オバマ大統領優勢は株式市場にとってマイナス?
さて、株式市場にとって大事なことは、オバマ大統領が勝ちそうになると、多分、市場はそれを嫌気するだろうということです。
これには2つの理由があります。
まず、歴史的にウォール街はお金持ちを優遇する政策に傾斜している共和党を支持する人が多いことが挙げられます。
またオバマ大統領が勝った場合、大統領は民主党で、議会は共和党という「ねじれ構造」が起こり、財政赤字削減などの問題において何も決まらなくなる危険性があるということです。
今年の年末には、いわゆる「財政の崖」という問題が起こります。これはブッシュ大統領の時代からずっと継続してきた諸々の景気支援のプログラムが2012年の年末で自動的に満了を迎えることを指します。
もちろん支出の削減は予算の健全性という見地からはよいことなのですが、余りに多くのテコ入れ策が年末に相次いで終了してしまうと、瞬間風速としてGDPが年率換算で2%以上落ち込むという見方もあり、これを回避するためには各景気支援プログラムの延長ができるかどうかがカギを握っています。
上に述べた「ねじれ構造」の下では、景気支援プログラムの延長は実現しにくくなります。
また、長期的には財政の健全化を図るには、所謂、福祉受給権制度の改革が必要となります。福祉受給権制度とは、日本でいう年金に相当する社会保障や医療保険制度などを指します。これらは政府の支出の実に3分の2を占めています。
具体的には、
・社会保障(Social security):公的な年金 2010年度の支出額6900億ドル
・メディケア(Medicare):高齢者向け医療保険 同5184億ドル
・メディケイド(Medicade):低所得者医療保険制度 同4054億ドル
・収入補助(Income maintenance): 同2645億ドル
・失業保険(Unemployment insurance) 同1395億ドル
などです。
共和党はミット・ロムニー候補が副大統領候補として下院財政委員長のポール・ライアン議員(ウィスコンシン州、共和党)を指名したとき、この問題を積極的に取り上げる姿勢を見せました。
しかしその後、ロムニー候補の支持率が低迷したことで、この議論はうやむやになりつつあります。
このまま本当に“うやむや”になった場合、格付け機関が米国の長期国債格付けを引き下げるリスクが高まるものと思われます。
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