2014年から始まったNISAとは、「少額投資非課税制度」のことで、毎年100万円を上限に、最長5年間は譲渡益(=売却益)や配当金が非課税になる制度。通常は株式や投資信託の譲渡益や配当金には20%の税金がかかるが、NISA口座を開設して、NISA口座で投資した株式や投資信託の譲渡益や配当金は100%利益として受け取れるという、とてもお得な制度だ。
そして、このお得な制度を利用しようと、2014年中には約800万人がNISA用の口座を開設したと言われている。
では、NISA口座を開設した人はどのような銘柄に投資をしているのだろうか?
今回はSBI証券が発表している「NISA口座の保有残高ランキング」を見ながら、その傾向を見ていきつつ、フィスコの村瀬智一さんに「NISA口座を活用する方法」を聞いてみた。
譲渡益が非課税になるのに、投資先は「安定」した銘柄に集中……。
NISA口座のメリットを本当に享受できるのは「成長」する銘柄だ!
まずは、日本株の「NISA口座の保有残高ランキング」を見ていこう。
◆NISA口座:国内株式保有金額ランキング | ||||
順位 | 会社名(コード) | 業種 | 最新株価 (12/29終値) |
最新株価 チャート |
1位 | みずほフィナンシャルグループ(8411) | 銀行業 | 203.1円 | |
2位 | 武田薬品工業(4502) | 卸売業 | 5062円 | |
3位 | イオン(8267) | 小売業 | 1212.5円 | |
4位 | キヤノン(7751) | 電気機器 | 3890円 | |
5位 | 三井物産(8031) | 卸売業 | 1629.5円 | |
6位 | 三菱UFJフィナンシャルグループ(8306) | 銀行業 | 668.3円 | |
7位 | トヨタ自動車(7203) | 輸送用機器 | 7662円 | |
8位 | 住友商事(8053) | 卸売業 | 1247円 | |
9位 | 三菱商事(8058) | 卸売業 | 2236.5円 | |
10位 | ANAホールディングス(9202) | 空運業 | 300.2円 | |
※ SBI証券で発表された2014/12/19時点のランキング。 |
1位から10位まで、すべて東証1部の、日経225採用銘柄に集中するという結果になっている。この傾向について、村瀬さんは「大きな会社ばかりで、配当利回りや株主優待を狙っているという印象ですね。大企業なら中長期で保有しても安心という考え方なのかもしれませんが、配当利回りが良くても株価が下がってしまったら意味がない」という。
「NISAの『非課税』というメリットを生かすなら、配当に期待するよりも長期的に成長が見込まれる銘柄、今はダメかもしれないけど成長が期待できる銘柄に投資して、最終的に株価が上昇してキャピタルゲイン(=売買差益)を取に行かないとダメ。このベスト10の中で成長が期待できるのは、国が主導している水素自動車を作っているトヨタ自動車(7203)くらいじゃないですかね。キヤノン(7751)も自社株買いや配当増額などをやっていて人気はありますが、いかんせん欧州での売上比率が高く、業績に不安が残ります。武田薬品工業(4502)は安定はしているんですけど、新薬が出しにくくなっている中で、成長が見込めるかというと難しい。イオン(8267)は株主優待で人気なんでしょうけど、セブン&アイHD(3382)との開きを考えると、これも成長期待は薄いでしょう」
確かに、譲渡益や配当金が非課税になるNISAのメリットを最大に生かすなら、わずか2~5%程度の配当利回りに期待して投資して配当金が非課税になることを狙うより、株価が大きく上昇しそうな銘柄に投資して譲渡益が非課税になることを狙ったほうがいい。
つまり、現在の「保有残高ランキング」上位の銘柄は、決してNISA向きとは言えない銘柄なのだ!
では、本当に「NISA」のメリットを生かせる銘柄とは、どのような銘柄だろうか?
