「ESG」や「SDGs」とは何か? 2つの注目の投資テーマを解説すると同時に、アナリストが大人気のESG投資信託「未来の世界(ESG)」の組み入れ銘柄やリスクを分析!
発売中のダイヤモンド・ザイ6月号は、特集「【ESG投資信託】って買って大丈夫?」を掲載! いま、世界的に「ESG投資」がブームになっている。その影響で、2020年7月に設定されたグローバル株式型の投資信託「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)/愛称:未来の世界(ESG)」が爆発的に売れた。そこで、この特集では「そもそもESGとは何か?」を解説するとともに、「人気のESG投資信託は本当に買ってもいいのか?」という疑問についても検証している。
今回はこの特集から、ESGに投資するメリットや、同じく話題の「SDGs」について解説した記事を抜粋。さらに、「未来の世界(ESG)」の特徴や、アナリストなどのプロの分析コメントも紹介するので、ESG投資に興味がある人は、ぜひチェックを!
基本から復習!「ESG」と「SDGs」とは何か?
世界的ブームになっている「ESG投資」には3つのメリットがある
そもそも「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Corporate Governance)のことで、2006年に国際連合が発表した「責任投資原則ガイドライン」の中の言葉だ。
それ以前からも、環境保護や男女格差是正などに貢献する企業への投資は、一部で実践されていた。こうした取り組みを包括的に行わせるべく、国連は諸問題をESGの3文字にまとめ、「機関投資家はESGの問題の解決に貢献する企業に投資すべき」と提唱したのだ。
これを受けて、世界の機関投資家がESG投資に積極的になった。「今ではESGのうち、どれか一つでもあてはまらない企業には、投資しない流れになっています」(ファイナンシャルリサーチ・深野康彦さん)
一方、個人投資家が、ESGの問題の解決に積極的な「ESG企業」に投資するおもなメリットは、以下のとおりだ。
【ESG企業に投資するメリット】
①社会の課題を解決する企業を支援することで、社会を変えられる。
②長期的に成長する企業に投資できる。
③機関投資家の資金が入ることでリターンも上がる。
まず、①にあるようにESG投資をすると、間接的に社会貢献ができる。また、②のとおり、ESG企業は長期的に安定した成長も期待できる。なぜなら、環境保護の政策に沿う企業は、規制強化による収益低下の恐れが少ない。また、働き方改革を推進するなど、社会に貢献する企業は、パワハラなどの不祥事を起こしにくい。しかも、③で示したように、こうした企業には年金基金などの機関投資家も投資しやすいため、長期保有でのリターンを望みやすいのだ。
一方、最近同じように話題になっている言葉に「SDGs」がある。SDGsは国連加盟国が2016年から2030年までの15年間で達成すべき目標のことで、2015年の国連サミットで採択された。環境保護、貧困の根絶など、世界が今後も持続可能な発展を続けていくために必要とされる17の目標と、それを達成するための具体的な169のターゲットからなる。目標の詳細は以下を参照してほしい。
昨今は、ESG投資の高まりとともに、SDGsに配慮した企業への投資も広がり、SDGsを謳った投資信託も数多く発売され始めている。ただ、将来ESGやSDGsの解決に取り組むことが常識になり、どの企業も当たり前に実践するようになれば、ESG投資やSDGs投資という考え方自体が廃れる可能性があることは、視野に入れておこう。
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爆発的に売れるESG投資信託「未来の世界(ESG)」は買い?
プロは「2021年は真価を問われる年になる」と分析!
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ESGやSDGsを意識して投資をするには、関連企業の株を買うほか、ESG企業などを組み入れた投資信託を買うという方法もある。最近、日本でもっとも注目されているESG関連の投資信託は「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)/愛称:未来の世界(ESG)」だ。
「未来の世界(ESG)」が設定されたのは、2020年7月。運用会社はアセットマネジメントOneだ。同社は2016年9月に「先進国ハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)/愛称:未来の世界」という投資信託を設定しているが、「未来の世界(ESG)」はこの商品のESG版という位置づけだ。
驚くべきはその売れ行き。なんと、わずか7カ月で純資産が1兆円を突破したのだ。
ただ、「未来の世界(ESG)」は「情報技術株」の割合が多く、米国への投資比率が高い。上位の組み入れ銘柄を見ると、内容は「未来の世界」とかなり似ていることがわかる。
また、「未来の世界(ESG)」の直近6カ月間(2020年8月~2021年2月)の成績を見ると、投資対象が似ているにもかかわらず、「未来の世界」やグローバル株の指数(MSCIワールド指数)よりも下回っている。
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このように「未来の世界(ESG)」は、実力がまだ見極めづらいところがある。そこで、投資信託に詳しい2人のプロに分析してもらった。
まず、ファイナンシャルリサーチの深野康彦さんは、次のように話す。
「超大型の投資信託にもかかわらず、運用成績は比較的好調。ただ、好調の要因は、ESG投資だからというより、成長株に投資している部分が大きいでしょう。2020年は成長株にとって”出来すぎ”の相場でした。2021年はそこまでにはならないと思われるので、この投資信託も真価が問われる年になるはずです。今後開示される運用報告書で、売買頻度などの運用の実態を確認しておきたいところです」
auカブコム証券・ファンドアナリストの川上雅人さんの分析は以下のとおりだ。
「先に発売した『未来の世界』が好成績で、そのESG版ということで人気が高まったと思われます。ESGの観点を加味して銘柄を選択すると謳っていますが、現段階の組み入れ上位10銘柄のうち、8銘柄は『未来の世界』と重複しています。組み入れ銘柄数は25。36銘柄の『未来の世界』よりも少なく、集中投資の度合いは高いため、今後の値動きのブレには注意すべきでしょう」
プロの意見を総合すると、ブームに乗って考えなしに買うのは避けたほうがよさそう。運用報告書などをチェックし、慎重に判断するようにしたい。
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