性を損なわず、むしろ低金利依存からの脱却を促すポジティブなシグナルと見るべきでしょう。だからこそ、最近のTOPIXは堅調に推移しているのです。よって、足元の長期金利の上昇に対して神経質になる必要はないと考えています。
TOPIXでは短期・中期の上昇トレンドが発生中だが、
グロース市場では中期の下落トレンドが続いているので要注意!
12月9日のTOPIXは、4日につけた過去最高値3400.28ポイントを若干下回っていますが、終値で前日比0.61ポイント(0.02%)高の3384.92ポイントと続伸しました。
テクニカル的には、5日移動平均線(9日時点で在3372.86ポイント)、25日移動平均線(同3332.37ポイント)、75日移動平均線(同3221.95ポイント)のすべてを上回っているため、短期・中期の上昇トレンドが発生中と認識しています。今後、TOPIXが25日移動平均線を下回り、かつ同線が下向きに転じるまでは、私は日本株に対して「強気」を維持します。
TOPIXチャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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ただし、12月9日の東証グロース市場250指数の終値は666.13ポイントと、5日移動平均線(9日現在666.38ポイント)、25日移動平均線(同689.82ポイント)、75日移動平均線(同731.99ポイント)のすべてを下回っています。よって、中期の下落トレンドが発生中との認識です。
東証グロース市場250指数チャート/日足・3カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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12月は例年、個人投資家の節税売り(損出し売り)が加速するため、グロース市場の需給が悪化しがちです。そのような状況下、今年は12月17日にSBI新生銀行(8303)がプライム市場にIPO(新規上場)します。
公開価格(1450円)をもとにした市場吸収金額(公募と売出の合計金額)は3219億円(オーバーアロットメントを除く)と、今年の国内IPO案件としはJX金属(5016)に次いで2番目の規模です。このため、SBI新生銀行の購入資金を捻出するための換金売りが個人から出てくる見通しです。こうなると、グロース市場の需給は年内受け渡し最終日の12月26日まで改善することは期待しにくいでしょう。
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結論として「日本経済の腰折れリスクは低く、日本株の急落リスクは低いでしょう。銘柄としては、金利上昇がメリットになる金融セクターやキャッシュリッチ企業を狙うべきです。そして、グロース市場に上場している銘柄は避け、プライム市場上場のバリュー・内需系大型株を選好するべき」ということになります。
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