村瀬さんが大きな成長が期待できる銘柄として例に挙げたのが「サイバーダイン(7779)」だ。
「将来性に期待するなら、例えば、ロボットスーツを作っているサイバーダインのような銘柄ですね。まだ全然赤字ですが、医療用として欧州で承認される話もありますし、いずれは日本でも承認される可能性が高い。また、人手不足の建設現場でも採用される可能性は高いですし、先日はオムロン(6645)と共同で産業用ロボットにも進出することが発表されたばかり。これまでの医療分野だけでなく、もっと幅広く社会インフラや産業ロボットなど、明らかに市場が広がっているので、もし実現すれば株価は大きく反応するです」
そして、今は株価が低迷しているが、復活すれば大きな上昇が見込める銘柄として「ソニー(6758)」にも注目。
「ソニーはこれ以上ないほどに落ちましたし、整理も進んでいて、私は2015年以降は復活してくる可能性があると見ています。プレイステーション4がそれなりに順調ですし、先日はメガネにつけるウェアラブルモニターを発表しました。このウェアラブルモニターはゲームだけでなく工場や物流の中で検査をする際などにも便利で、利用範囲が拡大する気がします」
ほかには、「米・国防省やボーイングなどがパーツを使用しているIHI(7013)なども成長が見込めます。また、2014年には地銀の統合などがありましたが、金融再編の流れの中であおぞら銀行(8304)なども株価上昇の可能性がある。セクターでは東京オリンピックに向けて、不動産やインフラ関係にも注目」という。
しかし、NISAにメリットを感じて、初めて投資に挑戦するような初心者にとっては、3000社を超える上場企業の中から個別銘柄を選ぶのは難しいかもしれない。
そんな人におすすめなのは、2014年に新設された「JPX日経インデックス400」という株価指数への投資だ。簡単に言えば「JPX日経400」とは、「どれだけ効率よく利益を生み出しているか」がわかる「ROE(株主資本利益率)」の高さなどを考慮して選ばれた優良な400銘柄のみで構成されたもの。
「『JPX日経インデックス400』はROE、つまり成長性を加味している株価指数で、随時銘柄を入れ替えていて、安定的な成長株のファンドのようなイメージ。この株価指数の登場によって、配当の増配、自社株買い上場企業もROEを高めようという努力が見られます。アマダ(6113)などは利益を100%、株主に還元すると打ち出していますが、今後、そういう企業は増えてくるでしょう」
「JPX日経インデックス400」に連動するETF(上場投資信託)や投資信託などへの投資が可能になので、個別銘柄を選べないという人は検討してみてもいいだろう。
投資信託でも配当重視で毎月分配型が人気だが、
株式と同じく基準価格が上昇する投資信託を選ぼう!
次は、投資信託の「保有残高ランキング」を見てみよう。
◆NISA口座:投資信託保有残高ランキング | ||||
順位 | ファンド名 | 積立 | ノーロード | 詳細へ |
1位 | 損保J日本興亜-好配当グローバルREIT プレミアム・ファンド 通貨セレクトコース |
★ | ★ | |
2位 | 楽天-楽天USリート・トリプルエンジン (レアル)毎月分配型 |
★ | ||
3位 | 国際-ワールド・リート・オープン (毎月決算型) |
★ | ★ | |
4位 | ニッセイ-ニッセイ日経225 インデックスファンド |
★ | ★ | |
5位 | 三井住友TAM-SBI資産設計オープン (資産成長型)(愛称:スゴ6) |
★ | ★ | |
6位 | SBI-グローバル・リート・ トリプル・プレミアム・ ファンド(毎月分配型) |
★ | ★ | |
7位 | 三井住友TAM-SMTグローバル株式 インデックス・オープン |
★ | ★ | |
8位 | レオス-ひふみプラス | ★ | ★ | |
9位 | 日興-ラサール・グローバル REITファンド (毎月分配型) |
★ | ||
10位 | インベスコ-インベスコ オーストラリア 債券ファンド(毎月決算型) |
★ | ||
※ ※ SBI証券で発表された2014/12/19時点のランキング。 |
投資信託でも配当期待の「毎月分配型」がベスト10の中で6つもランクインしている(1、2、3、6、9、10位が毎月分配型)。しかも、上位3位まではすべて海外のリートに投資する投資信託となっている。
