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今年の米国のクリスマス商戦期間はBIGになる!小売り関連株は何が買いか?

【第342回】 2014年11月25日公開(2025年3月21日更新)
広瀬 隆雄
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【今回のまとめ】
1.今年のクリスマス商戦は過去10年で最高の+4%が見込まれている
2.ターゲットは去年の失態から立ち直った
3.メイシーズは34丁目の旗艦店の改装で話題沸騰
4.ノードストロームにはカルト的なフォロワーが居る
5.Lブランズのマーチャンダイジング(商品戦略)はピカイチ
6.ティファニーの「T」コレクションはフレッシュなだけでなく気品がある

今週は感謝祭(サンクスギビング・デイ)で短縮商い

 今週木曜日の11月27日は感謝祭(サンクスギビング・デイ)でニューヨーク市場は休場です。通常、感謝祭の週は株式市場が堅調であることが経験則的に知られています。

 感謝祭の翌日の金曜日は「ブラック・フライデー」と呼ばれ、小売店にとって一年で最も多くの金額を売り上げる、とても重要な日です。

 アメリカでは感謝祭の翌日の金曜日からクリスマス・イヴまでをクリスマス商戦期間と呼んでいます。金曜日は、その特売期間の初日ということで、各社は大幅なディスカウント攻勢で顧客を奪い合います。売上が伸びる理由は、この「大売出し」にあるのです。

 「ブラック・フライデー」という名前の由来ですが、普通、小売店は賃貸料や店員の給与などの固定的な費用があるので、年初からずっと赤字で操業することになります。その累損を一掃し、一気に黒字に持って行く日が、売上高の急増する、感謝祭の翌日の金曜日なのです。ブラック・フライデーの「ブラック」とは、つまり「黒字」の意味なのです。

今年のクリスマス商戦期間の予想

 国際ショッピングセンター・カウンシルは今年のクリスマス商戦の既存店売上比較として+4%を見込んでいます。

 もしその予想が現実のものとなれば、過去10年で最高となるわけです。

 この強気の予想の背景には、原油価格の下落による全米平均レギュラー・ガソリン価格の急落があります。

 全米平均レギュラー・ガソリン価格が1¢下落すると、消費者の懐に10億ドルが飛び込むと言われています。すると過去1か月足らずの間に、ざっと400億ドルものキャッシュを消費者は節約した計算になるわけです。

 アメリカ人はこうして手許に残った現金は、貯蓄に回さず、すぐ使ってしまう傾向があります。だからクリスマス商戦直前のガソリン価格急落はアメリカの小売業者にとって神風が吹いたのと同じなのです。

 さらに米国の失業率は着実に改善しており、雇用に対する不安は後退しています。

 おまけに株式市場は新高値を更新しています。これらは全て消費者のマインドにプラスに働きます。

 消費が米国のGDPに占める割合は約70%です。このことは今週から始まるクリスマス商戦が今後の米国経済を占う上で極めて重要であることを示唆しています。

小売関連株、何を買う?

 そこで問題になるのは、「一体、どの銘柄を買えばいいの?」ということです。私は、以下の銘柄がタイムリーだと考えています。

ターゲット

ターゲット(ティッカーシンボル:TGT)はカラフルでファッショナブルな店舗展開で人気のあるディスカウント・ストアです。

 同社は去年のクリスマス商戦期間中に顧客のクレジットカード情報が漏えいするという大失態を演じてしまいました。

 その関係で、セキュリティを強化し、アグレッシブな値引きをすることで顧客の信頼を取り戻すことに専念してきました。

 先週発表された同社の第3四半期(10月期)決算では、ようやくその努力が実を結び、調子を取り戻したことを物語る内容でした。EPSは予想47¢に対して54¢、売上高は予想175.6億ドルに対し177.3億ドル、既存店売上比較は予想+0.5%に対し+1.2%でした。

 上のグラフからもターゲットが最悪期を脱しつつあることが読み取れます。

メイシーズ

メイシーズ(ティッカーシンボル:M)は「Macy’s」ならびに「Bloomingdale’s」という、我々日本人もよく知っている有名百貨店を展開しています。

 なかでもマンハッタンの34丁目にある旗艦店は売り場面積217万平方フィートを誇り、世界中から来店客を集めています。同店だけで年間2,000万人の来店客があり、10億ドルを売り上げていると言われています。

 同店は2年前から総工費4億ドルをかけた野心的な改装工事で若返りを図っている最中で、これは来年完了する予定です。いわゆる「ミレニアル世代」と呼ばれる14~34歳の消費者を取り込むのが改装の目的です。このリニューアルは既に消費者に好意的に受け入れられています。

 同社の売上の内訳は下のグラフのようになっています。

ノードストローム

ノードストローム(ティッカーシンボル:JWN)はシアトルで1901年に靴屋として開業され、その後、百貨店になりました。現在、全米に117店舗を展開しており、全国展開している百貨店としては最高級の部類に入ります。

 同社は、これとは別に140店舗の「ラック」と呼ばれるオフプライス・ストアを展開しています。

 売上構成は下のグラフのようになっています。

 同社の売り子は歩合制を採用しており、ひとりひとりの店員が、まるで自営業のように自分の営業成績に強い関心を持っています。このためクリスマスカードを常連客に送るなど、パーソナルなタッチのサービスを行っています。

 同社のこのようにユニークなカルチャーは、ノードストロームがもともと靴屋、ならびに靴の修理屋からスタートしたことと無縁ではありません。靴のサイズは、それを穿く人の足にピッタリと合う必要があるので、いろいろなサイズの在庫を取り揃える必要があります。さらに靴選びに際しては、サイズやスタイルに関する、売り子とのやりとりが不可欠になります。

 そのような事情から、ノードストロームは常に大きな在庫を抱え、品揃えを万全にするとともに、顧客との対話を重視してきました。

 商品に不満がある場合は、着た後の服でも快く返品に応じます。そのような姿勢が裕福層の間で支持され、カルト的なフォロワーが形成されています。

Lブランズ

Lブランズ(ティッカーシンボル:LB)は「ビクトリアズ・シークレット」というセクシー・ランジェリーを展開する専門店です。

 先週発表された第3四半期決算ではEPSが予想40¢に対し44¢、売上高が予想23.1億ドルに対し23.2億ドル、既存店売上比較は+5%でした。

 同社は11月6日に「今度の決算は良くなる」と既に発表していた関係で、アナリストのコンセンサス予想は吊り上っていました。今回はその高い期待をさらに上回る素晴らしい内容だったわけです。

Lブランズが絶好調である理由は、マーチャンダイジング(商品戦略)の素晴らしさにあります。商品の取り揃えがフレッシュで、ストアにはエキサイティングなオーラが溢れており、来店客の反応は上々です。

 このため他の専門店のように値引き合戦に加担する必要は一切なく、在庫はサクサク捌けています。

ティファニー

ティファニー(ティッカーシンボル:TIF)はチーフ・デザイナーが交代し、「T」と名付けられた新しいコレクションが発表されたばかりです。「T」はかつての「オープンハート」を彷彿とさせる、熱烈な支持を受けています。「T」は流行り廃りに関係ない、タイムレスで気品のあるデザインとなっており、その関係で、今年のクリスマス商戦だけではなく、向こう何年にもわたって売れるロングセラーになると考える業界関係者が多いです。

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