NISA口座で投資信託に投資する際にも個別銘柄同様、非課税というNISAのメリットを最大限生かすなら、本来は「成長性」に期待するべきだ。
しかし、実は2014年のNISA口座の「保有残高ランキング」で、「成長性」ではなく「安定性」が重視された銘柄が上位にランクインしているのには、仕方ない側面もある。というのも、金融庁の6月時点の調査によると、NISA口座を開設した人数の年齢別の割合は以下のようになっているからだ。
●20歳代=3.5%
●30歳代=8.2%
●40歳代=13.2%
●50歳代=16.8%
●60歳代=28.2%
●70歳代=22.2%
●80歳以上=8.0%
つまり、NISA口座開設者の75.2%が50歳以上で、60歳以上でも58.4%と、その多くは「資産を安定的に運用したい」と考える、比較的年齢層が高い投資家が多いのだ。
高齢者であれば、(それが合理的かどうかはさておき)将来「成長」が期待できる銘柄に投資して株価上昇によって得られる譲渡益が非課税になるよりも、「安定」した銘柄に投資してすぐに受け取れる配当が非課税になるほうを選択するのは理解できないわけではない。
ただ、20~40歳代の投資初心者はこれらの「保有残高ランキング」の上位だから、という理由で銘柄を選ばないほうが、NISAのメリットを最大限に生かせる可能性があるので、注意が必要になるだろう。NISA口座で投資信託に投資するにしても、前述の「JPX日経インデックス400」に連動する投資信託のように、「成長」が期待できる銘柄を選ぶように心がけよう。
次のページでは、NISA口座で買われている「米国株式・ETF」と「中国株式・ETF」のランキングを紹介する。
»【毎週更新!】みんなが買っているNISAランキングはコチラ! |
>>2015年に初めてNISA口座を開設する場合はこちらを参照!
⇒NISA(ニーサ)とは? NISA口座選び4つのポイントと使い方、ネット証券会社のNISA口座も紹介!
>>2015年からNISA口座の金融機関を変更する場合はこちらを参照!
⇒「NISA口座の金融機関を変更したい!」2015年から可能となる、NISA口座の金融機関変更の方法と手続きとは?
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149本 | 137〜2200円 (約定代金による) |
− | 540 | − |
【SMBC日興証券の新NISA口座のおすすめポイント】 2023年11月から投資信託情報サービス「日興の投信NISA」を開始。数多くの投資信託のなかからおすすめの21本に絞り込んでいるうえ、「なにごともバランスが大事よ」「私は世界の成長にかける」といったタイプごとに5〜6銘柄をピックアップしてくれるので、自分好みのNISA対応ファンドを選ぶ助けになる。SMBC日興証券では一部の投資信託で買付手数料が必要となるが、積立購入(投信つみたてプラン)の場合は全銘柄で買付手数料が原則無料となるので、上手に活用したい。 また、外国株式は、オンライントレードでは取引できないので注意しよう。単元未満株取引「キンカブ」は「100円以上、100円単位」の金額指定で株が買えるのがメリットで、dポイントでも株式投資ができる。「キンカブ」は売買手数料は無料で、100万円以下の買付ならばスプレッドも0%となっている(100万円超の買付時や売却時はスプレッド0.5~1.0%)。 |
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91本 | 実質無料 | − | 332本 | − |
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※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。売買手数料は、1回の注文が複数の約定に分かれた場合、同一日であれば約定代金を合算し、1回の注文として計算します。投資信託の取扱数は、各証券会社の投資信託の検索機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合が場合があります。※1 年会費無料のクレジットカードの場合。※2 1約定ごとプランで約定金額240万円までの売買手数料。 |